「節税保険」問題から見えること

日本銀行が17日に公表した金融システムレポート(2019年4月号)には「益出し」という言葉がなんと14回も出てきました。こうしてつくった当期純利益に意味があるのでしょうか。
時間があればもう少しコメントしたいところです。

国税庁が見直し案を公表

国税庁が11日に経営者向け保険の課税ルールの見直し案を公表し、いわゆる「節税保険」をめぐる動きにゴールが見えてきました。
通達改正案(5月10日まで意見募集中)

備忘録として、こちらもあげておきます:金融庁「保険商品審査事例集

以下、一連の「節税保険」問題から私が感じたことを述べてみます。

保険本来の機能を軽視したビジネスは長続きしない

今回は何というか、金融庁や国税庁によるストップがかかる前から「いつか来た道」という思いで見ていて、本当にそうなったという感想です。
10年くらい前に逓増定期保険でも同じことがありました(当時は損保系生保の取り組みが目立っていましたね)。

税制以外にも、古い話になりますが、1980年代後半に一世を風靡した「年金保険ローン」をご存じでしょうか。個人年金の一時払保険料(全期前納保険料)を銀行の提携ローンで賄う財テク商品で、日産生命をはじめ、多くの生保が取り扱いました。爆発的に売れたことが後になって裏目となり、中堅生保の破綻の一因となりました。

販売者はニーズ顕在型に向かいやすい

経営者向け保険の本来の機能は、経営者に万一のことがあった場合に備えた保障です。でも、死亡保障ですから加入者自身がお金を受け取るのではなく、自分が死んだらどうなるかを想像してもらわなければ保険購入につながりません。個人向けでも経営者向けでも、こうしたニーズ潜在型の保険を売るのは簡単ではないと思います。
ですから、他にニーズ顕在型の売りやすい商品があり、かつ、それで多額の手数料が得られるとなると、販売者はどうしてもそちらに流れやすいのですね。節税を強調した販売もそうですし、貯蓄性商品でもそのようなことがしばしば生じます。

より深刻なのは、販売チャネルがニーズ顕在型に慣れてしまうと、営業の足腰が弱ってしまい、ニーズ潜在型の保障提供になかなか戻せないということだと思います。

企業価値よりも保険料収入なのか?

個人向け保険の保険料は年に数万円から多くても数十万円なのに対し、経営者向け保険は何百万円という世界ですし、保険金額も個人向けとはケタ違いなので、見た目の業績を手っ取り早く上げるには好都合です。
しかし、3月30日のブログで書いたように、経営者向け保険の収益性は他の保障性商品と比べるとかなり低いとみられます。大手生保グループをはじめ、保険業界には企業価値よりも保険料収入を重視する考えが根強く残っているのではないかと考えてしまいます。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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