今週のInswatch Vol.1067(2021.1.11)に寄稿したものです。
今後の展開を注視したいと思います。
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第一生命が報告書を公表
昨年12月22日に第一生命保険が「元社員(特別調査役)による金銭の不正取得」に関する調査報告書(PDF)を公表し、同じ日に稲垣社長が記者会見を行いました。報告書は同社サイトにアップされています。
元社員が、複数の顧客に対して架空の金融取引を持ち掛け、金銭を不正に取得していたというこの事件、会社自らによる調査に加え、「第三者の立場からの客観的な評価を受けることよって、より実効的な検討・対応を進める必要がある」との認識から、社外(法律事務所)にも分析・調査を依頼し、発生原因を探りました。
企業風土・体質にも言及
報告書では、単に元社員に問題があり、かつ、組織として監督が十分に行き届かなかったというだけではなく、企業風土・体質にも言及しています。例えば、
「西日本マーケット統括部においては、元社員に関する事項について、穏便に収めたい、余り関わりたくない等の意識がありました。そのような意識が生じた背景には、元社員が『特別調査役』として特別な地位にあり、しばしば当社の役員等との親密さを吹聴していた元社員への遠慮が存在していたと考えております」
「(お客さまを第一に考える思考が不十分であった)背景には、お客さまの信頼がなければ多くのお客さまから新契約をお預かりすることができないとの思考に重点を置き、新契約実績には表れないお客さまを第一に考える行動に対する評価が不十分であったと考えております」
などです。新たに発覚した和歌山県、福岡県、神奈川県の事案についても、「お客さまを第一に考える思考が不十分であったことに起因している」と分析しています。
「お客さま第一」で解決するか
2005年の保険金不払い問題以降、営業職員チャネルを主力とする生命保険会社では、新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切ったはずでした。その結果、営業職員の大量採用、大量脱落構造はかなり緩和し、15年前には4割前後だった在籍数に占める年間退職者の割合は、足元で2割を下回っています。
他方で現場には営業目標があり、営業拠点の運営はベテラン営業職員による契約獲得に依存し、ベテランの報酬が結果として歩合給中心という基本的な構造は変わっていません。厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると、経験年数15年以上の保険外交員(女性)の「年間賞与その他特別給与額(≒歩合給)」は「所定内給与額(≒固定給)」の2.5倍で、全体(1.8倍)を大きく上回っています。
販売勧誘ルールの見直しで保険募集人に新たな規制が導入されたとはいえ、一社専属の営業職員チャネルの業務は乗合代理店に比べれば大きな変化はありませんでした。しかも、金融庁はかつてのような3、4年ごとの立入検査を実施しなくなり、ヒアリング主体の水平的レビューとなっています。
こうしたなかで発覚したベテラン職員による不祥事です。個社に特有の問題とは考えにくく、営業職員チャネルを主力とする会社は実態調査を行うだけではなく、報酬体系を含めたチャネルのあり方を真剣に検討する時期に来ているのではないでしょうか。
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※3連休の外出は初詣だけにしました。十日恵比須神社です。