近年のコンバインドレシオを見てもわかるとおり、
損保は保険収支の低迷に悩まされています。
他方、生保の危険差益は安定して推移しています。
保険会社の利益の源泉について、少し考えてみましょう
(資産運用力については今回は触れないことにします)。
利益の中核をなす「危険差益」は、想定した発生率
(=保険料の基となる発生率)を実際の発生率が下回ると
生じるという説明が一般的です。
ただ、これだと料率を高めに設定すれば利益が出ることになり、
「不完全競争だから利益が出る」となってしまいます。
生保の危険差益は不完全競争によるところが大きいのかは?ですが、
完全競争においても保険会社は儲けることができるのでしょうか。
まず「大量の自社データを活用したプライシング」はどうでしょう。
不十分なデータでは大数の法則が働きにくく、
安定して事業を行うことができません。
プライシングの巧拙が利益の源泉というのは言えそうです。
「分散効果」も考えられますね。
地域分散や事業分散により全体としての引受リスクが下がれば
リスク対比のリターンを高めることができるでしょう。
使う資本が少なくてすめば、他に回すことができます。
「選択効果」はどうでしょうか。
健康診断などにより、生保では契約後しばらくは選択効果があり、
危険差益が出やすいことが知られています。
ただ、経済価値ベースで考えた場合、利益の源泉と言えるかどうか。
「選択効果」とは違いますが、不完全競争の市場を選ぶことで
利益をしばらく上げることはできるかもしれませんが...
現状はともかく、市場が全体として完全競争に向かうのであれば、
「大量の自社データを活用したプライシング」「分散効果」、
この2つを意識した戦略が重要ということになりますね。
それでは小規模な保険会社は生き残れないのか。
いつか別の機会に考えてみたいと思います。
※写真は三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎の生家です。
安芸という町の中心からかなり離れたところにありました。