日本保険学会の関東部会がミニ・シンポジウム
「保険自由化20年」を開催しました。
当日のレジュメはこちらでご覧になれます。
関東部会のサイトへ
確か「自由化後10年」という企画もあったはず、
と『保険学雑誌』のバックナンバーを調べると、
2008年10月の大会で「自由化後10年の検証」
というシンポジウムが開かれていました。
司会が東大(当時)の山下先生、シンポジストが
慶大の堀田先生、一橋大(当時)の米山先生、
弁護士の上柳先生という豪華メンバーでしたが、
実は私も登壇していたことが判明。
恥ずかしながらミニ・シンポジウムの席では
すっかり失念していました。
保険学雑誌第604号
当時はリーマンショック後の金融危機の最中で、
同じ10月にAIGが日本の生保事業からの撤退を
発表したり、大和生命が経営破綻したりと、
連日対応に追われていたのでしょう(言い訳)。
自由化10年では、経済・商学系の研究者と
実務法律家、アナリストという顔ぶれでしたが、
今回の「20年」は3名とも保険業界の方々でした。
内容は当日のレジュメをご覧いただくとして、
明治安田生命の上原さんが自由化後の20年を
前半と後半に分けていたのが興味深かったです。
前半の10年は規制見直しが進んだものの、
後半の10年はグループ規制を除き、規制緩和は
あまり進展がなかったことを示していただきました。
あえてコメントすれば、2006年でビシッと切らず、
前半の規制見直しフェーズと、後半の見直しによる
影響フェーズを多少オーバーラップして捉えるのが
妥当なようにも思えますし、もし、20年間を通じて
規制緩和が進まなかった事項があるとしたら、
合わせて示していただけるとありがたいでしょうね。
今回のミニ・シンポジウムを業界人から学界への
情報提供ととらえると、そもそも自由化の目的は
何であり、それが20年でどの程度達成できたのか、
あるいは、副作用や意図せざる状況を招いたのか、
といった視点のお話しも伺いたかったです
(そのような質問はありました)。
あと、自由化による競争促進とは、保険会社が
以前よりリスクテイクできる状況になることなので、
監督当局としては、財務・業務の健全性確保と
セーフティネット(広義)の整備が必須となります。
業務の健全性と各種のセーフティネットの整備は
それなりに進む一方、財務の健全性については
どうでしょうか。
せっかく2007年にソルベンシー規制の見直しを
当時の検討チームが提言したにもかかわらず、
10年たっても未だに見直しが道半ばなのですが、
そのような視点があってもよかったように思います
(ERMに関する言及は栗山さんからありましたね)。
とはいえ、いろいろ考えるきっかけををいただいた
という意味で、大変有益なシンポジウムでした。
※大倉山公園の近くにある大乗寺の境内には
なぜか相鉄線の電車が飾ってあります。