週刊金融財政事情(2020.4.20)の書評「一人一冊」で、沢渡あまねさんの「仕事ごっこ その”あたりまえ”、いまどき必要ですか」をご紹介しました。本書は日本の職場ならどこにでもありそうな12の事例を取り上げ、なんと童話を使ってわかりやすく伝えています。
形骸化した仕事や慣習、仕事のための仕事といった「仕事ごっこ」はなかなか絶滅しません。でも、新型コロナで思いがけず業務の見直しを迫られた結果、こうした「仕事ごっこ」がなくなるといいですね。
会計基準の柔軟な運用
25日の日経1面トップ「決算、コロナの影響緩和」「引当金や減損 世界で柔軟対応」によると、日米欧の当局が会計基準を柔軟に運用できるよう動き始めたとのことで、将来の価値を過度に悲観的に見積もらなくてもいいようにし、経済収縮の悪循環につながることを防ぐのだそうです。
当局が金融機関の健全性規制を一時的に緩和し、実体経済の悪化に拍車をかけないようにするというのはまだ理解できます。もし事態がさらに悪化し、金融機関の経営が一段と悪化しても、当局ができることはあります。
しかし、ある事業会社が会計基準を柔軟に運用し、監査法人も楽観シナリオを許容し、結果として決算数値がそれほど悪くならなかったとして、銀行は「(例えば)決算が赤字にならなくて、ホッとしました」と、そのまま取引を続けるのでしょうか。もしかしたら、事業会社と銀行の関係だとそうなるのだとしても、投資家は同じような目線でその事業会社を見るでしょうか。
ガバナンス改革の真価が問われる
こうした会計基準の話になると、私の偏見かもしれませんが、どうも情報発信者の論理が優先されがちで、情報の利用者は二の次となってしまうように思えてなりません。
でも、考えてみてください。公表された会計情報が信用できないと判断した投資家は、どのように行動するでしょうか。情報を必要以上に保守的にとらえ、相手に大きなディスカウントを要求する、あるいは、そもそも投資を見送るでしょう。やはり経済は収縮します。
日本は間接金融が中心だと言われてしまえばそれまでです。ただ、日本銀行「資金循環の日米欧比較(PDF)」によると、2019年3月末における民間非金融法人企業の金融負債に占める借入の割合は24.3%で、ユーロエリア(28.7%)よりも低い水準です(米国は7.1%)。1990年代までに比べると、借入の位置付けはかなり下がっています。
この間、証券市場からの調達が増えたのではなく、資本(内部留保)が積み上がったからこそ、日本では政府主導でガバナンス改革が進められてきました。
会社経営のガバナンスは平時にどう機能しているかも重要とはいえ、非常時にはその真価が問われます。非常時ゆえに決算発表の延期は仕方がないにしても、もし決算数値そのものを歪めるるような対応をとるのであれば、投資家をはじめとしたステークホルダーが理解し、納得できるような説明をする必要があると思います。
※自宅でシイタケ栽培。美味しくいただきました。