日本の生保経営

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1324(2026.4.13)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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香港で「集中講義」

最近、香港で保険ビジネスに関わる皆さんに対し、保険会社経営に関する「集中講義」を行う機会がありました(ちなみに日本語でした)。
日本でも近年、貯蓄性の強い生命保険の販売が伸びています。とはいえ、変額保険を除けば、総じて利率固定型の商品です。これに対し、香港の生命保険は投資連動型が多く、保証部分(利率固定)と非保証部分(運用実績に応じた契約者配当あり)を組み合わせた保険が主流となっているそうです。米ドル建てが中心で、保険会社は保証部分については主に公社債で運用し、非保証部分は株式やオルタナティブ投資などで高いリターンを目指します。
ただし、運用実績をそのまま配当に反映させるのではなく、スムージングを行うとか、割り当てられた配当の多くが確定したものではないとか、なかなかに複雑な商品だと感じました。

日本の生保の資産運用

もっとも、日本の生命保険会社の資産運用についても、合理的に説明するのが難しい点はいくつもあります。
例えば、「円建ての保険を提供しているのに、なぜ外国証券が運用資産の約3割をも占めているのか」という質問に、どう答えたらいいでしょうか。歴史的な低金利が長引くなかで、利回りの高い外債投資や外国籍のオルタナティブ投資を増やしていったという説明になるのかもしれませんが、そもそも日本の生保が為替リスクのコントロールに長けているという客観的な証拠はあるのでしょうか(むしろ過去には円高で損失を出した印象が強い)。
一般勘定での株式投資も、政策保有であろうと純投資であろうと、株主には説明するのが難しいです。拙著『保険ビジネス』でも記したとおり、株主は自分で株式投資ができる存在なので、株式投資に強みを持つと思わせてくれる経営者でもないかぎり、わざわざ税引後のリターンしか期待できない保険会社に株式投資をしてもらいたいとは考えないはずだからです。

他方で、ネットでは「日本の生保は安定志向が強すぎて(あるいは、政府を助けるために)、国債ばかり保有しているのでリターンが低い」といった論調をしばしば見かけますが、これは誤解です。超長期にわたり利率を保証する商品を提供すると、保険会社は必然的に金利変動リスクを抱えることになります。超長期国債の購入は、あらかじめ保険負債の金利リスクをヘッジすることで、長期保障をより確実なものにするといった考えに基づいての行動です。
生保の資産運用は、どのような商品を提供するか、つまり、どのような特性を持つ保険負債を抱えるかによって決まるのであって、単に集まってきた資金を運用すればいいというものではありません。

なぜ契約者配当が少ないのか

香港で保険ビジネスに関わる皆さんからすると、日本の生保による契約者配当の少なさも理解が難しいポイントのようです。
確かに、第一ライフグループやT&Dグループの株主還元(配当と自社株買いの合計)の水準に比べると、株主のいない日本生命や明治安田生命などの個人向け保険の契約者配当の水準はかなり見劣りします。団体保険では危険差益の大半を契約者に還元しているとみられますが、個人向け保険の配当は非常に抑制的で、何のために金利や株式、為替変動等のリスクをとっているのか、私も説明するのが難しいと考えています。
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※6年半ぶりの香港でした。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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