五十嵐正明さんによる近著『保険業界のゲームチェンジャー ミニ保険をつくった7人の侍たち』を楽しく拝読しました。
社会問題となりつつあった「根拠法のない共済」問題への対応として、2006年に誕生した少額短期保険(ミニ保険)。その新しい事業に飛び込み、業界の発展に尽くした7名のかたへの対談を中心にした書籍です。本当は著者の五十嵐さんを入れて「8人の侍」なのでしょうね。
やや仲間うちの話もあるとはいえ、1から業界を立ち上げるのは本当に大変だったということが実感できました。
少額で短期間の保険なので通常の保険会社よりも参入規制が緩く(保険会社は免許制、少短会社は登録制)、商品面も保険会社のような商品認可制度ではなく、事前届出制です。
ところが実際には、アイアル少短の孤独死保険が財務局の承認を得るまでに400日くらいかかったという話が出てきて驚きました。正式な届出の前に事前ドラフト審査があるようです。
協会の専務理事を務めた小泉さんの冷静な分析も印象的でした。「現行法規制は我々に『少短業者である限り事業規模規制から財務体質が不十分な状況になる可能性があるが、それであってもお客様に信頼される安心安全な業界になれ』と企業努力だけでは根本解決困難な課題を突きつけている」「現行法規制が『当初の移行目的と移行時の条件の死守』から全く脱しない現状は、彼ら(=新たに保険業に参入した事業者)にとって夢を持って参入し自由な発想に基づく新たな保険作りをする上での阻害要因そのものにしか映らない」。
確かに、制度創設の目的は「根拠法のない共済」対応でしたが、新規参入組が業界の過半を占めるなかで、そろそろミニ保険のあり方を見直す時期にきているように思えます。
少額短期保険を理解するうえで本書の一読をおすすめしたいです。
※今週末は東京出張でした。