ジャストインケースの挑戦

インシュアランス生保版(2018年2月号第4週)に寄稿したコラムをご紹介します。
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保険とテクノロジーの融合である「インシュアテック」という言葉は、日本の保険業界でも広く知られるようになった。
ところが、日本のインシュアテックは海外より数年遅れているという識者の声をしばしば耳にする。確かに「A社が健康増進活動の成果を保険料等に反映する新しい商品を開発」「大手損保グループB社が米シリコンバレーに拠点を置き、インシュアテックを推進」など、大手保険グループによる取り組みが活発化する一方、「トロブ」「レモネード」といったスタートアップ企業が次々に台頭する海外に比べると、既存の保険ビジネスに破壊的創造をもたらす存在となるスタートアップの動きは目立たない。

そのようななかで、少額短期保険の枠組みを活用したインシュアテックサービスの提供を目指すスタートアップ企業が現れた。
ジャストインケース(justInCase)社はアクチュアリーやデータサイエンティストなど専門技術を持つメンバーが立ち上げた会社で、ウェブサイトをのぞくと、「アプリで必要な補償を必要なときに気軽に選べる世界の実現を目指します」「よりオープンな新しい保険の仕組みのもとに、気軽に安心を得られる未来を作ります」などとある。

第1弾の「スマホ保険」はスマートフォンの画面割れ・水没・破損等の修理費用を補償するもの。AIを活用して事務処理を自動化するほか、スマホ利用の安全度合いをAIが判定して更新時の保険料に反映したり、友達プール機能により不正請求を防いだりと、詳細は不明だが、随所に最新技術を取り入れ保険料の最適化を実現するそうだ(2月1日現在、少額短期保険業者の登録準備中)。
スマホ修理費用の補償としては、アップルケアや携帯会社が提供するサービスのほか、「モバイル保険」を販売する少額短期保険会社が登場しているとはいえ、大手が参入していないニッチ分野と言える。

保険としてだけとらえると、果たして数万円単位の損失に毎月保険料を支払って備える必要性があるのかという見方もできる。しかし、インシュアテックによってスマホユーザーに新たな価値を提供できるかもしれないし、そもそも同社がスマホ保険の専門会社としての成長を目指しているとは考えにくく、ニッチ分野で培った経験をもとに、ニッチではない分野への進出を図っていくのだろう。

同社が少額短期保険の枠組みを活用するというのも興味深い。少額短期保険制度はもともと根拠法のない共済の受け皿として創設されたという経緯があり、通常の保険会社に比べると設立のハードルは低い。既存の生損保が手掛けてこなかったユニークな商品提供のほか、顧客基盤を持つ異業種からの新規参入も目立っていたが、同社のように新しいビジネスモデルのいわば実験場として少額短期保険を活用するというのは、うまくすると日本のインシュアテックの一つのモデルケースとなるかもしれない。
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※写真は大倉山記念館です。内部はこんな感じ。ロケ地としても時々使われているみたいです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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