ゼンショーHDが運営する牛丼チェーン「すき家」の
労働環境改善に向けた第三者委員会報告書が
公表されました。
8/1の各紙で報道されたとはいえ、せっかくなので、
現物をご覧いただくことをお勧めします。
ゼンショーHPへ
会社が自ら設置した第三者委員会ではありますが、
「とりわけ厳しい久保利先生にあえてお任せした」
(ゼンショーHDの小川CEO)とのことで、
総じて会社は協力的な姿勢だったようです。
報告書では、現場の生々しい労働実態のほか、
各種委員会(リスク管理委員会など)が全く機能せず、
内部監査部による指摘もCEOを動かすことはなく、
幹部が過重労働問題を認識しつつも、全社的な検討・
対応がなされなかったとしています。
そして、根本的な原因として、
・経営幹部の危機意識の欠如
・過重労働(法令違反)を是正する仕組みの不全
・経営幹部に共通する意識・行動パターン
*顧客満足のみにとらわれた思考・行動パターン
*自己の成功体験にとらわれた思考・行動パターン
*数値に基づく収益追求と精神論に基づく労働力投入 など
を挙げています。
ゼンショーグループは創業者であり実質的な大株主でもある
小川CEOの会社であり、要はカリスマCEOがグループを
外食日本一に導く一方、現場に深刻な問題があっても、
誰もCEOと対等に議論することがなかったのでしょう。
会社の内面に迫る優れた報告書だとは思うものの、
一読した限りでは、アナリスト的な視点といいますか、
いわゆる経営分析がほとんど行われていないようです。
「『外食世界一を目指す小川CEOの下に、その志の実現に
参加したいという強い意志を持った部下が結集し、
昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が
経営幹部になる』というビジネスモデルが、その限界に達し、
壁にぶつかったものということができる」(報告書より)
内的要因としてはそうかもしれませんが、果たして
それだけなのでしょうか。
日本格付研究所によると、すき家の既存店売上高は、
ブームの反動もあり、2011年9月からマイナス基調となり、
2014/3期の既存店売上高も前年割れでした。
増収は新規出店によるものです。
この価格帯の外食産業の競争環境は熾烈と聞きます。
加えて、原材料価格の上昇などにより原価率が上がり、
収益を圧迫していることがわかります。
他方、有利子負債の一部には、2期連続の経常損失を
トリガーとする財務制限条項が付いているようです。
これがどの程度重要な話なのかはわかりませんが、
同社が有利子負債を活用した積極経営であることは確かです。
格付レポートや有価証券報告書をざっと眺めただけでも、
ここ数年のゼンショーHDの経営状況が厳しくなっていたと
うかがえるのですが、メンバーが弁護士中心だとしても、
このような視点からの分析も必要なように感じました。
※京橋の交差点が様変わりしていて驚きました。