責任準備金組入率とは?

毎日新聞の投書欄に「保険批判への反論も載せて」という保険関係者による投書がありました(11日)。
ビジネス誌による生命保険特集に掲載されている保険コンサルタントや評論家による商品評価の内容が、独自の視点による一刀両断といった内容ばかりで、しかも、的外れの内容があまりに多いので、せめて保険会社の言い分も載せるべきという内容でした。
保険数理のプロに「読む度にため息が出る」と言わせてしまうような記事が例えばどのような内容なのか、興味がありますね。心当たりが全くないわけではありませんが…

やや話がずれてしまいますが、私もこの週末に日吉駅の書店(ローカルですみません)で思わずため息が出てしまいました。
保険関係のコーナーにはなぜか三田村さん(大手生保の出身だそうです)というかたの書籍ばかりが並んでいて、いずれも保険会社を見極める指標として「責任準備金組入率(積立率)」を薦めていました
(個社ごとに指標の推移が載っていました)。

ここで言う「責任準備金組入率(積立率)」とは、損益計算書の保険料等収入に対し、経常費用の1項目である「責任準備金等繰入額」の占める割合です。
この数字が概ね40%あれば健全な財務力がある会社と考えられ、数字が低い会社は積み立てるべき責任準備金を積めていないとのこと。
思わずのけぞってしまった読者も多いかもしれませんが、このかたは少なくとも10年以上前から同じ主張を続けています。

当期の保険料等収入と責任準備金等繰入額を比べて何がわかるのでしょうか。
シンプルに説明すれば、保険会社は当期の保険料等収入のうち将来支払う見込みの部分を責任準備金として繰り入れる一方、責任準備金を取り崩す(戻入する)ことで、当期の保険金や給付金の支払いに充てています。ただ、繰入額と戻入額はネット表示なので、満期や解約などが多ければ責任準備金等繰入額が小さくなったり、収益として責任準備金戻入額が計上されたりします。さらに言えば、保険料等収入も、貯蓄性商品の販売により大きく変動します。

ですから、組入率(積立率)が小さいのは、単にその期の保険金等支払金が相対的に大きかったというだけであり、積み立てるべき責任準備金を積めていないわけでは決してありません。
2000年前後に破綻した会社の数字がいずれも小さかったので、この数字を重視しているのかもしれませんが、当時は生保への信用不安が解約の増加につながり、責任準備金の戻入が大きくなったという話です。高水準の解約が続いているので指標が低水準で推移しているというのであればまだしも、単にこの数字の大小をもって生保の健全性を見極めるというのは、どう考えても無理があります。

ということで、今回は「ため息が出る」話でした。

※ビュースポットに立つと富士山が見えました

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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