米国便り(その4)

 

火曜日からニューヨークにいます。
観光地ということもあり、「どこが不景気なの?」という感じです。

米国政府が数ヶ月前に行った「ストレステスト」の公表以降、
金融機関への信用不安はかなり遠のいた感がありました。
ところが、どうもそうではないらしい、というのが当地で得た感触です。

金融機関は預金を積極的に増やす一方、依然としてかなりの
キャッシュを抱えています。あえて逆ざやに甘んじているわけです。
そして、個人向けローンや商業用不動産向けローンの焦げ付きが
本格化する兆しがあります。

他方、大手生保を見ると、「質への逃避」が顕著です。
しかも、昨年後半の「変額から定額」「伝統生保への回帰」とは違い、
大手生保の一部では変額年金の販売が好調です。
この資金はどこに向かわず、変額年金に行ったのでしょうか。

なかなか判断が難しい局面ですが、あまり楽観視しないほうがよさそうです。

 

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米国便り(その3)

 

今回の出張ではいくつかの地方都市に滞在し、
そこで生活する日本人の方々にお世話になりました。m(_ _)m

皆さんに共通したコメントに、「汗をかかない生活」というのがありました。
アトランタやコロンビアといった南部の都市では
夏はかなりの暑さになります。40度近いこともあるようです。
湿気もそれなりに多いです。

しかし、どこへ行っても冷房があり、移動はすべて車となると、
暑かろうがジメジメだろうがほとんど関係ありません。
外気に触れるのは建物から駐車場までのわずかな時間だけ。
これでは汗をかくことはありませんよね。

フィットネスセンターでトレーニングをするなど、自ら運動でもしないと
ほとんど汗をかく機会がないそうです。

仕事で会ったこちらの米国人女性も、
「東京に行くと暑くて大変よ。外を動くことが多いから」
と話していました。

もっとも、日本の地方都市でも似たようなものかもしれません。
ただ、これに当地の食生活が加わります。肉食中心で油や糖分が多く、
何よりボリュームがすごい。しかも、こちらの皆さんはペロッと平らげます。

一般に日本人は40歳すぎたら代謝が下がり太りやすくなりますが、
こちらではもっと早い段階から代謝を上回るエネルギーをため込んでしまうでしょう。
太っている人が多いのも理解できます。

※写真はミルウォーキー。シカゴの北にあります。
 ビールの町としても有名です。

 

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米国便り(その2)

 

米国には日本のような健康保険制度がありません(高齢者、障害者を除く)。
無保険者は全米で4570万人(国民の約15%)に達しています。
そこでオバマ大統領は公的保険制度を創設し、無保険者をなくそうとしています。

しかし、この医療保険改革に対する反対意見も非常に多いため、
オバマ大統領は全米各地でタウンミーティングを開き、
国民の理解を得ようという作戦を展開しています。
テレビでは連日ミーティングの様子が大きく取り上げられています。

国民皆保険が実現しない背景には、民間保険会社や医療サービス関係者の
反対もさることながら、「自分のことは自分で」という国民性、あるいは、
連邦政府が大きくなることへの不安感などがあるようです。

保険会社の監督が依然として州単位であることや、
あれだけ乱射事件が起きても、現在も銃を簡単に買えることなど、
米国は私の想像以上に「自由」と「自己責任」の国のようです。

基本的に政府への信頼感が強く、お上への依存心が強い日本とは
大違いですね。

※写真はチャールストン。独立戦争や南北戦争ゆかりの地です。
 18世紀の建物がたくさん保存されています。

 

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米国出張200908

 

世間はお盆休みですが、私はしばらく仕事で米国にいます。
前回は昨年11月だったので、約9ヶ月ぶりの訪米です。

日本で新聞やニュースを見るかぎりでは、米国は最悪期を脱した
という雰囲気ですが、果たして本当にそうなのでしょうか。
現地でいろいろ見たり聞いたりできればと思っています。

今日は朝から午後3時すぎまでミーティング。
ランチも同じ会議室でサンドイッチをいただきましたが、
英語で話をしながらのランチなので、なかなか辛いです
(私はほとんど聞き役でしたが…)

米国の会社とのミーティングでは、お茶やコーヒーのほかに
甘いお菓子を用意してあることが多いですね。
飲み物もコーラやジュースなど、種類がいろいろありました。

 

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思い込み

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父、私、息子の3人でお伊勢参りに行きました。
この組み合わせでの旅は初めて。
参道の店を冷やかしたり、古い町並みを訪ねたり。
父子3代の旅もなかなかいいものです。

面白いことに、旅館の仲居さんや喫茶店の店員さんなど
旅先で会った人たちの多くは「お父さんと2人の息子の旅行」
と勘違いしていました。
あとからわかって、息子に「ごめんね」と謝ることもしばしばでした。

息子の身長は170cm近くありますが、顔を見れば中学生そのもの。
私と兄弟というのはかなり無理があります。
二人で出かけて兄弟に間違えられたことはほとんどありません。
他方、私と父の関係は「親子」と認識されるようです。

どうやら、孫というと小学生以下の小さい子、という思い込みが
多くの人にはあるようなのですね。
だから、見かけの大きい息子をなかなか孫とは認識しなかったのでしょう。
面白いものです。

今週(10日)のプロ代理店向け有料メールマガジンinswatchには
私の原稿が載っています。
テーマは「RINGオープンセミナー・番外編」です。
inswatchのHPはこちら
ご参考まで。

※写真は伊勢神宮と赤福本店です。

 

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保険学セミナー懇談会

先月のことですが、保険学会の先生たちの会合で
2008年度の生保決算について話をする機会がありました。
例年は業界関係者が解説していたようですが、
今年は「中立的なアナリストの立場から話してほしい」と
私にお鉢が回ってきました。

同じ生保決算の話でも、相手によって関心事項や知識の水準が違うので、
できるだけ中身を変えてスピーチするようにしています。
ただ、一口に大学の先生といっても専門はバラバラでしょうし、
今回は目線をどこに合わせればいいか悩みました。

幸い大阪でも東京でもそこそこ質問があったので、
とりあえずホッとしました。

主な質問は「株式保有をどう考えるか」「相互会社と株式会社」
「生保は支払い余力をどうやって回復するのか」などなど。
覚悟していた(?)「答えに困る」質問もほとんどなく、
熱心に聞いていただけたように感じました。

反対に東京では私から、

「相互会社と株式会社の優劣にしても、健全性規制にしても
 米国のように実証分析などを通じてアカデミズムが果たせる役割は
 もっと多いのではないか」

といった話もさせていただきました。

また、大阪では若手の先生がたと二次会、三次会とお付き合いいただき、
交流を深めることもできました。
保険業界と同様に、学会も岐路に立っているのは間違いなさそうです。
このあたりの話は別の機会にでも。

なお、スピーチの内容と全く同じではありませんが、
8/17の週刊金融財政事情に08年度生保決算の分析記事が
掲載される予定です。機会があればご覧いただければと思います。

※写真は名古屋の味噌煮込みうどんです。

 

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新型インフルエンザの現状認識

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保険業界紙「インシュアランス(損保版)」8月号第1集に載っていた
東京海上リスクコンサルティング・指田朝久BCM事業部長のインタビュー記事。
このところ新型インフルエンザが話題になることはほとんどなくなりましたが、
よくまとまっていて勉強になりました。

まず、マスメディアを中心に混乱が目立つとのこと。

・弱毒性が強毒性に変異 → このような変異はしないそうです
・弱毒性だから安心 → 弱毒性でも致死率が2%になりえます
・新型ウイルスは変異する → 新型だけが変異するのではなく、
                    季節性インフルエンザも変化しています

日本では今冬に5000万人が感染するとの予測があります。
少なくとも何千万人単位で感染者が出ると見るべきだそうです。
しかも、WHOでは感染被害が3年間続くと見ています。

今の致死率が低い新型インフルエンザで可能性が高い危機は、

「最初の集団感染企業となり、大きく報道されること(=風評被害)」
「突発的な集団感染で特定の職場の機能が突然マヒすること」

など。強毒性インフルエンザや地震被害のリスクとはかなり違いますね。

※写真はみなとみらいです。

 

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保険会社のディスクロージャー誌

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2009年版の生損保ディスクロージャー誌が公表されています。
多くは「○○生命の現状」というタイトルの冊子です。

決算発表時には公表されないデータもいくつかありますし、
沿革や経営陣、経営方針といった会社情報をつかむのに
ディスクロ誌は役立ちます。

かつてはディスクロ誌を入手するのが結構大変でした。
保険業法で一般の縦覧が義務付けられているにもかかわらず、
頼んでももらえなかったり、いちいち目的を聞かれたりしました。
今は各社のHPからダウンロードすることができます。

ディスクロ誌にしか載っていないデータとしては、

 ・契約年度別の責任準備金残高(生保)
 ・契約者配当準備金明細表(生保)
 ・利息及び配当金等の分析(生保)
 ・受再保険料・出再保険料の推移(損保)
 ・出再保険料の格付けごとの割合(損保)
 ・事故発生からの期間経過に伴う最終損害見積額の推移(損保)

などなど。

このほか上場損保では、決算短信が連結中心となったため、
ディスクロ誌にしか掲載されない個別決算データもあります
(有価証券の時価情報など)。

昨年5月に開業したライフネット生命のディスクロ誌を見たところ、
三利源やソルベンシー・マージン比率(SMR)の考え方の図解、
保険料の構成についての解説、第三分野のストレステストおよび
負債十分性テストの説明などが載っていて、参考になります。

ちなみに同社のSMRは41117%(2009年3月末)でしたが、
開業初年度ですし、SMRにはビジネスリスクが反映されないため、
これは指標の限界なのでしょう。

※写真は伊豆急「リゾート21」です。

 

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損保労連「げんき」

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損害保険労働組合連合会(損保労連)の機関誌「GENKI(げんき)」には、
労連が開催したセミナーの講演録が載っています。
80号には、日本損害保険協会の竹井直樹さん(業務企画部長)、
金融庁監督局の長谷川靖保険課長の講演録などがありました。

以下では、私の目に留まったところをご紹介しましょう。

竹井さんの講演(3/18)は「保険自由化10年と損害保険業界」。
冒頭に損保協会の紹介があり、250名の職員のうち、
95%以上がプロパー職員ということ。
ロビー活動よりも、苦情・相談対応や業界インフラ関連業務の
ウエートが多いそうです。

竹井さんは保険自由化がもたらしたものとして、

・消費者や保険契約者の利便性の向上
・商品の複雑化
・消費者視点の欠如

を指摘したうえで、

「殺伐とした消耗戦を回避するためにも、新たな業界秩序の構築が必要」

と話し、具体策(標準約款のオーソライズと公表)を示しています。
私もよく考えてみたいと思います。

金融庁の長谷川さんは「保険監督行政の現状と課題」。
4/1の開催です。

・連結ベース(またはグループベース)で監督していくことの重要性を
 AIGの件で感じている
・大和生命から引き出せる教訓は、「ビジネスモデルの持続可能性」
 「SMRの見直しを」
・ストレステストを含めた統合的なリスク管理が非常に大事

などが財務に関する課題が話の中心だったようですが、
コンプライアンスに関して、

「若干懸念しているのは、(中略)何か保険金の支払い額は
 少ないほうがいいとする評価システム・体制がありはしないか」
「損害率に対して目標値を設定している会社がありはしないか」

というコメントもありました。

※写真は伊東温泉です。

 

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NKSJホールディングス

昨日(7/29)、損保ジャパンと日本興亜損保が「経営統合に向けての契約書」
を締結し、経営統合計画の概要を発表しました。

この件で、30日の日経に私のコメントが載っています。

「損保ジャパンの株主から統合を評価されるには、新会社が
 どう将来利益を生み出していくかの明確な事業計画が必要」

というものです。

コメントの内容はおかしくないと思うのですが、そもそも、
株主でも株式アナリストでもない私がコメントするのは変な話です。
ただ、大株主はこのタイミングでコメントするわけにはいかないでしょうし、
株式アナリストはレポートを出す前に見解を話せないのでしょう。
そのような背景があるということでご理解下さい。

7/27号の日経ビジネス「統合比率は1対0.9 !?」という記事にも
コメントが出ています。同じような事情があるのだと思います。

ちなみにコメントは、

「サブプライムローン関連の証券化商品を含む金融商品の保証をする
 金融保証保険で2009年3月期に1479億円もの損失を出した」

というものです。ただ、そのあとに
「このため、統合比率は日本興亜側に有利になる可能性もある」
と続いています。私自身は統合比率についてコメントしていません。
このあたりは対応がなかなか難しいところです。

発表当日は記者会見のほか、機関投資家・アナリスト向けカンファレンス
(≒電話&ネット会議)が開催されました。
私は投資家向けカンファレンスにアクセスしましたが、統合比率に関しては、

「確かに1株当たり純資産のような指標で見ると差があるかもしれないが、
 統合によるシナジーが見込めるので、損保ジャパンの株主にも
 十分メリットがあるはず」

というコメント(質問に対する回答)がありました。
株主の理解を得られるかどうか、年末の臨時株主総会に注目です。

機関投資家・アナリスト向けネットカンファレンスへ

他方、記者会見では「統合効果は消費者にも還元されるのか」といった
カンファレンスとはかなり違うやり取りがなされたようです。

MSN産経ニュース・社長会見ライブへ

※いつものことですが、写真と本文は関係ありません。念のため。

 

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