今月の連休前から始めて、ようやく読み終わりました。
上下巻にまたがる大作ですし、日本人にはあまりなじみのない
作家や学者がたくさん出てきたりしますが、面白いだけでなく、
非常に考えさせられる本でした。
私はこのところ保険会社のリスク管理、
とりわけ金融危機への対応とその教訓について、
集中的に調査をしています
(アクチュアリー会年次大会の準備のためです)。
今回の金融危機は、筆者の言う「果ての国」で
黒い白鳥が飛び回った結果なのでしょう。
私たちは「ベル型カーブ」の限界を思い知らされました。
金融危機を受けて、ストレステストの強化や
分散効果の見直しなどが求められ、
おそらく同じような危機への対応力は
飛躍的に高まるものと期待できます。
しかし、黒い白鳥は同じ姿で現れるとは限りません
(というか、同じ姿であれば、それは黒い白鳥ではありません)。
「果ての国」にいる以上、黒い白鳥は避けられないとしたら、
私たちはどうしたらいいのでしょうか。
少なくとも自己資本規制を厳しくすればすむような話ではなさそうです。
「ブラック・スワン」のいいところは、計算式で説明するのではなく、
エピソードや例え話をふんだんに使っているところです。
感謝祭前後の七面鳥のグラフ※などは、ドキッとさせられました。
※「七面鳥がいて、毎日エサをもらっている。エサをもらうたび、
七面鳥は、人類のなかでも親切な人たちがエサをくれるのだ、
それが一般的に成り立つ日々の法則だと信じ込んでいく。(中略)
感謝祭の前の水曜日の午後、思いもしなかったことが七面鳥に
降りかかる。七面鳥の信念は覆されるだろう。(中略)
七面鳥は昨日の出来事から、明日何が待っているか推し量れるだろうか?」
(上巻P88より引用)