日本の保険会社はどこで資本を使っているか

inswatch Vol.1023(2020.3.9)に寄稿した記事をご紹介します。
金融市場の混乱で株安、円高、金利低下となっているので、まさにリスクテイクが裏目に出ている状況で決算期末を迎えそうです。
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経営リスクの数値化

保険会社のリスクマネジメント手法の1つに、経営リスクを数値で示し、自己資本等と対比するというものがあります。
保険会社の抱える経営リスクのすべてを数値化することはできないにしても、保険引受に伴うリスクや株価下落に伴うリスクなど、主要なリスクカテゴリーに関しては、リスクを1年間に一定の確率で発生しうる損失額として数値(金額)で示す実務が普及しています。
これらを自己資本等と対比することで、経営として抱えているリスクが経営体力の範囲内に収まっているかどうかを確認できます。

資本の活用

同じ話を資本の出し手(株式会社の株主や相互会社の社員)から見るとどうなるでしょうか。
資本の出し手が保険会社に出資しているのは、保険会社の経営者がリスクを引き受けることでリターンを上げ、そこからの還元を受けるためです。リスクを引き受けるとは、すなわち資本を使うということ。だからこそ、リスクのことを「所要資本」とも言います。資本の出し手としては、出資した資本を有効に使ってもらいたいので、保険会社が実際にどこでどれだけ資本を使っているかは重要な情報です。
多くの上場保険グループが内部管理として計測したリスクと自己資本等を公表しているのは、このような背景があります。

どこで資本を使っているか

昨年12月に金融庁が公表した資料「2019年フィールドテストの結果概要」の7、8ページに、金融庁が指定した手法により計測した保険会社の経営リスク(所要資本)の内訳が載っています。
有識者会議の資料(PDF)

<生命保険会社(単体ベース:41社計)>
・保険リスク 34%(解約・失効リスクが最も大きい)
・市場リスク 54%(株式、金利、為替のリスクが大きい)

<損害保険会社(単体ベース:51社計)>
・保険リスク 36%(巨大災害リスクが最も大きい)
・市場リスク 58%(株式リスクが大きい)

いかがでしょうか。PDFファイルで元の図表をご覧いただいたほうが、より明らかなのですが、日本の保険会社は保険引受に伴うリスクよりも、市場リスク、つまり金融市場の変動に伴うリスクのほうがずっと大きいことがわかります。保険会社なのに不思議に思えますよね。

資本の使い方は適切なのか

資金の出し手からすると、保険会社の経営者は資本をいわば「本業」である保険引き受けではなく、主に資産運用でリターンを上げるために使っているという現状をどう考えるかということになります。
もし、日本の保険会社が資産運用に強みを持ち、中長期的に高いリターンを上げることが期待できるというのであれば、適切な資本の使い方をしていると言えるでしょう。ただ、過去のトラックレコードからすると、必ずしも結果が出ていないようにも見えます。
保険会社の経営者は今の資本の使い方について、資本の出し手が納得できるような説明をする必要があります。相互会社であれば、説明の相手は契約者です。
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※写真は早稲田大学です。授業開始は4月20日以降だそうです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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