金融庁の保険モニタリングレポート

こちらのブログに続き、今週の保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1192(2023.7.10)でも「保険モニタリングレポート」を取り上げました(金融庁サイトへのリンクを加筆しました。以下、ご紹介いたします。
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金融庁は6月末に「2023年 保険モニタリングレポート」を公表しました。このレポートは2021年に取りまとめを開始し、今回が3年目となります。金融庁が保険業界をどのように見ていて、どのような保険行政に取り組んできたかを知るうえで貴重な情報となっています。

過去の長期契約が足かせに

損害保険会社との「ビジネスモデル対話( 10ページ~)」の主なテーマは「火災保険の収益改善等」「旅行保険特化の損害保険会社」「ペット保険特化の損害保険会社」「(昨事務年度のフォローアップとして)デジタル戦略・チャネル戦略」でした。このうち最もページ数を割いたのが、恒常的に損失が発生している火災保険の収益改善についてです。
まず、過去に契約した長期契約が構造的に赤字状態になっており、火災保険全体の収益引き下げ要因になっていることが示されています。当然ながら既契約には料率引き上げ効果が及びません。金融庁は今後の料率引き上げに関して、「例えば、新規契約に適正利益を超えた割高な保険料を適用することで、長期契約での赤字を穴埋めするなどといった、保険商品としての合理性・妥当性を欠くものとならないように留意する必要がある」と各社にクギを刺しています。

「2000年代に発生した保険金不払い問題の反省から、各損害保険会社においては、契約者・代理店にとっての分かりやすさの向上や従業員の事務ミス防止を目的に商品のオールリスク化、無免責化、実損てん補化を進めてきた。近年はこれらが保険料アップの一因にもなっており、免責金額の導入や高額化など、見直しの機運が見られる(後略)」というのも気になる記述です。料率引き上げの影響を少しでも緩和するため、揺り戻しが起きているというのですね。
なお、損害率を悪化させている「その他の要因」として、「特定修理業者による影響」「水漏れ損害の増加」「破汚損の増加」に加え、先日の決算発表・IR説明会で注目した「企業火災保険における大規模事故の増加」も挙げられていました。

代理店ヒアリングから引用

顧客本位の業務運営について(39ページ~)では、「営業職員管理態勢の高度化」「保険代理店管理態勢の高度化」「公的保険制度を踏まえた保険募集」「外貨建保険の募集管理等の高度化」などが挙がっていました。
このうち損害保険代理店に関しては、金融庁(財務局)が実施した代理店ヒアリングの結果の一部を示しています。当局は「(代理店手数料ポイントや代理店統廃合の推進に関する)こうした課題は、損害保険会社と保険代理店との民民間の委託契約に基づくものであり、その在り方については当事者間でよく話し合い解決すべき事項であるが」としつつも、「代理店手数料ポイント制度の設計・運用や代理店統廃合が一方的な対応とならないよう、保険代理店の意見をしっかり聴取する等、引き続き、丁寧な対応に努めるよう促した」と述べています。
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※写真は夜の大濠公園です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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