プルデンシャル生命の調査報告書

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1348(2026.10.12)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。記事でも触れましたが、8日夜のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」に録画出演したほか、9日の時事通信「完全歩合制『金銭詐取の背景』」、産経新聞「激震の保険業界…不正拡大防げぬ「育成庁」の綻び」、毎日新聞「プルデンシャル生命:管理体制、04年から問題に」、東京新聞「プルデンシャル生命不正、外部調査も追及を避けた生保業界と組織の病根」などにコメントが載りました。

以下、本文です。
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プルデンシャル生命保険のライフプランナー(営業社員。以下LP)による金銭不祥事について、同社は8日に社外特別調査委員会による報告書を公表するとともに、経営改革に向けた取り組みを公表し、記者会見を行いました。すでにテレビ報道を含め、いくつかのメディアに私のコメントが出ていますが、改めて本件について取り上げたいと思います。

不祥事を起こしたLPの属性

報告書によると、金銭不祥事に関わったLPは159名、顧客等が支払った金額は申告ベースで計61億円でした。報告書では不祥事に関わったLPの属性がある程度明らかにされています。
調査委員会は全件を個別具体的に調査したのではなく、主要な事案を個別調査の対象としています(LP27名が関与し、金額は51億円)。報告書によると、この27名のうち44%(12名)が不適切な行為を始めた当時の年間報酬額が800万円以上で、52%(14名)が在籍年数5年以上だったそうです。
また、会社の自主点検チームによる調査(LP124名が関与し、金額は約10億円)でも、当時の年間報酬額が800万円以上だったLPが37%、在籍5年以上が22%でした。
2つの調査結果にはやや違いがあるものの、金銭不祥事に手を染めたのは「保険が売れないLP」「社歴の短いLP」だけではなく、保険販売の実績があり、社歴も長いLPも関わっていたことがわかりました。

同社のビジネスモデルは、会社がLPに何らかのマーケットを付与することはなく、マーケティングから保険販売までを全てLPが行うというものです。営業活動にかかる経費(交通費、交際費、交流会への参加費用など)はLPの自己負担なので、報告書にも「場合によっては生活を維持するための十分な報酬を得ることができず、営業活動経費の支出も困難な状況になり、その結果、収入の源泉となる新規の顧客開拓ができないという負のスパイラルに陥る可能性がある」と述べています(57ページ)。例えば年間報酬額が1000万円だとしても、営業活動経費として月50万円を費やせば、年収は400万円を下回ることになります。
これらを踏まえると、最低保証給を導入し、アフターサービスに対する報酬の比率を高め、新契約手数料の支給を4年から7年に変更しても、LPが従来のマーケティング手法を変えないかぎり、最低保証給は「焼け石に水」に思えますし、むしろLPの資金繰りは厳しくなるかもしれません。
会社からのマーケティング支援を引き続き期待できないなかで、果たしてLPはマーケティング手法を見直すことができるのでしょうか。

グループガバナンスの不備

報告書は同社のビジネスモデルについて、「個人の人脈・人的信頼関係に過度に依存したビジネスが本来の軌道から逸脱し、暴走した結果」「ビジネスモデルの根幹に『金銭授受に係る不正リスク』が構造的に内在」と述べています(いずれも137ページ)。私もこれまで同じようにコメントしてきました。
それにもかかわらず、同社の親会社であるPHJも、グループの頂点にある米国法人PFIにおいても、近年、不正リスクについて認識しうる状況にあってからも、「高収益に資する既存のビジネスモデルの温存をPOJ(プルデンシャル生命)の経営の基本とし、これを前提とした個別的な統制強化がされたにとどまり、上記リスクの最小化に向けた抜本的な見直しには至らなかった」と、報告書ではグループガバナンス機能の不備を指摘しています(138ページ)。
その一方で、報告書は「POJの経営層において、自らを独立した経営責任者というよりも、PFIグループ全体の経営方針の下で職務を遂行する立場にあると認識する傾向を生じさせてきたことがうかがわれる」と同社経営層の主体性が希薄化していた可能性を指摘しました(145ページ)。

支配株主が存在し、かつ、報告書でグループガバナンスの不備を指摘されたのですから、報告書を受けた経営改革の取り組みは同社単独ではなく、グループとして行うべきであり、記者会見でもグループとして同社をどうしていくつもりなのかを語るべきだったと私は考えます。

なお、金融庁は9日、同社だけではなく親会社のPHJ、兄弟会社のジブラルタ生命保険に行政処分を行いました。PHJに対しては、親会社としての経営管理責任を怠ったことにより問題を一層深刻化させたなどとして、業務改善命令を出しています。
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※今週末は福岡大学で日本金融学会の秋季大会があります。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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