日経フィナンシャルに寄稿しました

日本経済新聞社が昨年立ち上げた金融専門デジタルメディア「NIKKEI Financial(日経フィナンシャル)」に生命保険会社の契約者配当について寄稿しました。タイトルは「生保、不透明な配当 企業価値を反映させよ」で、23日にアップされています。
有料媒体なので見出しだけ紹介しますと、「個人向け配当総額、非公表が多い」「利益と配当、連動しているように見えず」「1990年代後半以降、内部留保を充実」となっています。

以下では少しだけ補足を。

まず、第一生命だけが個人向け配当総額を公表していると書きましたが、決算資料のなかに「財務・業績の概況(PDF)」という資料があり、このなかで配当準備金繰入額の内訳を公表しています。
この資料は元々は記者クラブ向けに作られたものだと思いますが、第一生命HDは上場会社なので、同じものを投資家向けにも公表しているのでしょう。

生保のディスクロージャー誌のデータ編には「配当準備金明細表」があり、保険種類別の「配当金支払による減少」が載っています。2期前のデータとはいえ、ここから団体保険と団体年金保険の配当総額をつかむことができます。
このデータは配当に割り当てた額ではなく、あくまでその期に配当金として支払った額です。団体保険と団体年金保険の配当は現金で行われますし、配当金の割り当てと実際の支払いはほぼずれません。しかし、個人向けの場合、配当の割り当てと実際の支払いのずれが場合によっては大きいため、ここに載っている「配当金支払」が必ずしも配当に割り当てた金額とは言えないのです。
ですから、記事のなかでお示しした個人向けの配当総額はディスクロ誌の「配当金支払による減少」をそのまま使ったものではなく、配当準備金繰入額をベースに推計しました(団体保険と団体年金保険の「配当金支払による減少」を控除)。

2021年3月期決算では各社の個人向け配当はどうなるでしょうか。配当原資が三利源または利差ということであれば、利息配当金収入は減っているかもしれませんし、単年度で大きく動くことは考えにくいです。ただ、企業価値ということであれば、株高も超長期金利の上昇も大きくプラスに効いているでしょうし、昨年度は新型コロナ対応の副産物として死亡者数が減り、病院の患者数も減った模様です。
一時的な企業価値の拡大をただちに還元することはできないとしても、生保(とりわけ相互会社)は少なくとも何がどうなれば個人向けの配当総額が決まるのかといった目安を出していく必要があると思います。

執筆のご案内といえば、週刊金融財政事情の2021年4月20日号に書評「一人一冊」が載りました。
今回は戸田山和久先生の「『科学的思考』のレッスン 学校で教えてくれないサイエンス」を取り上げました。学生向けかもしれませんが、社会人にもおすすめです。

※写真は福岡・能古島の花畑です(パーク内)。息をのむ美しさでした。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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