自賠責保険の値下げ

先週、自賠責保険の料率引き下げについて某テレビ局から取材の打診があったのですが、あえなくキャンセルとなってしまいました
(取材を受けたのに使われなかったという話ではありません)。
せっかくなので、備忘録としてここでも少し書いておこうかと思います。

基準料率を16.4%引き下げ

自賠責保険の基準料率は4月から16.4%下がることになりました。報道によると、平均して年2000円程度の値下げとなるそうです。

内訳は次のとおり。
 <純保険料>
 水準是正による改定:△8.5%
 滞留資金活用による改定:△14.1%
 <付加保険料>
 社費(人件費、物件費など):△1.7%
 代理店手数料:+3.8%

詳しくはこちら(自賠責保険審議会)をご覧ください。

自賠責は値下げ、任意は値上げ

自賠責保険の料率が下がる一方で、任意の自動車保険の料率は上昇傾向にあります。
23日の日経には、「損保大手4社(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険)の任意加入の自動車保険料は1月に約3%の水準で引き上げられた」とありました。

同じ自動車保険なのに、どうして反対の動きなのかというと、補償内容がちがうからですね。
自賠責保険は対人賠償責任(死亡と傷害)のみ補償するのに対し、任意の自動車保険は対人賠償のほか、対物賠償、人身傷害・搭乗者傷害、車両の損害と広くカバーします。

2017年度に支払われた任意保険の保険金のうち、対人賠償は19%にすぎず、対物賠償と車両保険で全体の70%を占めていました。
損害保険料率算出機構によると、対物賠償の保険金の約5割、車両保険の保険金の約8割が修理費とのこと。最近の自動車には安全装置など高価な部品が増えているので、死亡事故は減っているのですが、支払い1件あたりの修理費は増加傾向が続き、これが任意保険の料率に影響しています。

昨年10月の消費増税も任意保険の料率引き上げ要因です。
保険料に消費税はかかりませんが、修理費には消費税がかかるので、増税分を値上げしなければ、保険会社の負担がかさんでしまいます。

人口減の影響はこれから

こうしてみると、当面は任意保険の料率引き下げは考えにくそうですが、人口動態を踏まえると、これまで概ね横ばいだった契約台数が減少基調に向かい、収入保険料の増加は徐々に厳しくなると見られます。
これまでの10年間は、総人口が2008年をピークに減少に転じたとはいえ、自動車保険の加入対象である18歳以上の人口は増加基調でした。しかし、今後は減少に転じますし、増えるのは75歳以上人口なので、車を運転できなくなる人も増えていきます。

しかも、1世帯あたりの保有台数の伸びはすでに止まっています。「一家に一台から一人一台へ」という流れは2007年ころまでの話であって、この10年間は世帯当たりの台数が横ばいのまま、軽自動車へのシフトが続いています。

企業向け自動車保険は人口動態よりも景気動向に左右されますが、個人向けに関しては厳しいマクロ環境が見込まれます。

※写真は日産スタジアムです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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