格付情報の活用

かつての生保危機の時代に比べると、保険会社の格付が注目されることは少なくなりました。
それでも格付会社の出す情報は、ディスクロージャー誌やIR資料とともに、保険会社の経営内容をつかむうえで貴重な情報源です。

格付会社の出す情報は格付符号だけではありません。例えば私が以前所属していた格付投資情報センター(R&I)の場合、原則として1年に1回は格付を見直し、格付に変化がなくてもコメントを発表しています。
R&Iのサイトへ

R&Iは2月21日に大手生保グループ4社(日本、第一、住友、明治安田)の格付を維持したと公表しました。
4社ともAAゾーンという高い格付ですが、リスク耐久力に対する次のような共通したコメントに注目しました。

「2019年度はグローバルに金利低下が進行し、ALM(資産・負債の総合管理)リスクが大きい大手生保の経営への逆風は強まっている。国内の超長期金利は8月から9月にかけて2016年6月末以来の水準まで切り下がり、〇〇生命グループの経済価値ベースのリスク耐久力は格付対比で見劣りする状態まで悪化したとR&Iでは考えている」

その後、金利が若干ながら持ち直し、リスク耐久力もやや回復したため、現時点で格付の見直しを行わなかったということですが、R&Iは金利の影響をかなり気にしていることがうかがえます。

公表文を細かく見ると、リスク耐久力の評価に違いがあることも見えてきます。

<日本生命グループ(AA)>
「資産運用リスクの削減に取り組んでいるものの、収益確保の観点から大幅な削減は進められていない。株式リスクも大きく、リスク耐久力は金融・資本市場の変動の影響を受けやすいことからAAゾーン下位と評価している」

<第一生命グループ(AA-)>
「(自己資本の拡充やリスクコントロールなど)これらを勘案すればグループのリスク耐久力はAAゾーンに見合う水準を維持できるとみている」

<住友生命グループ(AA-)>
「(前略)株式など価格変動リスクの保有は大手生保の中でも低く、ALMリスクをコントロールしている。グループのリスク耐久力の安定性は相対的に高く、格付に見合う水準を維持できるとR&Iはみている」

<明治安田生命(AA-)>
「資本の充実度を背景にリスクを取って利回り確保に取り組んでおり、株式リスクなど資産運用リスクの削減はあまり進んでいない。経済価値ベースでみると金利低下の影響が上回り、EV(エンベディッド・バリュー)は減少傾向にある。リスク耐久力はAAゾーン下位と評価している」

保険会社の格付情報がメディアで取り上げられることは滅多にありませんが、生保の経営内容に関心のあるかたは、時々格付会社のサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか
(ただし、S&Pとムーディーズは無料で得られる情報は限定されています)。

※エール交換だそうです

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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