
先週末の保険学会に続き、今週は台湾の保険安定基金(TIGF、日本の保険契約者保護基金に相当)が主催した保険ERMカンファレンスに報告者およびパネリストとして参加しました。
このカンファレンスは今回が14回目とのことで、私は過去にも登壇したことがあります。今回は規制・監督当局である金融監督管理委員会が後援したうえ、テーマが「新たなソルベンシー規制およびIFRSの導入」だったためか、過去よりも出席者が多かったように思います。
台湾では2026年からTW-ICSと呼ばれる経済価値ベースのソルベンシー規制(IAISのICSに準拠)と、国際財務報告基準IFRSの第17号(保険契約会計)が同時に導入される予定です。IFRSは強制適用で、上場・非上場に関わらず、すべての保険会社が対象となります。もっとも、TW-ICSのほうはリスク評価に関する移行措置が取られ、フル適用まで最長15年の猶予が設けられています。
カンファレンスでは主催者のあいさつや写真撮影(!)のあと、BNPパリバグループのアクチュアリーがEUソルベンシーIIの経験を話し、続いて韓国アクチュアリー会のJUN会長が韓国でのK-ICS導入の経験を紹介したあと、私が日本における経済価値ベースのソルベンシー規制導入について説明しました(もう1人、シンガポールからの登壇者が医療保険制度について報告)。
東アジアではこのところIAISのICSに準拠したソルベンシー規制を導入する動きが進んでいます。韓国では2023年のIFRS強制適用と同じタイミングでICSに準拠したK-ICSの適用が始まり(ご参考:2023年9月17日のブログ)、2026年には日本と台湾が続きます(日本では会計はそのまま)。
韓国では導入後に金利水準が下がり、K-ICSに低下圧力がかかった2024年から25年にかけて、ハイブリット調達を行う保険会社が急増したそうです。また、収益性の高い長期の保障性商品に注力する動き(=CSMの増加が期待できるという観点)も見られるとのことでした。
もっとも、韓国や台湾での過去の調査を踏まえると、日本以上に監督当局の影響力が強く、一部の大手を除き、保険会社のリスク管理がソルベンシー規制に依存しがちだという印象があります
(東南アジアではより強くそのように感じますが)。
日本はそうならないと期待しつつ、引き続きアジア各国の動向にも注目していくつもりです。
