なぜ債券含み損にこだわるのか?

どうも日経記事は生保の含み損益に過度に注目する傾向がある(あるいは、一般勘定で株式投資をするべきだと言いたい?)ようです。
5月9日にアップされた「金銭詐取疑いで揺れるソニー生命 含み損処理で新たな火種(会員限定)」では、「ソニー生命は保有債券の含み損が多い。解約増で売却を迫られれば、収益への影響は大きい」と報じ、大手4社では株式含み益と債券含み損が打ち消しあっているのに対し、ソニー生命は債券偏重なので含み損が大きいという図表を示しました。

では、営業職員による金銭詐取が発覚し、販売活動の自粛を続けているプルデンシャル生命(POJ)はどうなっているのでしょうか。
親会社プルデンシャル・ファイナンシャルは4月21日に、POJの既契約からの利益が2026年には最大10%、2027年には最大15%減るという見込みを公表しましたが、ソルベンシー比率やキャッシュフローへの大きな影響はないとしています。
さらに、5月6日開催のIRミーティングでは、1-3月期における販売自粛による損益への影響は1.3億ドル(約200億円)で、このうち、0.5億ドルが顧客対応、0.5億ドルが営業職員への手当で、販売自粛と解約に関する損失は0.3億ドル(約46億円)とのことでした。POJもソニー生命と同じく、多額の債券含み損(昨年12月末時点で8950億円)を抱えていて、この0.3億ドルに売却損が含まれている可能性もありますが、そうだとしても大した金額ではありません。影響は2月からなので、さらに膨らむのは確実とはいえ、IR資料や質疑応答からはPOJの保有契約が急減しているとは読み取れませんでしたし、債券含み損に関するアナリストからの質問もありませんでした
(むしろ、「POJでは保有契約からの利益が全体の90%を占めるので脆弱ではない」とコメントしています)。

確かに解約が殺到すれば、保有債券の売却を迫られ、売却損を計上することもありうるでしょう。ただし、平準払いの商品を中心に販売してきた生保では、手元のキャッシュのほか、既契約からの保険料が常に入ってきますし、保有債券の償還もあります。公表資料によると、ソニー生命は既契約から毎年約1兆円の保険料収入がありますので、解約が多少増えても、ただちに保有債券の売却とはなりません
(ちなみに近年ソニー生命の解約返戻金が増えているのですが、他社動向を踏まえると、おそらく経営者向け保険の解約が増えたためではないかと思います)。

それに、この件で解約が殺到するという確率は極めて低いでしょう(新契約が取れなくなる可能性はあると思いますが…)。
仮に、担当した営業職員が犯罪に手を染めていたとしても、平準払い商品の場合、そもそも保障が必要だから加入しているので、「裏切られた。解約だ!」とはなりにくいです(特にソニーやPOJは義理人情ではなく、コンサルティングセールスを標榜してきました)。
しかも、他社に乗り換えたくても、加入してから時間がたっていなければ解約控除がかかりますし、時間がたっていれば被保険者の年齢が上がっていて、新たな保険に加入しにくくなっているはずです。

3月28日のブログ(生保解約返戻金の増加)と同じく、この時点でソニー生命の債券含み損にことさら言及するのは、やはりミスリードと言わざるを得ません。

※横浜・山下公園のバラです。

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