新型コロナ禍は次のステージへ

今週のInswatch Vol.1054(2020.10.12)に寄稿したものです。
7-9月期の対面販売の数字はまずまずだったようですが、楽観視できないかもしれません。
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4-6月期の結果は異常値だが...

先月のInswatchでお伝えしたように、対面販売を主体とする生命保険会社では4-6月期に新規契約の獲得が極端に落ち込みました。7月の新規契約件数も前年同期に比べて45%の減少となりました(個人保険、生保42社合計)。
もっとも、4-6月期は緊急事態宣言が出され、営業活動を自粛していた期間だったため、落ち込みは当然の結果と受け止めることもできます。自動車保険の損害率が極端に改善したのも、経済・社会活動の自粛が強く影響していますので、これらは「異常値」と言えそうです。
社会から保険需要が消えてしまったわけではなく、むしろ不安心理の高まりが保険需要を掘り起こしている面もあるので、以前と同じような営業活動さえ再開できれば、業績は自ずと回復するはず。一時的ショックであれば、このように考えるのが自然です。

一時的ショックにとどまらない兆しも

期待に水を差すようで申しわけありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大から半年ちょっと経ち、残念ながら一時的なショックでは済まない兆しが少しずつ見えてきました。
夏ごろまでは、活動自粛の直撃を受けた飲食業や旅行業など一部の業種を除き、新型コロナ禍でビジネスが蒸発するという状況ではなかったように思います。ところが、経済・社会活動の制限が一時的なものではなく、コロナ前の状態には当面戻れそうにないことがわかってきました。いったん感染が収まっても、しばらくすると再び感染が増え、活動を抑えざるをえなくなります。有効なワクチンが広く普及するまではその繰り返しです。
このため、影響は一部の業種だけではなく、全般的な個人所得の低迷や設備投資の減退などにつながる可能性が高まっています。そうなると、当然ながら保険需要も影響を受けるでしょう。

1日に発表された9月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)では、最も注目される「業況判断」が改善したため、景況感の悪化に歯止めがかかったという見方も出ているようです。しかし、同じ短観の「設備投資額(2020年度)」を見ると、製造業、非製造業ともに計画が下方修正され、全規模・全産業ではマイナスとなりました。設備投資の落ち込みは経済全体に波及しますので、要注意です。

金融市場の動向も安心できない

多くの生命保険会社は保険引受リスクよりも、金融市場の変動が経営に最も影響を与えるリスク要因となっています。
3月に新型コロナの感染拡大で金融市場が動揺したものの、その後は比較的安定しています(ただし、金利水準は世界的に極めて低い水準のままで、回復していません)。しかし、新型コロナ禍の影響が実体経済にどのような形で波及するかは不透明であり、金融市場が再び大きく動くこともありえます。保険会社はあらためて自社のリスクの取りかたを考え、必要な見直しを行う局面だと思います。

※出張で京都に来ています。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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