インシュアランス生保版(2020年1月号第2集)にコラムを執筆しました。
なぜ私が旅に出るのかを説明しているようにも読めますね。
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給与水準は東京を上回る
12月中旬の日経新聞の特集記事『安いニッポン』のなかで、データサイエンティストやサイバーセキュリティー・コンサルタントといった専門職の最高給与額を比べた図表があり、いずれも中国が日本を上回っていた。
同じような話を11月に訪れた中国・深圳(しんせん)でも聞いた。すでに中国ではエンジニアの給与が東京と同じ水準であり、BATと呼ばれる中国3大ネット企業(バイドゥ、アリババ、テンセント)ともなると、東京を上回る給与水準とのことだった。
チャイニーズドリームを目指す
実際に深圳の町をまわると、ひと昔前(といっても5年程度だが)の中国のイメージはどこかに吹き飛んでしまう。世界の工場、すなわち、政府が大企業を誘致し、安い賃金を武器に製造業の拠点となっていた時代はとうに終わり、今の深圳は「世界のイノベーションの拠点」である。政府や大手IT企業が起業家向けに大規模なインキュベーション施設(低賃料のスペースやマーケティング支援などを提供するところ)を用意し、中国全土からチャイニーズドリームを目指す若い人材が次々に集まってくる。人口は約1300万人と、隣接する香港(約750万人)をはるかに上回る。ちなみに住民のほとんどが町の外から来た人たちなので、この地域の言語である広東語よりも普通語(標準語)が幅を利かしており、料理についても「深圳料理」というものは存在しないそうだ。
中国では、政府が経済を強力に引っ張る姿を想像しがちだが、今の深圳の発展は、中国情報の提供を専門とするhoppin滝沢氏いわく、「ボトムアップのイノベーション」によるものだ。共産党との関係など中国ならではの事情も見え隠れするとはいえ、起業家を動かしているのは「ビジネスで世の中をよくしたい」、あるいは「成功したい」という、資本主義のマインドそのものである。
模倣からオリジナルへ
また、中国というと、「ニセモノ」「パクリ」というイメージを持つ人も多いだろう。しかし、このイメージも過去のものとなりつつある。深圳には今でも偽ブランド品を大々的に提供するショッピングビルがあるが、全体としてはすでにオリジナルで勝負する段階に入っている。
例えば、最近日本市場に参入した小米(シャオミ)は出荷台数で世界第4位のスマホメーカーだが、深圳のショップ「小米之家」にはスマホに加え、スタイリッシュなデザインのハイテク家電や生活雑貨が並び、しかも安い。テンセントが展開するオン・オフ融合のスーパー「超級物種」ではレジで並ぶ必要がなく、スマホでその場で決済できるうえ、品揃えは日本の成城石井のような高級感を醸し出していた(この分野ではアリババが先行)。
いずれにしても、ハイテクで便利というだけでなく、オシャレなのだ。
私たちはどこかで「日本が世界で1番」と考えているところがあり、確かに水準の高さは否定しない。ただ、それが本当なのか、自分の眼で確かめることをおすすめしたい。
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