フィリピンのマニラを訪問し、OLIS(アジア生命保険振興センター)の海外セミナーの講師を務めました。このセミナーはもともと2019年1月に開催される予定だったのですが、マニラ近郊の火山が噴火したため、直前に中止となってしまい、その後コロナ禍を経て、ようやく開催にいたりました。
講演にあたりフィリピンの生命保険市場について多少調べ、さらに現地で監督当局や生命保険協会の話を聞いたところ、「GDP対比での保険料の割合が低い(1%強)」「ユニットリンク型の貯蓄性商品が中心(全体の7割)」「マイクロインシュアランスが普及」「2025年強制採用のIFRSの準備が進んでいない(もともとは2023年だった)」「いくつかの会社では最低維持資本の達成が課題となっている」といった特色があるとわかりました。
フィリピンはASEAN諸国の中で最もコロナ禍の影響が大きく、ロックダウン期間も長かったそうで、保険ビジネスにも大きな影響があったとみられます。本来は2022年までに達成すべき最低維持資本の達成がいまだに課題となっていたり、IFRSの適用を2025年に延期したりというのも、もしかしたらコロナ禍が影響しているのかもしれません。
セミナー会場のマカティ市はマニラ首都圏のなかでも特別なエリアで、金融機関の高層ビルとショッピングモールがたくさんあって、先進国とほとんど変わりません(ただし警備員が多いのと、爆発物チェックが頻繁にありました)。ホテルの部屋から見えた住宅街も高級な感じでした。
しかし、この地区だけが別世界のようで、マカティを離れると新興国らしい光景が広がっていました。生命保険を購入する層が現時点では限られているのも理解できます。
保険の話から外れますが、わずかな滞在でも、マニラ首都圏は交通インフラが極めて貧弱だとわかりました。幹線道路が限られているので、大渋滞が当たり前のようです。高速鉄道は大活躍しているものの、通勤時間にはキャパをはるかに超える乗客であふれかえっていました。マニラに住む私の友人は、渋滞がひどいのでバイク(スクーター)で通勤しているとのことでした。車線があってないような道も多く、常に交通事故の危険と隣り合わせです。
他方で、カトリックの国で信仰心の篤い人が多いとか、米国統治の影響からかファストフードが発達しているとか、休憩のたびに食事をとるとか、興味深い特徴もたくさん見つかりました。