話題の書籍『決戦!株主総会 ドキュメント LIXIL死闘の8カ月』を読みました。
LIXILの件は全くフォローしていなかったので、本書を読んで、ワンマン実力者の影響力を排し、コーポレートガバナンスを機能させるのがいかに難しいかを思い知らされた気がします。
<以下ネタバレあり>
東芝もそうでしたが、LIXILもガバナンスが機能しやすいとされる指名委員会等設置会社でした。しかし、指名委員会や取締役会のメンバーを自分に近い人材で固めることで、創業家出身の実力者は思い通りにならないプロ経営者の首を切ることができてしまいます。
株主総会で会社提案および株主提案の取締役候補を選ぶとした場面でも、ISSやグラスルイスといった議決権行使助言会社は独立社外取締役の数が多いほどいいといった、形式面を重視する姿勢を示しました。
政府主導のガバナンス改革により、2014年には約2割しかなかった「2名以上の独立社外取締役を選任した上場会社」が、短期間のうちに100%近い水準となりました。指名委員会等設置会社は引き続き少ないものの、今や全体の6割以上の上場会社が指名委員会を設置しています。
とはいえ、「社長やCEOが意中の人物を呼び出して、『後は君に任せるから』と言い、それを取締役会が追認する。日本企業の後継者選びはほとんどがそんなプロセスを辿るのだろう」(本書342ページ)というのは、例えば日経新聞の「私の履歴書」を見ていてもうかがえます。当たり前なのかもしれませんが、形だけではガバナンスは機能しないということですね。
「あとがきに代えて」で著者は、2019年の株主総会後にLIXILのガバナンス改革が進んだ要因として、次の3つを挙げています。
・創業家出身の実力者に連なる取締役が一掃されたこと
・「名ばかり社外取締役」ではなく、役割を正しく理解し、自ら手足を動かす社外取締役の存在
・指名委員や社外取締役を、執行部を含む従業員が信頼していること
問題を抱えた会社では、まずは1つめをどうやって達成するか、ですねの。
※写真は「海に最も近い駅」と言われる島原鉄道・大三東駅です。