6月に慶応大学理工学部・経済学部で行った
生命保険の講義のなかで、次の課題を出しました。
「あなたが金融庁で保険行政に関わっているとします。
担当している会社の経営内容が悪化し、
経営破綻に陥る可能性が高まっています
(ただし、当社の経営危機は表面化していません)。
担当者として次のどちらを選びますか。
(1) 再建の可能性があるかぎり、ギリギリまで再建の道を探る。
(2) 再建の可能性が小さくなったので、速やかに破綻させる。」
学生の皆さんの回答はどうだったかというと、
(1)が37人、(2)が32人、その他が4人となりました。
講義で過去の破綻事例の話をしたので、
(2)の早期破綻を選ぶ人が多いと予想したのですが、
結果は見事に分かれました。
(1)を選んだ主な理由
・破綻させると契約者だけでなく、経済全体への影響が大きい
・過去の破綻事例を見ると、当局の支援で再建する道はある
(2)を選んだ主な理由
・早いうちに破綻させたほうが損失が少ない
・この時点からの再建は、当局支援があっても非常に困難
現実の世界では、「早いうちに対応したほうが破綻コストが少ない」
という考えに基づく枠組みではあるものの、金融システムへの
影響を考慮し、破綻前に公的資金を投入した事例もありました
(今は「大きくても破綻させる」仕組みを作っていますね)。
過去の事例を見ると、延命を図ったばっかりに
傷口を広げたケースが散見されます。
他方、ある行政OBに聞いたところ、○○生命が経営破綻した後、
株価が上がらないことを祈ったとか。
「どうして破綻させたんだ」という話になってしまうからです。
つまるところ、経営破綻に陥る可能性が高まってからでは
遅いのかもしれません。
それにしても学生の皆さんは、私の講義を聞きながら、
一生懸命考えてくれたようですね。読みごたえがありました。
※夏休みが終わり、築地市場に賑わいが戻ってきました。