韓国リスクマネジメント学会の国際セミナーで
日本の生保破綻とその後の対応等について
スピーチをしてきました。
今どうしてこのテーマなのか不思議でしたが、
現地で話を聞いてみると、前々回ご紹介した
ムーディーズのレポートで書かれているよりも、
韓国の保険業界がはるかに深刻な状況にある
とわかり、妙に納得しました。
日本の生保で経営の重荷となっている契約は
20年以上前に獲得したものが中心です。
加えて、主力商品が保障性商品中心となって
かなりの時間がたっています。
他方、韓国では比較的最近まで金利水準が
高かったため、今から見れば予定利率の高い
超長期の貯蓄性商品を近年まで売っていました。
予定利率が3%超の契約が全体の約7割を占め、
かつ、全体の2/3が残存20年超とのことでした
(通訳が正しければ)。
ちなみに、韓国の10年国債利回り(今は約2%)は、
2010年頃まで5%程度で推移していました。
韓国では2000年代半ばから金利連動型商品
(=金利変動リスクを顧客が負う)が普及しており、
最近では新契約の約8割、保有契約の半分強が
金利連動型となっているそうです。
ただし、金利連動型商品には最低保証があり、
2000年代には3%以上の保証利率だったとか。
もう一つ日本と違うのは、韓国では国際会計基準
(IFRS)をすでに強制適用していることです。
保険契約に関するIFRSが完成し、これをもとに
ソルベンシー規制を行うと、業界全体で数兆円の
資本不足に陥るという報道もあるそうです
(行政当局からのリーク情報と言われています)。
確かに上記のような負債構成を考えた際、
経済価値ベースの評価をすると、非常に厳しい
経営実態が見えるのかもしれません。
「会計・規制への対応という話と、経営者として
現状を見てどう対応するかという話は別物」
質問への回答として、こんな話もしたのですが、
個社の対応とは別に、保険行政としての対応が
求められる状況のようにも感じました。
※左の写真は朴大統領の退陣を求める人たち、
右は大統領を支持する人たちです。