自然災害と車両保険

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1300(2025.10.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。なんと、1300号なのですね!2000年8月が1号なので、26年めということでしょうか。おめでとうございます。
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地下駐車場での冠水

先月、三重県四日市市の地下駐車場が大雨で浸水し、200台以上の車が冠水するという事故がありました。本件では防水設備の不備により施設管理者の責任が問われるかもしれませんが、原則としては駐車場で冠水した車の修理は車の所有者が行うことになっています。
このようなときに役に立つのが車両保険です。しかし、損害保険料率算出機構によると、23年度末の車両保険の加入率は約47%と、対人賠償責任保険や対物賠償責任保険(いずれも約75%)に比べると低い水準です。
もっとも、約47%というのはややミスリードで、自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、軽四輪乗用車だけでみれば、加入率は約55%です。これに自動車共済を加えると、加入率は約6割とみられます。

保険料の負担

とはいえ、自家用の3車種でも約4割が車両保険に加入していないということになります。もちろん、なかには古い車に乗っていて、十分な保険金額を設定できないというケースもありそうですが、車両保険に加入すると毎年の保険料がかなり高くなってしまうというのが、加入を見送る最大の理由ではないかと考えています。あくまでイメージですが、車両保険を付けなければ年間保険料が3万円、車両保険を付けると6万円、といったレベルでの違いがありますよね。
車両保険の保険料が大きくなりがちなのは、自動車保険のなかでも支払保険金の総額が大きいからです。同じく料率算出機構のデータによると、23年度の支払保険金のうち車両保険が全体の4割以上を占め、最大種目となっています。対人賠償責任保険は1件当たりの支払保険金が約95万円と大きい(車両保険は約40万円)のですが、支払件数が少ないので、支払保険金の総額は全体の3割強にとどまります。

自動車ユーザーにとって、毎年の保険料は大きな関心事項です。例えば、ソニー損害保険が8月に公表した全国カーライフ実態調査(2025年)によると、車の諸経費で負担に感じるものとして、「ガソリン代・燃料代」「自動車税」「車検・点検費」に次いで「自動車保険料」が高い割合で挙がっていました。
また、チューリッヒ保険が23年に公表した「自動車保険の見直しに関する実態調査」でも、ダイレクト型で自動車保険に加入したという回答者の割合がやや高い(35%)ことを踏まえても、現在加入している自動車保険で重視したポイントとして「保険料の安さ」が「事故対応」とともに上位に挙がっていて、保険料への関心の強さがわかります。

風水災害への備えとしての車両保険

ただし、車両保険が大雨による冠水など、地震などを除いた自然災害でも使えるという情報は自動車ユーザーにどの程度浸透しているのでしょうか。ネットで話題になったように、「自賠責保険は補償の対象外」という報道がなされるなど、自賠責保険と任意の自動車保険のちがいも常識ではなさそうなので、車両保険が交通事故だけではなく、一般的には風水災害による損害でも補償対象となると知っているユーザーは意外に少ないのではないでしょうか(あくまで個人の印象ですが)。
9月17日の日本損害保険協会によるニュースリリースによると、8月上旬の低気圧・前線による大雨での保険金支払額は約323億円で、このうち130億円が自動車保険(車両保険)だったそうです。風水災害への対応というとまずは火災保険ですが、車両保険も役に立っているということを保険業界はもっとアピールしてもいいのかもしれません。
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※懐かしのブルートレイン!門司港にて。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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