対面販売の自粛を活かす

インシュアランス生保版(2020年5月号第4集)に執筆したコラムです。
東日本大震災の時も感じましたが、非常時には元々抱えていた経営課題も浮き彫りになります。
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非対面販売の活用

新型コロナ対応で保険営業の対面販売の自粛が続くなか、営業職員による訪問販売を主力とする大手生保が、既契約者とその家族に限り、一部の商品について非対面での加入解禁に踏み切るとのこと。代理店に対しても、限定的にではあるが、非対面による加入を認める動きが徐々に広がりつつあるようだ。
対面での営業活動を、オンライン営業を含めた非対面に置き換えるのはそう簡単ではない。zoomなどを使ったオンライン営業であれば、対面とほぼ同じことができるとはいえ、相手のネット環境にも左右されるうえ、長時間になるとリアルな打ち合わせよりも集中力がなくなってしまいがちだ。

しかし、特効薬が登場するまで、ウイルスとの共存を余儀なくされるのであれば、対面販売を再現するという発想ではなく、非対面ならではの販売モデル確立に向けて、いち早く動くべきではないかと考える。
オンライン営業を含めた非対面販売には、移動時間がかからない、証拠を残しやすい、同じ場所に集まらなくても打ち合わせができる、などの特徴がある。消費者としては、これまでは家庭や職場で営業パーソンから一対一で話を聞いていたものが、オンラインであれば他の家族にも打ち合わせに加わってもらいやすくなるし、保険に詳しい知人に同席してもらうのもハードルが低くなる。個人的な感覚かもしれないが、セールスを受けているという圧迫感もオンラインのほうが弱い。

職人芸からの脱却を図る

何よりも、これまで営業パーソンの「職人芸」に頼っていた営業活動を共有化することで、組織としてのマーケティング活動ができることが大きい。とりわけ伝統的な生保の営業職員チャネルでは、そもそも新型コロナ以前からビジネスモデルの賞味期限が取りざたされていた。かつてに比べればやや改善したとはいえ、大量採用・大量脱落の構造は今も残り、顧客開拓からクロージングまで、基本的に個人のスキルにかかっている。
今回の対面販売の自粛がなくても、こうしたモデルの限界は意識されていたことだろう。この機会に、例えばデータサイエンスを全面的に用いるなどして、新しい時代に合った販売モデルを模索すべきである。

保険販売、特に生命保険は訪問販売でなければ売れないという声も根強い。確かに、ニーズが顕在化している自動車保険などに比べると、生命保険(死亡保険)は自らが保険金を受け取ることはなく、遺族保障の必要性を想像してもらわなければならない。各種の保障を組み合わせた商品も多く、業界以外の人は説明を受けても理解するのが難しい(業界人は、例えば携帯電話の説明を受けたときのことを思い出してほしい)。
ただ、せっかく新型コロナ禍で家族のきずなが強まり、保障に対する人々の意識も変化していると思われるのに、一歩踏み出さなければ、みすみすその機会を逃すことになりかねない。もはや危機対応の段階から、新たなビジネスモデルを模索する段階にきているのではないか。
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※写真は福大オリジナルクッキーです

 

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大手損保グループ経営の現状

先週は大手損保グループ各社のIRミーティングがあり、いろいろと気付きがありました
(いずれも対面形式ではなかったので、福岡にいてもアクセスできました)。

まず、損保事業への新型コロナの影響は、国内と海外(欧米)でだいぶ異なっているようです。
東京海上やMS&ADでは、海外事業で数百億円規模の保険金支払いが発生する見込みです。主にイベント中止や事業中断などの保険ではないかと思います(取引信用保険も考えられますね)。
他方で国内では、2期連続で風水災による多額の保険金支払いが発生したものの、新型コロナ絡みの支払いは今のところ目立ちません。いわゆる新種保険の普及は国内ではまだまだということなのでしょう。

再保険市場のハード化もはっきりしました。長い間、保険料率の低下基調が続いていたものが、少し前から上昇基調に転じたようです。
このところ世界的に自然災害が多発し、国内でも1兆円を超える自然災害に伴う保険金支払いが2期連続で発生したうえ、新型コロナ関連の支払いや金融市場の不安定さも加わり、再保険市場はハードマーケットに転じた模様です。
確かに損保各社の出再保険料(火災保険)をみると、各社ともかなりのペースで増えていることがわかります。

もっとも、各社とも政策株式保有を減らしてきているとはいえ、引き続き株価下落がグループにとっての最大リスクか、それに近いということも確認できました(金利リスクも大きいですね)。

※ラタトゥユとカルパッチョを作りました。
 すいかは今季初です。

 

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生保決算の概要

例年とちがい、生保決算はまだ出そろっていませんが、国内系生保に関しては大まかな傾向は見えたのではないかと思います。

まず、資産価格変動の影響です。
一時は株価が大きく値下がりしたものの、結果的に日経平均株価は前年度末から10%程度の下げにとどまりました。それでも株式保有の多い会社では、株価下落で支払余力が圧迫を受けています。
他方で、米国をはじめ海外金利が大きく下がり、こちらは外国公社債の時価を押し上げています(ただし、為替はやや円高なので、影響が相殺されているところもあります)。
これらは損益計算書には部分的にしか出てきませんが、公表されているEV(エンベディッド・バリュー)を見ると、会社価値への影響としては最も大きい要因だったようです。

保険関係では、会社によっては経営者保険の販売停止などにより、新契約価値が影響を受けています。第三分野の新契約年換算保険料が軒並み前年割れとなっているのもちょっと気になります。ただし、新型コロナの影響は、この段階ではほとんど見られません。
なお、大手生保が相次いで投入した健康増進型保険も大ヒットとまではいかなかった模様です。

こうしたことは、保険料等収入と基礎利益だけ追いかけていては、全く見えてきません。
メディアは今回のかんぽ生命(=営業を自粛していた)や大同生命(=経営者保険の販売を停止していた)の基礎利益が増えたのを見て、この指標に何も疑問を感じなかったとしたら、さすがにおかしいと思います。

国内系生保の経営が総じて保険ではなく、資産運用に左右されやすいのは、リスクの取り方がそうなっているからです。
このことについて、第一生命ホールディングスは決算説明会資料(PDF)のなかで、日本の大手生保グループとして初めてグループ統合リスク量の内訳を開示し、金利・株式を中心とした市場関連リスクが全体の7割を占めることを明らかにしました。
同社は金利リスクと株式リスクの削減に取り組み、市場の変動に左右されにくいリスクプロファイルにしていくとのことです。

※自宅からビーチまで歩いて行けました!

 

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日産生命破綻処理に関する覚書き

保険会社の2019年度決算発表が始まりました。
まずは上場生命保険会社グループということで、15日に第一生命ホールディングス、T&Dホールディングス、日本郵政・かんぽ生命の決算発表がありまして、今週は損保決算、(非上場の)生保決算と続きます。

政府の緊急事態宣言が出たのは4月上旬なので、今回の決算発表では対面販売自粛の影響は営業数値にほとんど出てこないのではないかと思います。
他方で、非対面での保険販売を主力とするライフネット生命は4月の業績速報(PDF)で、新契約業績が過去最高を更新したことを明らかにしました。アドバンスクリエイトも4月の業績概要(PDF)で、保険代理店事業において、対面販売が落ち込む一方、通信販売が急増したことを示しています。

予定利率の引下げ

さて、タイトルは「日産生命破綻処理に関する覚書き」でしたね。
生命保険経営学会の機関誌「生命保険経営」最新号(第88巻第3号)に、明治安田生命保険の佐藤元彦さんによる同名の論文が掲載されました。

1997年4月に破綻した日産生命の破綻処理は、その後も相次いだ生保破綻の処理に大きな影響を与えました。
なかでも、「既契約の予定利率引下げ」と「早期解約控除の設定」は、次の東邦生命(1999年破綻)をはじめ、全ての破綻処理で採用されています。

論文によると、保護基金の発動、イコール契約条件の変更ということではなかったそうです。しかし、「収支上の必要性から予定利率引下げは余儀ないものだった」(論文より引用)。論文の注記には、「資金援助上限額2000億円だけで処理が可能だったとしたら、予定利率は引下げなかったであろう」とありましたが、資金不足が大きく、そうもいかなかったようです。

数年後にアクサが日本団体生命を買収し、破綻後ではないので、当然ながら高利率の契約もそのまま引き受けています。当時のアクサがどう判断したのかはわかりませんが、もし将来収支がマイナスでも、顧客基盤や新契約獲得能力など(いわゆる「のれん」ですね)に大きな価値があると判断すれば、条件変更なしでの破綻処理もありえたのかもしれません。
もっとも、破綻により日産生命の事業基盤はダメージを受けており、のれんを高く見積もることもできず、予定利率の引下げはやむを得なかったということなのでしょう。

新日産生命構想

「新日産生命構想」は本当にあったのですね。
破綻した日産生命の既契約の受け皿会社を、日立・日産グループ各社の共同出資で新設するというもので、既契約の維持管理だけでなく、新契約の獲得も行う保険会社を新たに立ち上げる構想でした。日産生命の欠損額が大きく、保護基金の資金援助2000億円では賄いきれないので、「残りの欠損額については、新日産生命の営業力と予定利率引下げ後の既契約の収益力を評価し、営業権として資産計上することで補う」(論文より引用)というスキームです。

残念ながら日立・日産グループからの出資を得られず、新日産生命構想は頓挫しました。論文には早期解約控除についての言及がなく、日立・日産グループの信用が拠りどころということで、出資者としては再破綻の可能性を意識したのかもしれません。

早期解約控除

最終的に日産生命の破綻処理は、生命保険協会の100%出資により、既契約の維持管理のみを行う受け皿会社(あおば生命)を新設し、そこに日産生命の契約を移転するスキームとなりました。既契約に対しては予定利率引下げなど基礎率の変更を行い、さらに、ここで「早期解約控除」が出てきます。

早期解約控除とは、業務再開後の数年間は、通常の解約控除に加え、一定額の解約控除を上乗せするというものです。
初年度の控除率を15%としたのは、「(保護基金からの)資金援助がなされない場合、およそ15%程度の積立金毀損が発生する」との見解を佐藤さんは示しています。この15%が妥当だったのかどうかはわかりませんが、あおば生命の経営を安定させるのに寄与したのは間違いないでしょう。後に生保協会があおば生命を売却できたのも、「既契約の予定利率引下げ」「早期解約控除の設定」をセットで実施したからだと思います。

会員以外のかたが論文を読めるようになるのは2022年1月になってからですが、破綻処理策の原案作成者による覚書きは貴重だと思いまして、ブログで紹介しました。

※緑が濃くなりましたね。

 

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生命保険会社の会社数の推移

inswatch Vol.1032(2020.5.11)に寄稿した記事のご紹介です。

【5月14日訂正】生命保険会社の会社数は42社でした(チューリッヒ生命のカウント漏れ)。大変失礼いたしました。

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テレビのニュースもネットの見出しも新型コロナ関連の話ばかりなので(私も先月のinswatchで取り上げました)、今回は全く違うテーマを取り上げてみましょう。

日本に生命保険会社は何社あるか

正解は41社です(2020年5月1日現在)。日本では保険業は免許制(少額短期保険業は届出制)なので、金融庁から免許を取得している生命保険会社が41社あるということになります。

意外に多いと感じるかもしれませんし、「生保は大手銀行や損保に比べると再編が進んでいない」と言われることもあります。確かに大手生保(4社または5社が大手とされる)の市場シェアは圧倒的というほど高くはありません。
ただ、日本の生命保険市場が世界第2、3位の規模という巨大なマーケットであることを踏まえれば、会社数が多すぎるという指摘は当たらないようにも思います。

ご参考までに、損害保険会社は53社(同)あります。3メガ損保グループが収入保険料の8割超を占める超寡占市場なのに、どうして会社数が多いのかというと、3グループともに機能・役割の異なる保険会社を複数持っているうえ、規模が小さく、特定の分野に特化した会社が数多く存在するからです。
また、このなかには再保険会社も含まれていて、生命再保険を主力とする会社でも、損害保険会社の免許を取得することになります。

「増加」から「横ばい」へ

次に会社数の推移を見てみましょう。
生命保険協会が「生命保険の動向」という資料の中で、「生命保険協会加盟会社数の推移」というグラフを掲載しています。生命保険協会には全ての生命保険会社が加盟していますので、これが会社数の推移を示したものです
(損害保険会社には日本損害保険協会の会員ではない会社があります)。

グラフをご覧いただくと、過去50年間のトレンドは概ね右肩上がりに見えます。もっとも、2000年代以降だけで見れば、横ばいと言うべきかもしれません。
50年前の20社から外資や異業種からの参入により会社数が徐々に増え、1996年度には損保による生保子会社の設立で会社数が一気に増えました。その後、2000年の49社をピークに減少に転じ、一時は40社を割り込んだものの、新規参入もあり、現在に至っています。

生保は人口減少や高齢化の進展などから衰退産業と揶揄されることもありますが、再編による会社数の減少もあるなかでの41社ですから、新規参入者には依然として魅力ある市場に映っているのでしょう。

外資系生保の存在感

外資の存在感が高いことも、日本の生保市場の特徴と言えるでしょう。
規制緩和が進み、日本の金融・保険市場が閉鎖的と言われることはほとんどなくなりました。それでも日本の市場が外資系に席巻されることはなく、特に個人分野では圧倒的に国内系が顧客基盤を確保しています。銀行もそうですし、証券も損害保険もそうです。

ところが生命保険だけは、外資系が市場を席巻するとまではいかないにしても、一定の存在感を確保していると言えるでしょう。2000年前後に起きた中堅生保(いずれも国内系)の相次ぐ経営破綻のほか、国内系とは異なるビジネスモデルを採用してきたことが結果として顧客の支持につながり、現在の地位を築いていると考えられます。
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※大分県に行ったのではなく、近所に「別府」という地名・駅があるのですね。

 

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大学生の生活変化

大学生協共済の知人から、全国大学生協連が行った緊急アンケート結果のご案内をいただき、興味深く拝見しました。
大学生協連のサイトへ

自由記入欄には経済的な不安や、リアルなつながりがないなかでの不安や不満、そして将来や進路に対する不安が増したという声が数多く寄せられています
(調査期間は4/20-30で、回答の半数弱が1年生)。

web授業

母集団に偏りがあるかもしれないので、あくまで参考として集計結果を見ると、まず、web授業で同時双方向型(学生と教員が顔を合わせるスタイル)が意外に支持されていないのが目につきました(項目26)。理由はわかりませんが、動画教材を活用したオンデマンド型のほうが「よりよく学べる」と回答した学生が多かったようです。
もっとも、「授業の特性によって異なるため1つには選べない」という回答が一番多く、これはそうだろうなあと思います。

web授業の通信状態は「ストレスなく受信できている」「時々途切れることがある」が4分の3を占める一方、通信環境以外で困っていることとしては、「目が疲れる」「集中力が続かない」が上位に挙がっていました(項目25、29)。確かに私も、時間が長くなると、対面よりも疲れる感じがします。

生活への影響

外出自粛は食生活にもに影響を及ぼしているようです。新型コロナで食事環境がどのように変わったのかという質問に対し、「自炊の機会が増えた」「外食の機会が減った」のほか、「間食が増えた」「食事をする時間帯が変わった(不規則になった)」という回答も多く挙がっています(項目41)。食生活での不安としては、「栄養バランスが悪いと感じる」「体重が増えた」が上位となりました(項目46)。
参考までに、回答者の半数弱が一人暮らしです。

そして、最近の体調について多かった回答が、「やる気が起きない」「ストレスを感じる」「目の疲れ」でした
(「特に問題なし」という回答も多いです)(項目47)。
調査期間にはまだ授業が始まっていなかった学生が半分弱いて、かつ、一日のうち「SNS」「テレビ・映画・Youtubeを見る」に多くの時間を使っている調査結果(項目20)を踏まえると、そのような回答が多いのも理解できます。
逆に言えば、授業を含めた生活のリズムをうまく作るのが大切だということなのでしょう。

 

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諮問委員会のメンバー

大学の授業がようやく始まり、遠隔授業(オンライン授業や課題学習など)を試行錯誤しながら行っています。
オンライン授業は発信者(=私)のネット環境によるところが大きく、初回の授業では早々に課題学習に切り替えざるをえなくなり、あとからレジュメに音声をつけたものを作成し、学生の皆さんに提供しました(実は音声付きファイルをアップするのも大変でした)。緊急事態宣言がひと月ほど延長されるようなので、こうした格闘がしばらく続きそうです。

※福岡大学商学部2年生の皆さんは、5日、6日とゼミ相談をやりますので、お気軽に連絡(メール)してくださいね。

その緊急事態宣言ですが、けさの日経新聞にあるとおり、宣言の内容を変更するには「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の分析結果を踏まえて政府が方針案を策定し、これを「基本的対処方針等諮問委員会(新型インフルエンザ等対策有識者会議の下部組織)」に諮ったうえで、国会報告を経て、最終決定するという流れになっています。

かつての同僚である増島弁護士のつぶやきを見て、諮問委員会のメンバー(PDF)を改めて確認すると、16人のうち12人は専門家会議のメンバー(PDF)で、16人のうち14人が感染症の専門家(あとの2人は弁護士)となっていました。専門家会議も諮問委員会も(おそらく厚生労働省が選んだ)感染症の専門家と少数の法律の専門家で構成されていて、しかも、現状分析と政府方針の妥当性判断をほぼ同じメンバーが行っているのですね。

海外諸国と同じく、日本でも徐々に出口を探っていく局面となるでしょうし、今後はかつてないほどの悪い経済指標が次々に出てくるなかで、経済をどうやって立て直すかを考える必要性が高まります。その際に、政府方針の妥当性判断を行う諮問委員会に経済の専門家が1人もいないというのは確かにちょっと心配です。

今後、再度の感染拡大を心配する感染症の専門家と、経済活動の自粛緩和を求める世論とがぶつかりあうこともありうるでしょう。ただ、いまの立て付けだと、政府は感染症の専門家の意見にしたがうか、あるいは、世論に押し切られ、何となく「政治判断」してしまうか、いずれかになるのでしょうか。

※男の手料理。ジャーマンポテトを作りました♪

 

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会計基準の柔軟な運用

週刊金融財政事情(2020.4.20)の書評「一人一冊」で、沢渡あまねさんの「仕事ごっこ その”あたりまえ”、いまどき必要ですか」をご紹介しました。本書は日本の職場ならどこにでもありそうな12の事例を取り上げ、なんと童話を使ってわかりやすく伝えています。
形骸化した仕事や慣習、仕事のための仕事といった「仕事ごっこ」はなかなか絶滅しません。でも、新型コロナで思いがけず業務の見直しを迫られた結果、こうした「仕事ごっこ」がなくなるといいですね。

会計基準の柔軟な運用

25日の日経1面トップ「決算、コロナの影響緩和」「引当金や減損 世界で柔軟対応」によると、日米欧の当局が会計基準を柔軟に運用できるよう動き始めたとのことで、将来の価値を過度に悲観的に見積もらなくてもいいようにし、経済収縮の悪循環につながることを防ぐのだそうです。

当局が金融機関の健全性規制を一時的に緩和し、実体経済の悪化に拍車をかけないようにするというのはまだ理解できます。もし事態がさらに悪化し、金融機関の経営が一段と悪化しても、当局ができることはあります。
しかし、ある事業会社が会計基準を柔軟に運用し、監査法人も楽観シナリオを許容し、結果として決算数値がそれほど悪くならなかったとして、銀行は「(例えば)決算が赤字にならなくて、ホッとしました」と、そのまま取引を続けるのでしょうか。もしかしたら、事業会社と銀行の関係だとそうなるのだとしても、投資家は同じような目線でその事業会社を見るでしょうか。

ガバナンス改革の真価が問われる

こうした会計基準の話になると、私の偏見かもしれませんが、どうも情報発信者の論理が優先されがちで、情報の利用者は二の次となってしまうように思えてなりません。
でも、考えてみてください。公表された会計情報が信用できないと判断した投資家は、どのように行動するでしょうか。情報を必要以上に保守的にとらえ、相手に大きなディスカウントを要求する、あるいは、そもそも投資を見送るでしょう。やはり経済は収縮します。

日本は間接金融が中心だと言われてしまえばそれまでです。ただ、日本銀行「資金循環の日米欧比較(PDF)」によると、2019年3月末における民間非金融法人企業の金融負債に占める借入の割合は24.3%で、ユーロエリア(28.7%)よりも低い水準です(米国は7.1%)。1990年代までに比べると、借入の位置付けはかなり下がっています。
この間、証券市場からの調達が増えたのではなく、資本(内部留保)が積み上がったからこそ、日本では政府主導でガバナンス改革が進められてきました。

会社経営のガバナンスは平時にどう機能しているかも重要とはいえ、非常時にはその真価が問われます。非常時ゆえに決算発表の延期は仕方がないにしても、もし決算数値そのものを歪めるるような対応をとるのであれば、投資家をはじめとしたステークホルダーが理解し、納得できるような説明をする必要があると思います。

※自宅でシイタケ栽培。美味しくいただきました。

 

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米国金利の低下

経済同友会の櫻田代表幹事(SOMPOホールディングス社長)の「10万円給付を電子マネーで」が格好の炎上ネタとなってしまいました。
今回の施策の緊急性と電子マネーの普及度合いを踏まえると、さすがに今の日本では無理でしょう。ただ、世間の反応を見ると、まだまだ電子マネーは「お金」とはみなされていないのですね。
「条件付きで30万円給付」は困っている方々への生活支援という目的が明確でしたが、「一律に10万円給付」となるとどうでしょう。もちろん生活に苦しい方々への助けにもなりますし、総額も増えるのですが、今のところ1回限りの10万円ですよね。本当に困っている方々への生活支援としては不十分ですし、むしろ「10万円渡すから政府に協力してくださいね」というお見舞金の性格が強まったように思います。

米国金利の低下

さて、このところ米国の長期金利がかなり低くなっています。10年国債利回りは0.6%程度、30年が1.2%程度と、見たこともないような低水準です。
(ちなみに日本の10年国債利回りはほぼ0%、30年は0.5%程度です)。

ここまで金利が下がると、米国の生保経営にも影響がありそうです。
格付会社ムーディーズは4月1日に、米国生保業界のアウトルックをネガティブに変更しました。低金利と新型コロナウイルスによる影響を懸念しているためです。
ムーディーズのサイトへ

厳しい経営環境

米国生保といってもビジネスモデルは多種多様ですが、伝統的な利率保証型の商品を中心に提供している会社では、公社債によるマッチング型ALMを行い、金利リスクをヘッジするのが一般的です。一般勘定での株式保有は少なく、市場リスクではなく、主に信用リスクで運用収益の確保を目指します。

しかし、景気低迷で公社債のデフォルトが相次ぐようになれば話は別ですし、そもそも超低金利下でマッチングや最低保証のヘッジが有効に機能しているかという心配もあります(GMWBなど大丈夫なのでしょうか)。
もちろん商品開発での制約も大きいですし、新型コロナで対面販売もままならないでしょう。

日本の生保を取り巻く経営環境も非常に厳しいですが、超低金利は今に始まった事象ではありませんし、危険差益を獲得しやすい保障性商品を主力にしているため、新たな時代に合ったビジネスモデルの見直しに力を注げるのではないでしょうか。

※近くの公園で春を感じてきました。

 

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新型コロナウイルスと保険会社経営

inswatch Vol.1028(2020.4.13)に寄稿した記事のご紹介です。

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4月から東京を離れ、福岡市にある福岡大学商学部で研究および教育活動を行うことになりました。主に「保険論」「リスクマネジメント論」の講義を受け持ちます。キャピタスコンサルティングにも非常勤として残るので、福岡と東京の二重生活となる予定です。

とはいえ、福岡にも非常事態宣言が出され、東京に戻るどころか、大学への立ち入りも原則として禁止です。新生活のスタートがこのようなものになるとは全く予想していませんでしたが、ネット環境が快適とは言えないまでも、何とかこちら(福岡の自宅)で仕事をできるようにはなりました。IT技術の進展はありがたいです。

昨年度決算はそれほど深刻なものではなさそう


さて、本年度もしばらく生保経営に関する話を続けることにしましょう。

4月となり、保険会社では昨年度決算の取りまとめが行われているところです。非常事態宣言が出るようななかで、作業は例年よりも大変だと思いますが、おそらく保険引受面での影響はほとんどありません(インフルエンザの発生が少なかったというプラス要因もあります)。
2月下旬からの株価急落には肝を冷やしましたが、通期で見れば、株価指数は10%程度の下落にとどまりました。主要通貨も豪ドルを除き、総じてやや円高といった程度なので、ソルベンシーマージン比率などの健全性指標がひどく悪化するようなことはなさそうです。

景気低迷による保険需要の減退


もちろん、今後の金融市場の動きは予断を許しませんし、日本銀行がマイナス金利の深掘りをしてしまい、超長期金利の水準が一段と下がるという悪夢のシナリオも否定はできません。
とはいえ、金融市場の急激な変動はリーマンショックで経験済みですし、海外事例を見ても、新型コロナの死亡者数が日本全体で数十万人に達するとは考えにくく(保険会社はその程度のシナリオまで想定して経営しています)、今のところ財務面の心配はそれほどしなくても大丈夫かと思います。

これに対し、営業面には深刻な影響が出るかもしれません。
パンデミックの発生が特定地域ではないため、ほぼ全国で営業活動に支障があります。会社専属の営業職員チャネルを主力とする会社でも、独立チャネルを中心に展開する会社でも、対面販売ができないのは非常に厳しく、事態がいかに早く収束に向かうかにかかっています。

新型コロナが人々の行動を変える


もし事態が収束に向かったとしても、単にそれ以前の状態に戻るということはないと思います。
2011年に発生した東日本大震災の後、対面販売チャネル、とりわけ顧客のもとに足を運ぶ訪問販売が再評価されました。ネット生保の苦戦もそのようななかで起きました。

今回はどうでしょうか。新型コロナの感染者数が頭打ちになっても、顧客が来訪者を気軽に受け入れるには、よほど親しくないかぎり、相当な時間を要するかもしれません。
ネット環境も一段と身近なものとなります。半ば強制的にとはいえ、テレワークやオンライン会議が日常となった顧客が、保障を得たいと思ったときに、どのようなチャネルを選ぶでしょうか(単純にネット生保に移行するということではないかもしれませんが)。

東日本大震災の後で人々の行動が変化したように、ポスト新型コロナの世界でも、人々の行動が変わることは間違いなさそうですし、それに応じたビジネスモデルの見直しが求められることでしょう。
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※週末にミートソースを作りました。
 30分以上も煮込んだ力作(?)です。

 

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