情報開示が変わる

記述情報(非財務情報)の開示

成長戦略の一環として政府が進めてきたコーポレート・ガバナンス改革ですが、ここにきて情報開示についても進展が見られます。

昨年6月の金融審議会「ディスクロージャーWG報告」を受けて、1月末に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、上場会社に対し、財務情報とともに記述情報(非財務情報)の充実を求めることになりました。
さらに、記述情報の開示についての考え方をまとめたガイダンスとして、金融庁は記述情報の開示に関する原則(案)を公表しています。

「非財務情報」ではなく「記述情報(非財務情報)」としたのは、「財務情報」のほうを貸借対照表や損益計算書といった金商法の「財務計算に関する書類」で提供される情報に限定し、それ以外の開示情報を対象と整理したためかもしれません。
この定義だと、記述情報は財務情報とは別のものではなく、財務情報を補完するものであることがより明確になります。

リスクの羅列ではダメ

記述情報のうち、「事業等のリスク」について確認してみましょう。
このリスク情報は2003年3月期から有価証券報告書に記載されてきました。ただ、WG報告にもあるように、考えられるリスクの羅列となっている記載が多く、それぞれのリスクの重要性や、それらを経営陣がどう捉えているのかは、外部からは全くわかりませんでした。

東京海上HDの事例
SOMPO HDの事例
第一生命HDの事例

これに対し、改正府令が求める開示は、「主要なリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、対応策を記載するなど、具体的に記載すること」「リスクの重要度や、経営方針・経営戦略等との関連性を踏まえ、わかりやすく記載すること」です。
また、「記述情報の開示に関する原則(案)」には望ましい取り組みとして、「取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性をどのように判断しているかについて、投資家が理解できるような説明をすることが期待される」などとあります。

非上場の保険会社も検討を

WG報告書には、「一部の我が国企業においては、そもそも経営戦略・財務状況・リスク等について十分に議論されていないとの指摘もなされている」と書かれています。
経営で十分に議論していなければ、開示ができないのは当たり前です。保険会社ではいかがでしょうか。

一連のガバナンス改革の対象となるのは上場会社なので、相互会社をはじめ、非上場の保険会社には適用されません。
しかし、保険会社は投資家として、上場会社に情報開示の充実を求める立場でもあります。
少なくともコーポレートガバナンス・コードに任意に対応している会社であれば、今回の開示情報の充実に対しても、ステークホルダーに自社への理解を深めてもらうべく、積極的に取り組んでいくべきではないでしょうか。

※写真はのと鉄道で保存している鉄道郵便車です

 

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第三分野商品のスタンダード化はどうなった

こんどはインシュアランス生保版(2019年2月号第1集)に執筆した記事のご紹介です。
冬休みの宿題がいま日の目を見ているといったところでしょうか^^
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商品ランキングへの苦言

1月11日の毎日新聞投書欄で「保険批判への反論も載せて」という保険関係者による投書を見つけた。ビジネス誌による生命保険特集に掲載されている保険コンサルタントや評論家による商品評価の内容が、保険数理のプロから見て、あまりに的外れで独断的な批判ばかりなので、せめて保険会社の言い分も載せるべきという内容だった。

ビジネス誌の保険特集では、商品評価やランキングが目玉記事の一つとなっている。保険ジャーナリストやFPに対し、積極的に情報提供を行う保険会社も増えており、保険会社の言い分が全く反映されていないわけではなさそうだが、保険数理のプロが嘆くのだから、こうしたインプットにもかかわらず、偏った記事の掲載が横行しているのだろう。
保険への理解の低い評者にはもっと勉強していただくしかないし、一方的なコメントばかり載せるのもどうかと思う。ただ、もし私自身が商品評価をしろと言われたら、おそらく困ってしまうだろう。なぜなら、平成の30年間で第三分野を中心に商品や料率の多様化が進んだ一方で、保障と料率の関係が外部からほとんどわからないためである。

保険商品の比較は困難

各社のサイトには商品パンフレットのほか、「契約概要」「注意喚起情報」が載っているので、比較サイトに頼らずとも保障内容を比べることはできる。だが、保険料の絶対水準ではなく、同じ保障に対して商品Aの保険料が商品Bよりも高い/安いといった、他の金融サービスでは普通に行われている分析が保険商品では非常に難しい。

それでも死亡保障だけであれば、最近の健康増進型を除き、ある程度納得できる比較が可能かもしれない。保障内容のバリエーションが限られているうえ、標準生命表が存在し、各社とも表から大幅にかい離したプライシングを行っていないと考えられるためである。
これに対し、第三分野には標準発生率や参考純率等がなく、金融庁による商品認可を経ているとはいえ、各社が使っている発生率も、プライシングの保守性の程度もばらついていて、かつ、外部の評者が分析する手掛かりも乏しい。

このままでいいのか

通常の財・サービスであれば問題ないかもしれないが、社会保障の補完的な役割を果たすことが期待されている保険商品において、保障と料率の関係がここまでブラックボックス化したままでいいのだろうか。

実は15年近く前に、金融庁の検討チームで第三分野の責任準備金積立ルールや事後検証ルール等を議論したことがある。05年6月に公表された報告書を読むと、今後の課題として「データの整備」「標準発生率・参考純率等の整備」が挙がり、第三分野商品のコアになる部分のスタンダード化に向けて、「当面はまずデータ整備に注力し、将来的課題として、標準発生率や参考純率等の適否を検討していくべきではないか」という提言が示されている。
しかし、何年たってもデータ整備に向けた動きは見られない。果たしてこのまま放置しておいていいのだろうか。
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※輪島の朝市です。季節外れで閑散としていました。

 

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きんざいの生保経営分析

直近の週刊金融財政事情(2019年2月4号)で「主要生保経営の現状と課題を探る」を執筆しました。
先日ご紹介した保険毎日新聞のインタビュー記事をより詳しくした感じです
(いずれも4-9月期決算を踏まえたものなので)。

インタビュー記事でも触れましたが、メーカー(商品提供会社)としての大手生保は販売チャネルの多様化に動く一方で、営業職員を主体とする販売会社としては、グループ化や業務提携により商品ラインナップの充実を図っています。

大手生保が保険ショップの買収を含め、マルチチャネル化を積極的に進めているのは、自前の営業職員チャネルだけではアクセスが難しい層が増えており、マルチチャネルに転じなければ先細りになってしまうという判断だと思います。新しい販売網はもはや営業職員チャネルの補完を超えた存在になりつつあるようです。
その一方で、大手各社の営業職員チャネルでは、他社商品を取り扱い、かつ、相応の業績を上げているケースが目立ちます。

他社商品の取り扱いがグループの範囲に収まる、あるいは補完的な分野に限られているのであれば、「メーカーによるマルチチャネル化」「販売会社による他社商品の取り扱い」の両立は可能です。でも、保険ショップやネット通販、乗合代理店といった、台頭するライバル販売チャネルに対し、それで販売会社としての競争力を維持できるかどうか。

決算分析と言いつつ、そのようなことも書いていますので、機会がありましたらご覧ください。

RINGの勉強会で金沢へ。茶屋街の近くで豆まきがあったようです。

 

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セミナー講師を務めます

3月4日(月)の午後に金融セミナーの講師を務めます。
セミナーインフォのサイトへ

演題は「リスクベースでみる保険会社経営の現状と課題」で、日本の保険会社経営の現状と課題を「経営リスク」の観点から浮き彫りにしようというものです。
一人で3時間お話しするという、私にとっては非常に贅沢な機会なので、特定の事項に絞るのではなく、「事業リスクの観点から」「財務リスクの観点から」「エマージングリスクの観点から」の3つについて、お話ししようと考えています。

日本の生損保経営の全体像をつかむには便利なセミナーだと思いますので、もしご興味などありましたら、ぜひご参加ください。

※地下に素敵な空間がありました

 

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日本人の海外旅行

少し前に、2018年に日本を訪れた外国人が3119万人に達したというニュース(16日に日本政府観光局が発表)がありました。短期間でここまで増えるとはすごいですね。

出国者も過去最高を更新

ところで、この日本政府観光局の資料をよく見ると、日本から海外に出かけた人数も1895万人と、2012年の1849万人を超え、過去最高を更新しています。
過去の推移を確認したところ、2000年の1781万人までは概ね右肩上がりで増えていましたが、その後は増えたり減ったりという感じです。2012年は円高が後押しとなり、2013年からは反対に円安が足を引っ張ったようです。ここ数年の増加は為替要因ではなく、後述する世代要因が大きいのかもしれません。

訪問先は大きく変化

興味深いことに、海外旅行の訪問先は2000年頃とはかなり異なっていることがわかりました。出国者数に占める主な訪問先の割合を2000年と2016年で比べると、次のとおりです
(各国統計の寄せ集めなので、あくまで参考としてご覧ください)。

中・韓・台・香港   
37% ⇒ 44%

米国(ハワイを含む) 
28% ⇒ 21%

欧州(7か国)    
25% ⇒ 15%

東南アジア(8か国) 
21% ⇒ 28%

要するに欧米が減って、アジアが増えたということですね。
ドイツは当時の6割、フランス、イタリア、イギリスは当時の5割まで減っています(スペインは増加)。昨年私たちが訪れたスイスは、かつては100万人近い日本人が旅行していたそうですが、近年は20万人前後です。
リゾート地として落ち込みが激しいのが北マリアナ諸島(サイパンなど)で、当時の2割弱の水準です。グアムも当時の約7割。ハワイは当時の8割強で、近年は回復基調です。

他方で2000年に比べて増加が目立つのは、何といっても台湾です。いまや200万人近い人が訪れています(当時は90万人程度)。中国と韓国はいったん増えて、その後もとの水準に戻っています。
東南アジアではベトナムの増加が目立ちます。当時の15万人から最近は80万人にまで急成長しました。書店に行くとベトナムのガイドブックをよく見かけるようになったので、ビジネスだけでなく、観光客が増えているのでしょう。

若者は海外に行かなくなったのか

ところで、ひところ「若者が海外に行かなくなった」という話をよく耳にしました。20代の出国率をみると、確かに1990年代後半から2000年代にかけて低迷が目立ちました。
ところが、2010年代はむしろ回復傾向で、2017年は過去最高を更新しています。

1990年代後半から2000年代前半はちょうど就職氷河期にあたり、非正規雇用も増え、海外に行きたくても行けなかった20代が多かったのではないでしょうか。企業が出張費を抑えたということもあるでしょう。これに対し、2010年代は就職面では売り手市場が続いていますし、企業の海外進出(特にアジア)も拡大しています。LCCの相次ぐ就航も出国を後押ししているかもしれません。
さらに、親子の年齢差を30歳くらいとすると、今の20代の子どもを持つ親は50代ということで、自分たちが20代のときに海外に出かけたり、子どもと一緒に海外へ行ったりした経験が、それ以前の世代よりも多いと考えられます。

いずれにしても、20代人口の絶対数が減っているので目立ちませんが、総論としての「若者が海外に行かなくなった」という認識は改めたほうがよさそうです。

※ミャンマーへの日本人旅行者も急増しています

 

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損保決算のインタビュー記事

生保に続き、損保についても保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました(23日)。
「損保会社2018年度上半期決算の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く 重要な自然災害リスクの見極め」というもので、決算を踏まえた大手損保グループ経営の現状を次の3点で整理しました。

自然災害多発の影響が上半期決算に大きく影響した

・各社の支払い余力の水準やリスク管理体制を踏まえれば、1兆円規模といえども健全性を揺るがすほどのものではない。

・多発した自然災害をどう捉えるべきか、保険会社の見方は分かれている。災害発生のトレンドが変わってきているという見方もあれば、確率上は数十年に1回しか発生しないようなことが起きたとはいえ、あくまで想定の範囲内という見方もある。

・今後の自然災害リスクをどう捉えるかによって、保険会社としての備えもプライシング戦略も大きく変わってくるため、この見極めが非常に大事になる。

自然災害を除き、国内損保事業は堅調に推移した

・主力の自動車保険では、損害率が若干上がり気味ではあるものの、収支残を十分確保できている。過去の料率引き上げや等級制度の見直しが効いていて、今のところ安定している。

・今後の自動車保険の収支を悪化させる要因として、消費税率の引き上げと、債権法(民法)の改正による法定利率の引き下げがある。足元の料率引き下げトレンドに加え、火災保険の料率引き上げも見込まれている中で、この二つの要因をどこまで自動車保険の料率に反映できるだろうか。

国内損保事業への依存度が徐々に下がっている

・今回の上半期決算は、事業や地域の多角化が進んだことを実感させるものでもあった。3メガ損保グループの通期業績予想(連結純利益)がいずれも黒字かつ増益なのは、異常危険準備金の取り崩しに加え、国内生保事業や海外保険事業による下支え効果も大きい。

・特に国内生保事業は、会計上の貢献度は小さく見えるものの、保有契約もEVも拡大傾向が続き、グループ経営を支える存在となっている。

・海外事業展開については、買収による拡大だけでなく、業績の立て直しや事業再構築などの動きも起きている。買収時にどんなに慎重に見極めたとしても、その後想定外のことが起きやすい。東京海上グループが再保険事業を売却したのも非常に興味深い動きと受け止めている。

機会がありましたらご覧ください。
保険毎日新聞のサイトへ

※築地を歩くと古い建物に出会います

 

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保険行政はなぜ破綻を防げなかったのか

ご案内が遅くなりましたが、日本保険学会の機関誌である「保険学雑誌」の最新号(第643号)に論文が掲載されています。タイトルは「近年の日本の保険行政における健全性規制の動向とその考察」で、1年半前に行った九州部会での発表をもとに、その後の情報をアップデートしつつ、まとめたものです
(アブストラクトのみ閲覧可能です)。

拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」では、2000年前後に生じた中堅生保の連鎖的な破綻について、厳しい外部環境だけではなく、経営内部の問題が大きかったことを明らかにしました。ただ、自由化以前の保険行政による影響力の大きさを踏まえると、当時の保険行政がなぜ破綻を防げなかったのかという点について、もっと触れるべきだったのかもしれません。

今回の論文では、前半でこの問題を取り上げ、次のように整理しました。

・純保険料式責任準備金と株式含み益への依存を柱とした健全性確保の枠組みを続ける一方、1980年代に複数回の予定利率の引き上げや高水準の契約者配当を認めてしまったうえ、ロックイン方式の弱点を見過ごした。
・財務内容の手掛かりとなる経営指標が生保の経営実態を十分に反映していなかったため、問題を抱えた生保への対応が遅れた。
・1995年の保険業法改正でソルベンシー・マージン比率を導入する際、生保経営の深刻な状況を踏まえ、緩やかな基準としたことが裏目に出た。

保険会社に対する規制は1995年の保険業法改正の前後で対比されることが多いと思います。
しかし、健全性規制に注目すると、業法改正で整備が進んだというよりは、護送船団時代の不備が明らかになるなかで、リスクベースの新たな規制を導入しても十分機能せず、自己規律の活用という新たな取り組みも含め、いまでも試行錯誤が続いていると言えそうです。

※新車の「えのしま号」で藤沢へ(少し前ですが)

 

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生保決算のインタビュー記事

17日の保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました。
「生保会社2018年度上半期業績の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く、外貨建資産が経営に大きく影響」というものです。骨子は次のとおりです。

「一般勘定の資産構成で外貨建て資産の占める割合は決算のたびに高まり、会計上の利益でも外貨建て資産の影響が大きくなっている」

「運用リスクを高めているとはいえ、健全性の面では大きな変化は見られない。新契約価値の積み上げに加え、この上半期には株価が上昇し、長期金利も若干だが上昇。円安も進んだため、生保のリスクテイクがプラスに働き、支払い余力の増強につながった」

「商品・販売面を見ると、外貨建て保険、特に貯蓄性の強い商品が売れたかどうかで各社の保険料収入が大きく変動するのが目立つほか、収益性が高く、会社価値拡大を支えている保障性商品の販売は比較的堅調であった模様だ」

「近年の保険会社のグループ化や業務提携の動きが販売面に表れていることも注目される」

機会がありましたらご覧ください。
保険毎日新聞のサイトへ

※写真は旧万世橋駅です。

 

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責任準備金組入率とは?

毎日新聞の投書欄に「保険批判への反論も載せて」という保険関係者による投書がありました(11日)。
ビジネス誌による生命保険特集に掲載されている保険コンサルタントや評論家による商品評価の内容が、独自の視点による一刀両断といった内容ばかりで、しかも、的外れの内容があまりに多いので、せめて保険会社の言い分も載せるべきという内容でした。
保険数理のプロに「読む度にため息が出る」と言わせてしまうような記事が例えばどのような内容なのか、興味がありますね。心当たりが全くないわけではありませんが…

やや話がずれてしまいますが、私もこの週末に日吉駅の書店(ローカルですみません)で思わずため息が出てしまいました。
保険関係のコーナーにはなぜか三田村さん(大手生保の出身だそうです)というかたの書籍ばかりが並んでいて、いずれも保険会社を見極める指標として「責任準備金組入率(積立率)」を薦めていました
(個社ごとに指標の推移が載っていました)。

ここで言う「責任準備金組入率(積立率)」とは、損益計算書の保険料等収入に対し、経常費用の1項目である「責任準備金等繰入額」の占める割合です。
この数字が概ね40%あれば健全な財務力がある会社と考えられ、数字が低い会社は積み立てるべき責任準備金を積めていないとのこと。
思わずのけぞってしまった読者も多いかもしれませんが、このかたは少なくとも10年以上前から同じ主張を続けています。

当期の保険料等収入と責任準備金等繰入額を比べて何がわかるのでしょうか。
シンプルに説明すれば、保険会社は当期の保険料等収入のうち将来支払う見込みの部分を責任準備金として繰り入れる一方、責任準備金を取り崩す(戻入する)ことで、当期の保険金や給付金の支払いに充てています。ただ、繰入額と戻入額はネット表示なので、満期や解約などが多ければ責任準備金等繰入額が小さくなったり、収益として責任準備金戻入額が計上されたりします。さらに言えば、保険料等収入も、貯蓄性商品の販売により大きく変動します。

ですから、組入率(積立率)が小さいのは、単にその期の保険金等支払金が相対的に大きかったというだけであり、積み立てるべき責任準備金を積めていないわけでは決してありません。
2000年前後に破綻した会社の数字がいずれも小さかったので、この数字を重視しているのかもしれませんが、当時は生保への信用不安が解約の増加につながり、責任準備金の戻入が大きくなったという話です。高水準の解約が続いているので指標が低水準で推移しているというのであればまだしも、単にこの数字の大小をもって生保の健全性を見極めるというのは、どう考えても無理があります。

ということで、今回は「ため息が出る」話でした。

※ビュースポットに立つと富士山が見えました

 

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東京医大の第三者報告書

年末に公表された東京医科大学の第三者委員会「第二次調査報告書」「第三次調査報告書(最終報告書)」を読んでみました
(ちなみに、年明けに文部科学省が再調査を指導したとのことで、これが「最終」ではなくなりました)。
東京医科大学のサイトへ

これまでに判明していた「属性調整(=女子および多浪生に不利な扱い)」「個別調整(=特定者に対して加点)」に加え、第三次調査報告書には、「医学科入試において問題漏洩が行われた疑いがある」「個別調整と東京医大への寄付金との間には、何らかの関連性があった可能性がある」「入試に関する依頼(仲介の依頼を含む)と、依頼を受けた者に対する謝礼との間には、何らかの関連性があった可能性がある」と、さらなる疑惑を提示しています。
さらに、看護学科の入試では、国会議員の依頼を受け、試験結果の上位29人を飛び越えて補欠者となり、最終的に合格となった事例を明らかにしました。

医学部人気のなかで、今回の件が東京医科大学および附属病院の事業運営にどの程度のダメージとなるのかはわかりません。
しかし、世の中の人々が何となく存在するのではないかと思っていた「裏口入学」が本当に行われていたということで、社会に対する悪影響はかなり大きいのではないかと考えています。

※富士山が雲に隠れてしまいました。

 

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