新型コロナウイルスのワクチン接種が当初の見込みよりも遅れることがわかりました。
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M&Aや業務提携などで基本合意に達しても、そこから本格的な交渉が始まるのであって、最終的に契約締結に至らず、破談になることもあります。基本合意とはそのようなものです。
過去には保険業界でも、三井海上、日本火災、興亜火災のケース(1999年10月に統合を発表し、2000年2月に破談)など、大型M&Aが最終合意に達しなかった事例がいくつかありました。
合意するかどうかの判断は、株主をはじめとするステークホルダーに対し、それが企業価値を高めると説明できるかどうかです。
ですから、基本合意しても破談となったり、当初の合意と最終的な契約が異なることは理解できるのですが、これが新型コロナのワクチンで悪いほうに生じてしまうとは、ステークホルダーたる国民としてはガッカリです。
念のため厚生労働省の発表文を確認しましょう。
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2020年7月31日の厚生労働省リリース「新型コロナウイルスワクチンの供給に係る米国ファイザー社との基本合意について(PDF)」
本日、厚生労働省は、米国ファイザー社が新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに6000万人分のワクチンの供給を受けることについて、ファイザー社と基本合意に至りましたので、お知らせします。
今回の基本合意は、ファイザー社との間で供給量等の基本的な事項に関して合意を得たものであり、今後、最終契約に向けて速やかに協議を進めてまいります。(後略)
2021年1月20日の厚生労働省リリース「新型コロナウイルスワクチンの供給に係るファイザー株式会社との契約締結について(PDF)」
本日、厚生労働省は、米国ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンについて、日本での薬事承認等を前提に、年内に約1億4,400万回分の供給を受けることについて、ファイザー株式会社と契約等を締結しましたので、お知らせします。
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基本合意では「6月末までに6000万人分の供給」だったものが、最終的な契約等(「等」が気になります…)では「年内に約1億4400万回分(1人に2回必要なので約7200人分)」と、供給が半年ずれてしまいました。
活動自粛により感染拡大を抑えこんでも、活動を再開すると再び感染が拡大する(まさに今の状況)ので、多くの国民はワクチンが普及するまでと不自由な生活を忍んできました。ですからワクチンの確保はどう考えても優先順位の高い政策です。供給が半年ずれるということは、ステークホルダーにさらなる不自由を求め、国の価値(GDPなど)を大きく傷つけることになります。某マスクの比ではありません。
日経報道が正しければ、政府は年末まで米国のファイザー本社と直接交渉していなかったそうで、世界的なワクチン争奪戦のなかで、優先順位の高い政策において、これが正しい戦い方だったとは思えません。
もちろん、交渉決裂によりファイザーからの供給がなくなってしまうよりはマシですし、英国アストラゼネカとは開発成功後に1500万人分の供給を第1四半期中(1-3月と推測)に受ける、米国モデルナ&武田とは上半期(1-6月)に2000万人分の供給を受ける契約をそれぞれ締結しているようなので、6月までワクチンが全くないという状況ではないかもしれません。
ただ、厚生労働省が少なくとも昨年12月の時点で想定していたスケジュールが遅れるのはほぼ確実なので、これが企業経営者であれば、ステークホルダーから責任を問われる事態だと思います。リスクマネジメントやガバナンスを学生に教える立場からしても、今後の展開に注目しましょう。
※写真は福岡・マリノアシティからの眺め。アウトレットがあります。