金融庁が新規制の検討状況を公表

金融庁の事務年度は7月から6月なので、6月末にいろいろと公表されています。そのなかに「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する検討状況について」がありました。
全部で143ページもの資料で、技術的な内容を多く含んでいますが、「はじめに」のところに「2022年に制度の基本的な内容を暫定的に決定することを目標に、検討を継続していく予定である」とあります。昨年6月公表の有識者会議報告書(PDF)を受けて、経済価値ベースのソルベンシー規制導入に向け、金融庁はスケジュール感を持って動いていることが示されました。

第2の柱、第3の柱に関する記述が相変わらず少ないのはやむを得ない(第1の柱の標準モデル検討を優先)のかもしれません。
しかし、少し気になったところもあります。今回の「検討状況」には第2の柱について、有識者報告書の「標準モデルにおいて十分にカバーされていないリスクの捕捉」についての記述はあるのですが、「ERMやORSAの枠組みに関する一定の目線を定め、実態把握に基づいて改善・高度化を促していく」についての記述が見当たりません。
有識者報告書では第1の柱と第2の柱をセットでとらえ、第1の柱を「最大公約数的」「政策措置あり」としたうえで、第2の柱でリスク管理の高度化を促す、こうした規制を想定していると読めます。ですから、技術的な検討とは別に、第2の柱を具体的にどう機能させるのかといった議論が必要であり、今後の課題なのだと理解しました
(もしかしたら別のレポートで何か示されるのかもしれませんが…)。

関連情報(私の備忘録?)として、6月28日付けで日本アクチュアリー会が保険負債検証レポートに関する資料を公表しています(資料の日付は3月5日となっていますね)。
もっとも、検討の背景や検討項目、結果の概要などを一般に示していないので、これだけ見てもよくわからないかもしれません。

執筆のご案内

最後にご案内です。大手損保グループの2020年度の決算発表を踏まえ、今年もInswatch週刊金融財政事情に寄稿しました。もし両媒体を目にする機会がありましたら、ご覧いただけるとうれしいです。
過去10年間に自動車保険の保険料シェアがどう変わったのかを確認しようとしたところ、分母の業界全体の数値が途中で変わってしまい、補正でもしないと実態がよくわからないことが(今さらですが)わかりました。合併によって取れない数値があることも判明し、こういうときにAIだったらどう対応するのだろうなんて余計なことも考えてしまいました。
火災保険の元受保険料に占める出再保険料の割合が4割前後まで高まっているのにも注目すべきかと思います。

※RINGの会オープンセミナーが2年ぶりに開催されました(オンライン開催)。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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