前回のブログでご紹介したとおり、先週末に神戸で
日本保険学会のH23年度全国大会(年次大会)がありました。
日本保険学会のHPへ
発表を聞いていて時々感じるのは、研究を進めるにあたり、
データの入手や解釈に苦労されているなあという点です。
現理事長の江澤雅彦先生教授(早稲田大学)も、
先日ご紹介した私の翻訳本に寄せていただいたなかで、
「われわれ学界に身をおくものは、研究を進める際、
保険会社の経営に関するデータや資料へのアクセス
の面で多くの困難を経験する」
と書かれています。
今回もある発表のなかで、1989年~2009年において、
・保険料収入に占める事業費の割合はやや低下傾向
・事業費に占める営業経費の割合は低下傾向
となっていることから、
「相互会社は事業費、販売促進費を抑えてきた」
という解釈がありました。
しかし、これはかなり無理があるように思います。
この期間はバブル経済のピークから崩壊、停滞の時期で、
生保の主力商品が貯蓄性から保障性へと移り、
同時に新契約の減少傾向が続いた時期ですよね。
保障性商品のウエートが高くなれば、保険料に占める
事業費の割合が下がっていくのが自然ですし、
新契約が減っていけば、コスト削減とは関係なく、
事業費に占める営業経費の割合は下がっていきます。
そうかといって、他にいい公表データが見当たらないのが
困ったところです。
また、基礎利益を使った効率性分析の結果、
「相互会社は株式会社よりも効率性が高い」
という分析結果にも違和感がありました。
商品構成や平均予定利率に大きな違いがない場合、
基礎利益は事業規模が大きく、保有契約と比べた
新契約の割合が小さい会社ほど大きくなる傾向があります。
分析期間(1989年~2009年)の最後の数年間を除けば、
主要生保の多くが相互会社であり、株式会社は
中堅2社と歴史の浅い外資系・損保系生保が中心でした。
当然ながら株式会社の基礎利益は小さくなるはずなのですが、
この点を踏まえた効率性分析だったのか、知りたいところです。
※地元で有名な「にしむら珈琲店」で朝食をとりました。