パネルディスカッションに登壇
11月8日から9日にかけて日本アクチュアリー会の年次大会があり、その翌日(10日)は日本保険・年金リスク学会(JARIP)の研究発表大会と、まさに勉強の秋となりました。
そのなかで私は、9日のパネルディスカッション「経済危機とリスク管理~これからのリスク管理を担う若手のために~」にパネリストとして登壇しました。
このパネルディスカッションは、保険会社のリスク管理に従事する若手社員が抱いている疑問を、リスク管理や規制の高度化に取り組んできたベテランにぶつけることで、あるべきリスク管理を模索するという異色の企画でした。
若手の疑問や不満を正面から受け止める役回りだったので、90分の持ち時間があっという間にすぎてしまい、オーガナイザーをヒヤヒヤさせてしまいました。果たして会場の皆さんには何らかのメッセージが伝わったでしょうか
(「ベテランは話が長い!」という感想もありそうですが…)。
過去の経緯は重要
私とともにベテラン側として登壇した藤井健司さんは、VaRの登場からその後の普及の経緯を説明したうえで、「『あるべきもの』があって、そこから展開していくのではなく、実務にフィットしたものが業界標準となる」という趣旨の話をしていました。過去の経緯を知らないと、いま行っている業務がどうしてそうなっているかを理解しにくいので、得てして業務そのものが目的となってしまいがちなのですね。
たまたま私も先日ご紹介した保険毎日新聞の書評(保険業界戦後70年史)のなかで、こんなことを書いています。
「例えば保険募集人に対する規制を導入した2014年の保険業法改正や、損害保険会社が自由化後の代理店手数料を決めるために採用した代理店手数料ポイント制度といった、保険流通に関わる多くの業界人が日常的に直面する諸制度が、保険流通のいわば普遍的な『あるべき姿』を想定し、それを実現するための仕組みとして導入されたのではなく、過去の経緯やその時その時の時代背景の影響を受けながら形づくられてきたことがわかるだろう」
過去の歴史を振り返っても、今の仕事にはほとんど役に立たないと思われるかもしれませんが、そうではないのですね。
時代の大きな流れをつかむ
ただし、過去に学ぶといっても、今がどのような時代なのかを踏まえたうえで学ぶべきなのでしょう。
再び書評から引用します。
「戦後50年間続いた『成長の時代』とは、復興期はともかく、人口増加や東西冷戦、高度経済成長といった外部環境に恵まれ、緩やかな競争環境を人為的に確保することが可能だった極めて特殊な時代だったと言えよう。本書の記述からも、極論すればこの時代の業界の歴史とは、規制や制度の歴史だった感がある。こうした恵まれた外部環境はすでに1980年代後半には消滅しつつあったため、日米保険協議に象徴される外圧がなくても、遅かれ早かれ『成長の時代』は終わっていたと考えられる。今後は人口減少という未体験の事象を無視できないとはいえ、長いスパンで見れば、経営者が自らの知恵と決断で事業を切り開いていく普通の時代に戻ったと言うべきかもしれない」
保険会社の経営陣は「成長の時代」のマインドを引きずってはいないでしょうか。若手が心配しているかもしれません。