本題に入る前に、コメント掲載のご紹介を。
14日の朝日新聞「保険『窓販』高い手数料」
(10月からの手数料開示を扱った記事です)で、
コメントが載りました。
「手数料が顧客の知らないところで上がって
いくことは防げるだろう」
というものです。
日本の銀行窓販は複数の保険会社の商品を
銀行が取り扱うのが一般的なので、どうしても
手数料引き上げ圧力がかかりがちです
(もちろん手数料だけではありませんが)。
今回の手数料開示によって、水準を下げるのは
難しいとしても、引き上げ競争となるのを抑える
効果は期待できるのではないかと考えています
(甘いでしょうか?)
さて、米国大手銀行ウェルズ・ファーゴのCEOが
不正なクロスセリングの問題で辞任しました
(12日発表)。⇒ Wells Fargoのサイトへ
問題が表に出たのは9月8日です。
顧客に無断で預金口座やクレジットカードを
大量に作成していたということで、監督当局に
1.85億ドルの制裁金を支払うという内容でした。
ウェルズ・ファーゴの調査によると、2011年以降、
不正に開設した預金口座は150万件、
クレジットカードの発行は56.5万枚に上るとか。
金利水準が低いなか、預貸の利ざやで稼ぐのが
難しいのは米国も同じで、非金利収入のウエートが
高まる傾向にあります。
ウェルズ・ファーゴでは2015年の非金利収入比率は
47%に達しています。
なかでも同社は同一顧客への重ね売りに注目し、
20年ほど前からクロスセリングを推進してきました。
同社の顧客当りのクロスセル率は競合他社を
上回っている模様です。
ここまで不正な口座開設等が広がった背景は
まだよくわかりませんが、米当局(CFPB)によると、
「開設に伴うボーナス」「販売目標の存在」などが
挙がっています。
クロスセリングは日本の金融・保険業界でも
一般的な戦略です。
損保が設立した生保子会社のビジネスモデルは
損保代理店による生保クロスセリングでしたし、
日本の銀行でもクレジットカードや住宅ローン、
グループ会社の運用商品などを提供しています。
しかし、クロスセル戦略は顧客ニーズというより、
売り手のニーズが強く出た戦略だと思います。
多種目販売により顧客との関係を強めることが
できますし、何より顧客当りの単価が高まります。
もちろん、顧客にとって有利な場合もありますが
(例えば割引がある、まとめると便利、など)、
すべてがそうとは限らないでしょう。
もし顧客満足度を高めるようなクロスセリングが
できなければ、顧客との関係を強めるどころか
事業基盤を破壊してしまいます。
米銀の事例は対岸の火事ではありません。
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