減損リスクとは

26日の日経「持ち合い株の価値2.3兆円減 資本目減り 減損リスクも(有料会員限定)」という記事に違和感を覚えました。

最初の部分だけ引用しますと、「新型コロナウイルスの感染拡大による株安が、2020年3月期の企業の利益や資本を直撃する可能性が高まっている。上場企業が保有する政策保有株(持ち合い株)の価値は、25日時点で昨年3月末から2兆3800億円減った。買収した上場子会社の株価が取得価格から5割以上下がった例もあり、減損リスクもくすぶる。(後略)」とのこと。

株安が利益や資本を直撃するというのはいいとして、「減損リスク」とはどのようなリスクなのでしょうか。

日本の会計基準において、政策保有であろうとなかろうと、株式(売買目的区分を除く)を保有していれば、取得原価から50%以上下がると、減損処理(評価損を計上)する必要がありますし、30%以下でも株価の回復可能性により減損することがあります。「減損リスク」とは、株価下落により企業が評価損を計上し、会計上の損益が減ることを指していると考えられます。

しかし、考えてみましょう。株価が49%下がっても、回復可能性があると判断すれば減損処理の必要はなく、損益への影響は全くありません。
これが運用会社であれば、1%分の違いがあるとはいえ、どちらも購入時点に比べて大きな損失を出してしまったと考えるはずです。ところが上場企業となると、会計上は50%下落だと多額の損失計上、49%下落だと損失計上なしですから、これで見てしまうと天と地ほどの差があります
この会計基準がおかしいと主張しているのではありません。ただ、企業価値の拡大を目指すまともな経営者であれば、重要なのは株価下落によって企業価値が下がってしまったことであって、減損の有無ではないはずです。

こうしてみると、記事にある「減損リスク」とは、株価下落によって損失を抱えるリスクではなく、会計上の損益が減損処理によって悪化し、損益を重視する外部ステークホルダー(マスメディアを含む)が悪い評価をする、つまり、一種の評判リスクのことなのでしょう。
会計基準は単なるモノサシなので、企業の実態をつかむ手掛かりにすぎません。それにもかかわらず「減損リスク」として減損の有無に過度に注目するのは、企業の見方としてどうなのかなと疑問に思います。

※浜離宮の菜の花です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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