地震動の予測地図

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政府の地震調査委員会は21日、「全国地震動予測地図」を作成し、
公表しました。

地震調査研究推進本部のHPへ

地震調査委員会ではこれまでも「全国を概観した地震動予測地図」を
公表してきましたが、今回の予測地図ではメッシュサイズの細分化
(1km四方→250m四方に変えることで、きめ細かく表現)や、
地震カテゴリーごとの確率論的地震動予測地図の作成
(備えるべき地震がどのようなカテゴリーのものかわかりやすくなった)
などの改良が行われています。

今回の予測地図によると、横浜(市役所付近)で今後30年以内に
震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(平均ケース)は66.7%、
千葉(同)は64.0%、大阪(同)は59.5%と、前回よりも大幅に上昇しています。
これは、低地における揺れの増幅率が大きく評価されるようになったため
(市役所はたいてい低地にあります)だそうです。

「今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確率が60%」
と言われても普通の人はピンときませんよね。
合わせて公表された解説のなかに、地震など自然災害の発生確率と、
事故や犯罪等の発生確率を比べた表がありました。

事故死や病死の可能性とは違い、地震の発生確率は、
あくまで地震そのものが発生する確率であり、地震による損害が
どの程度の確率で発生するかを示したものではありません。

それでも、「100年に1度の危機」とか言われるなかで、
それよりもはるかに高い確率であることが理解できます。

※写真は台湾の衛兵交代です。

 

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都市部の生保営業

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「大手生保、都市部で営業部門増強」(7/20日経)
「生保レディー 土曜も訪問 日生、選択出勤で営業強化」(7/15産経)
「明治安田生命が『保険難民』開拓 サイトと営業職員連動」(7/14 FujiSankei)

かつて生保レディーといえば、昼休みなどに職場に入り、
その会社の社員と親しくなって保険を売るのが当たり前の姿でした。
私が昔勤めていた職場にも、大手生保の営業職員が出入りし、
同僚たちと仲良く雑談していました(私には不思議でしたが)。

そんな光景も今は昔。今でも大企業で出入りが認められている職場は
どのくらい残っているのでしょうか。
バブル崩壊後の生保の販売不振は可処分所得の低迷や
少子化、晩婚化といった需要サイドの問題だけではなく、
職域営業が壊滅的な状態に陥ったことも大きいと見ています。

上記の記事のように、固定給職員による説明会を通じた販売や
土曜出勤の許可、比較サイトと営業職員の連携など、
大手生保は訪問営業が難しくなっている都市部での営業を
何とか立て直そうと試みているようです。

ただ、大勢の見込み客を抱えることのできた職域セールスと違い、
「説明会」や「土曜出勤」で見込み客を確保できるのでしょうか
(「比較サイトとの連携」は興味深いです)。

※写真はこの週末のイベントです(親バカですみません)。

 

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芸能人の年金制度廃止

 

出張で大阪にいるからというわけではありませんが、
今回は芸能人の年金制度廃止について。

芸団協が運営してきた年金共済制度がこの6月に廃止になった
というニュースが各紙(朝日、毎日、読売)に載っていました。
「法改正や景気悪化で運営が難しくなったため」(朝日)とのことです。
ここで言う「法改正」とは、無認可共済への規制を入れた保険業法の改正と、
公益性の認定を厳しくした公益法人改革です。

共済事業を運営している公益法人は現在1000近くあるそうですが、
一般法人に移行すると、事業は自動的に無認可共済になります。
ただ、保険会社となるにはハードルが高いため、今回のように
共済制度を廃止するところが大半と見られています。

朝日の記事には、
「掛け金を随時減らせるなど柔軟性の高い商品設計を
 そのまま引き継ぐのは無理、と保険会社に言われた」
とありました。

確かにそのような商品設計は難しそうですが、
互助会的な共済事業にも規制の網をかぶせた以上、
それに代わるような手段を保険会社に提供してもらわなければ
困りますよね。保険会社の商品開発に期待したいものです。

この「芸団協」には95000人の芸能人が所属しているそうですが、
年金制度の加入者は2859人、受給者は2158人とのこと。
所属数と制度利用者のギャップが大きいのがちょっと気になりました。

「全体の56%が年収400万円を下回っている」というデータには
なんとなく妙な納得感がありました。

※写真は大阪・淀屋橋です。

 

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金融商品会計の見直し案

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7/14(火)に国際会計基準の金融商品会計(IAS39)の
見直し案が発表されました。
G20から「わかりやすく見直しを」と求められていたものです。

日本は現在、国際会計基準(IFRS)を採用しているわけではありません。
ただ、ここ数年、IFRSに沿った会計の見直しを進めてきました。
さらに、2012年にはIFRS採用の是非を決断することになっています。

現在の基準では、価格変動の影響が次のように示されます。
 「満期保有」→ 取得原価で評価。B/S、P/Lは基本的に動かない
 「売買可能」→ 時価評価。B/Sに資本直入(P/Lは減損のみ反映)
 「トレーディング」→ 時価評価。P/Lが変動

日本の財務会計は、おおむねIFRSと同じです。
「売買可能」は日本では「その他有価証券」区分です
(もっとも、保険会社だけが使える「責任準備金対応債券」という
 日本独自の区分もありますね…)。

見直し案では区分を2つに集約するようです。
 「取得原価」= 債券は基本的にこちら。B/S、P/Lは基本的に動かない
 「時価評価」= 株式は基本的にこちら。P/Lが変動
          (正確にはP/Lまたは「包括利益」に計上)

これまで株式は「売買可能(=P/Lは減損のみ)」が認められていました。
しかし、見直し案ではそもそもこの区分がなくなります。
戦略株式のための区分も別途設けられるようですが、こちらでは
時価変動だけではなく、配当も売買損益も反映しないそうです。

新聞や雑誌には「持ち合い株式を抱える日本企業に大きな影響」
「株式売却で利益を捻出できなくなる」などとありますが、
保険会社の経営にどの程度の影響があるのかはよくわかりません。
ただ、株式含み益に依存した経営が一段と難しくなるのは確実ですし、
株式を持ちにくくなるような感じもします。

重要なのは、日本をはじめ従来の会計が「繰延アプローチ」
つまり期間損益を重視しているのに対し、
IFRSは「資産・負債アプローチ」を採用している点です。

 資産の増減 - 負債の増減 = サープラスの増減 = 期間損益

という考え方で、B/Sの変化が期間損益、というものです。
株価の変動はそのまま期間損益につながりますし、
減損や益出しといった発想はありません。

従来の会計基準とIFRSでは、そもそもの考え方が根本的に違うということと、
日本も無関係ではないということだけでも押さえておいたほうがいいと思います。

ご参考までに、今週の週刊ダイヤモンドはIFRS特集です。
まだ読んでないので中身はわかりません…m(_ _)m

※写真は台湾の市場です。

 

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台湾と横浜で感じたこと

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前回、前々回のブログでご紹介したように、台湾と横浜で
保険業界の皆さんの前でスピーチする機会がありました。

これは保険業界に限った話ではないと思うのですが、
台湾に比べて日本が変だと感じることが二つありました。

まず、日本では参加者に女性が極端に少ないことです。
今回の台湾のセミナーでは、ほぼ半数が女性でした。
100カ国以上でスピーチをした経験のあるOさんの話では、
会場が男性ばかりなのは日本と韓国だけとのこと。

台湾でも昔(20年前?)は男性ばかりだったそうです。
日本はどうなるでしょうか。人口が減少トレンドに入ったこともあり、
さすがにこのままではまずいと思います。
個々の企業の取り組みも大切ですが、まずは政策の問題でしょう。

もう一つは質問の少なさです。
台湾のセミナーでは質疑応答だけで合計1時間にもなりました。
なかには自分のコメントをしておしまい、というのもあったものの、
会場に100人の参加者がいても、物怖じせず手が挙がります。

横浜のオープンセミナーでは会場からの質問を受け付けなかったので
参考になりませんが、一般に日本では質問が少ないですね。
参加者が100人ともなると、ほとんど質問が出ません。

先に紹介したOさんも、
「海外では1時間あったら、そのうち質問に30分必要」
と話していました。その彼も日本では、
「1時間のスピーチでは最後に5分だけ質問の時間を取ればいい」
とかつて上司から指導されたとか。

私の場合、そこまで質問が少ないスピーチはあまりないとはいえ、
質問が多すぎて困ったという経験も滅多にありません。
日本人の国民性と言えばそれまでですが、
このような公の場ではもっと自己主張してもいいように思いますね
(そうではない場での自己主張は増えているような気もしますが…)。

※写真は台湾の大手生保(国泰、新光)の本社ビルです

 

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RINGの会オープンセミナー

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7/11(土)に横浜でRINGの会オープンセミナーがありました。

RINGの会の説明はこちら

共通テーマとして「保険大再編!! 顧客・代理店はどうなる」を掲げ、
午前、午後①、午後②とパネルディスカッションを3つ行いました。

第一部では金融危機と再編について、中央大学の野村修也先生、
元外国損害保険協会専務理事の森崎公夫さん、そして私が議論を交わしました。

多くの場合、コーディネーターに指名されたパネリストが
それぞれ自分の意見を言っておしまいとなるのですが、今回は違いました。

自己紹介を兼ねた10分間のプレゼンの後、野村先生からいきなり、
「植村さんのいう『代理店の社員化』がなぜ起こるのですか?」
という質問が入り、その後もコーディネーターそっちのけで
パネリスト同士でやり取りが交わされました。

やっているほうは何が飛んでくるかわからないので大変でしたが
(しかも大画面に表情が映し出されていたのですよね^^;)、
ご覧になったかたはそれなりに楽しんでいただけたのではと思います。

午後①は「顧客にとって何が起こるか」というパネル。
消費者代表として著名な原早苗さんの質問に、
経営コンサルタントの望月広愛さん、ライフネット生命の出口治明さん、
RINGの会会長の田村薫さんがそれぞれ答えるという構成でした。

それぞれの皆さんのプレゼンは興味深かったのですが、
原さんの「代理店が顧客・保険会社のどちらを向いているのか」
という問いかけに対し、予想されたことではありますが、
「顧客のほうを向いていなければ長続きしない」
「顧客の信頼を得られなければやっていかれない」
と、どうしても議論が平行線になってしまった感がありました。
これはこれでよかったのかもしれませんが。

午後③「代理店は何をするべきか」で、5人の代理店の経営者が登場しました。
伝統的な損保代理店の代表(?)という立場のパネリストが
他の若手パネリストたちに質問をするという趣向がよかったと思います。
パネリストが5人だと、90分はやや短かったかもしれません。

ということで、簡単にコメントしてみましたが、
保険代理店や保険会社の皆さんはどのように感じたのでしょうね。

 

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台湾でスピーチ

台湾(台北)で保険業界向けセミナーの講師を務めました。
テーマは「金融危機と生保業界」です。

9時から16時という時間設定だったのでやや不安だったのですが、
通訳が入ることもあり、時間が余って困ることはありませんでした。

質疑応答も1時間です。会場から次々に質問の手が上がります。
主な質問としては、
・為替リスクに対し、台湾では準備金を設定することで
 ヘッジコストを節約しようと考えているが、どう思うか。
・日本でも外資系生保の事業売却が起こっているか
 (台湾ではINGなど外資の撤退が目立ちます)。
・日本の死差益はなぜ大きいのか。
などなど。

質問ではありませんが、
・破綻リスクを高める内的要因として「経営者に関するもの」が重要とのことだが、
 ぜひ台湾生保の経営者に直接話してほしい。
というコメントもあり、会場から拍手が起こりました。

台湾は政治的に難しい立場にあるため、経営者に長期的視点が乏しいとのこと。
とにかく短期間で利益を上げようとする経営者が多いのだそうです。
万一の際はいつでも海外に逃げられるように準備しているとか。
このようななかでリスク管理の実効性を高めるには工夫が必要でしょうね。

ちなみに、拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」の中国語訳を
ぜひ出してほしいという、うれしいコメントもありました。
サクラではありません^^

※写真は懇親会の会場にあったポスターです

 

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参考純率の引き上げ

損害保険料率算出機構が自動車保険の参考純率引き上げを発表しました。
自動車保険参考純率説明資料

算出機構の資料によると、今後の自動車保険の収支を試算したところ、
対人賠償保険・搭乗者傷害保険を中心に保険成績が悪化したため、
全体で5.7%の赤字になる見込みとなり、同率の引き上げを行ったとのこと。
このうち、最も一般的な自家用乗用車の引き上げは2.4%だそうです。

参考純率の引き上げとともに、年齢や運転者区分の細分化も行っています。
年齢区分では、保険証券に記名された被保険者の年齢別に、
新たに6区分が設定されました(26歳以上補償のみ)。
運転者についても、従来の「家族限定」が、「本人・配偶者限定」「家族限定」
に分かれました。こちらも年齢が関係しているようです。

この結果、若年層と高齢者の参考純率は大幅な引き上げとなりました。
例えば車両保険を付けず、全年齢補償の場合には13.6%の引き上げ
(運転者家族限定、等級20等級)、同じく車両保険を付けず、
記名被保険者が60歳以上では10.9%の引き上げです。

参考純率の引き上げはやむを得ないとしても、年齢区分の細分化については
判断が分かれるところでしょう。
「リスクの高い人は料率も高くすべき」というのは正論なのですが、
リスク細分が進みすぎると弊害もあるように思います。
今回の発表を受けて、各社は年齢区分の細分化をどこまで進めるでしょうか。

なお、かつてとは違い、保険会社は参考純率を使う義務はありません。
実際のところ、各社の損害率にはかなりの差がありますよね。
例えば、統合を計画しているMS海上とあいおい損保の保険料率は
どうなっていくのでしょうね。

※出張で台湾に来ています。

 

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変額年金保険に異変

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7/5(日)の日経「SUNDAY NIKKEI」に変額年金の記事が載りました。
「最低保証が保険会社の重荷となり、新規販売停止が相次いでいる」
というものです。

私のコメントもありまして、
「最低保証があれば、元本割れのリスクを負うのは保険を買った人ではなく
 保険会社です」
というものでした。

記事の中には、
・株が大幅に下がると商品の採算性があわなくなる
・最低保証の仕組みは何らかの形で見直されるだろう
といった記述がありました。

誤解があるといけないので念のため補足しますと、
多くの保険会社では元本割れのリスクに備えて再保険に加入していますが、
損保の再保険のように1年更新ではなく、最低保証の期間に合わせて
長期の再保険に入るのが一般的なようです。

ですから、株価が下がっても、すでに販売した変額年金については
採算があわなくなったり、最低保証が見直されたりすることはありません
(ただし、保険会社が破綻した場合には見直される可能性が高いです)。

採算が合わなくなったり、最低保証が見直されたりするのは
あくまでこれから販売する変額年金のことですので、お間違いなく。

※近所の熊野神社で七夕祭がありました。

 

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相互会社が見直されている?

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7/2(木)に大手生保(第一生命を除く)の社員総代会があり、
いくつかのメディアから取材がありました。
どこかの媒体でコメントが出るかもしれません。

聞くところによると、AIGの経営危機などを踏まえ、
「相互会社に比べ、株式会社は株主からの圧力でリスクを取った経営になりがち」
という声があるようです。

確かに米国では、数少なくなった相互会社形態の大手生保が
高い信用力を維持しているのに対し、公的資金が入ったAIGにしても
ハートフォードにしても、株式会社形態です。

ただ、米国では相互会社形態を維持している大手生保の経営戦略が、
株式会社の大手生保とはかなり違っているのに対し、
日本の生保は相互会社も株式会社もほとんど変わらないように見えます。

相互会社の保険料が実質的に安いわけではなさそうですし、
「5年利差のみ配当商品」が主流というのも変な話です。
変額年金事業や海外保険事業も手掛けていますし、
保有株式を考えれば、リスク抑制的な経営とも言えません。

ですから、米国で相互会社形態が見直されているとしても、
日本の現状を踏まえると、あまり説得力がないように思います。

会社形態の違いが経営に反映されていると感じるのは
協同組合である大手共済です。
実質的な掛け金をできるだけ抑え、商品内容はシンプルで、
資産運用リスクもほとんどとっていないなど、
保険会社の経営とはかなり違いますね。

※広島に続く夏の出張第二弾は大阪でした。

 

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