
プルデンシャル生命保険の営業社員(退職者を含む)100名以上が、顧客から金銭をだまし取るなどの不適切行為を行っていたというショッキングな事件が発覚しました。
会社が2024年8月から「お客さま確認」を行った結果の概要はこちら(PDF)です。
23日の記者会見をネットで視聴しました。会社は不祥事を招いた原因について、次の3点を挙げています。
1.営業社員の活動管理および報酬制度上の課題
2.経営管理態勢の課題
3.組織風土の課題
不適切行為は1991年からとのことでしたが、同社のLP(ライフプランナー:営業社員)チャネルが変わっていったのは、おそらく2010年代ではないかと見ています。
創業者である坂口陽史氏が築いたLPチャネルは、単に米国流のフルコミッション・モデルを日本に導入したというのではなく、「顧客に生命保険の魔法の力を届ける」という強烈な使命感に支えられていたという認識です(なんとなく宗教的でもありましたが…)。
その後、2001年に親会社の米国プルデンシャルが株式会社化・上場を果たし、2002年に坂口氏が亡くなってからも、おそらくこうした「坂口イズム」はしばらく変わらなかったのだと思います。しかし、2008年からのグローバル経営危機を経て、グループのなかで安定して高い利益を上げていた日本事業への期待が高まる一方、2013年からの日銀による大規模な金融緩和政策で円金利が一段と低下し、それまでのように円建ての終身保険を中心に提供するのが難しくなるなかで、同社は外貨建ての資産形成を意識した保険に舵を切ることとなった模様です。こうした商品戦略の変更が会社の意向なのか、LP主導なのかはわかりませんが、例えば2019年度の新契約年換算保険料の8割弱は外貨建てでした
(ちなみに近年は外貨建てと変額保険の2本柱となっています)。
金融庁は今後どう動くのでしょうか。不祥事への直接的な対応を別にすると、ポイントは2つあると思います。
1つは、同社が示した再発防止策で十分と考えられるかどうかです。
フルコミッション型の報酬はLPだけではなく、営業管理職も同じなので、新契約業績重視の組織風土を払拭するにはビジネスモデルそのものの抜本的な見直しが必要となります。会見では今後報酬制度を見直し、LPの管理を強化し、経営管理態勢を改善するとのことですが、それが正しい処方箋なのかどうか。
そもそも金銭不祥事を起こしたLPがなぜ不祥事に走ってしまったのかを、会社は十分理解しているのでしょうか。不祥事を起こしたLPを擁護するつもりは全くありません。ただ、「業績に過度に連動する報酬制度は、金銭的利益を重視する志向を持つ人材を引き付け、営業社員の収入の不安定さが不適切行為につながるリスクを増大させていました」「金融機関社員として不適切な人材が採用されないよう、採用のプロセスを強化いたします」といった記述を見ると、どこか違和感を感じてしまいます。近年では毎年在籍者の1割強のLPが退職しているようですし、問題の根幹は「不適切な人材」なのでしょうか。
もう1つは、フルコミッション・モデルそのものにメスを入れるかどうかです。つまり、これはプルデンシャル生命だけの問題なのか、あるいは、このモデルで顧客本位の業務運営を行うにはリスクが大きすぎると判断するかどうか。
昨年8月に金融庁(関東財務局)が行政処分を行ったFPパートナーの件では、顧客の意向よりも代理店経営の都合を優先する実態が明らかになりました。損害保険会社も昨今の問題発覚を受け、代理店手数料のうち規模や増収に連動した部分を抑え、試行錯誤はあるにせよ、業務品質を重視する方向に進んでいます。
こうした事例・潮流を踏まえると、フルコミッション・モデルの保険販売をそのままにしておくことはできないと考えるのが自然です。
長くなりましたが、とりあえずコメントまで。
※NHK福岡です(番組出演ではありません)
