私は以前から都市の交通システムに関心があり
(卒論は「19世紀ロンドンの地下鉄建設について」でした)、
今でも「車本位のまちでいいのか?」という視点から
自転車や路面電車などを活用した取り組みに注目しています。
現在、日経新聞のゼミナール欄(経済教室の左横です)では、
「新時代の公共交通」を連載しており、毎回興味深く読んでいます。
8日は「官のかかわり方」についての記事でした。
公共交通(特に鉄道系)の費用負担の考え方は
日本と欧米で大きく異なります。
日本の公共交通は、事業による運賃収入で運営費を賄うだけでなく、
整備費(実際には建設時の借入金返済)も賄うのが基本です。
これに対し、欧米の公共交通の多くでは、
整備費の大半を公的資金で賄ったうえで、
事業運営も公的補助に依存しているケースがほとんどです。
欧米が日本のように独立採算制を基本としないのは、
社会インフラに対する考え方の違いがあります。
採算が取れなくても社会的に必要なものは整備するという発想です。
日本でも道路(特に地方)は社会インフラとしての役割から
公的資金により整備されてきました。
しかし、都市の公共交通は、一部の建設費への補助を除き、
整備費・運営費ともに運賃で賄う枠組みでやってきました。
ただ、地方都市を中心に、この枠組みの維持が難しくなっています。
写真の豊橋では豊橋鉄道が路面電車の運行を維持していますが、
収支は黒字だったり赤字だったりのようです。
同じ愛知県でも、岐阜では名古屋鉄道が2005年に
市内線を廃止しています。
「車本位のまち」から脱却するには、公共交通の維持・拡大が欠かせません。
それには従来の枠組みを根本的に見直す必要がありそうです。