今週のInswatch Vol.1058(2020.11.09)に寄稿しました。
このような話も進んでいるという情報提供です。
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保険数理の専門家が集まる日本アクチュアリー会の年次大会がありました(6日)。例年であれば東京駅周辺の会場で行うのですが、今年はライブ配信を中心としたオンラインでの開催となり、ありがたいことに福岡から参加できました。
保険の国際規制
さて、今回は国際的な規制の話です。
3メガ損保グループをはじめ、大手保険グループは近年、海外での保険事業を拡大してきました。保険会社がグローバル化する一方、各国の規制当局は法域を超えた監督・規制を行うことが実質的にできませんので、国際的な連携が不可欠となります。
そこで、日本の金融庁もメンバーとなっている保険監督者国際機構では、資本規制を含む新たな監督・規制の枠組みを整備してきました。具体的には、各国の規制当局がその国に本拠を置く保険グループのうち、国際的に活動するグループ(IAIG)を指定し、IAIGを中心に追加的な対応を行うというもので、先月末に金融庁が日本のIAIGを初めて公表しました。
日本のIAIGは4グループ
金融庁が指定したIAIGは次の4グループです。
・第一生命ホールディングス株式会社
・東京海上ホールディングス株式会社
・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
・SOMPOホールディングス株式会社
IAIGに指定する定量基準は、「3以上の法域で保険料を計上」かつ「本拠法域外のグロス計上保険料が、グループ合計のグロス計上保険料の10%以上」という国際的な活動状況と、「総資産が500億米ドル以上」または「総グロス計上保険料が100億米ドル以上」(いずれも3年移動平均)というものです。加えて、各国の当局が必要と判断すれば、これらの基準に合わないグループもIAIGに指定できます。
3メガ損保グループのIAIG指定は定量基準から順当です。
他方で大手生保5社のうち、今回指定されたのは第一生命グループだけでした。金融庁は定量基準に合ったグループのみを指定し、規模の大きい日本生命や住友生命、明治安田生命、かんぽ生命は指定外としました。
指定による制約は限定的か
IAIGに指定された保険グループは、ストレス発現時の再建計画の策定や国際資本基準(ICS)の遵守が求められ、海外当局と連携した「監督カレッジ」によるモニタリングを受けます。
もっとも、監督指針の改正案(10月末公表)によると、金融庁はIAIG以外にも必要に応じて再建計画の策定を求めるようなので、IAIGに指定されなかったとしても、おそらく大規模で複雑な業務を行う保険グループはIAIGと同じ対応が求められます。
また、2025年の導入が見込まれている新たなソルベンシー規制はICSをベースとしたものとなる見込みなので、IAIG指定で競争上不利になることはなさそうです。
なお、一部は非公表ですが、アクサや米プルデンシャルといった日本で活動する外資系保険グループの多くもIAIGに指定されているとみられますので、国内勢だけが新たな規制を受けるのではありません。
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※カナダとUSAに行ってきました^^v