「好決算」に惑わされないで

 

先週から保険会社の決算発表が始まりました。
第一生命の連結純利益は前年同期比71%増、
T&Dの連結純利益は倍増となりました
(14日公表)。

増益には有価証券評価損が減ったことや、
外国証券の利息・配当金増加が大きかったようです。
ともに上場以来、上期の最高益を更新したとか。

メガバンクの決算発表もありました(同じく14日)。
みずほと三井住友はやはり上期としての過去最高益。
前年に比べ、株式評価損が少なかったことと、
貸倒引当金の戻し入れなどが寄与した模様です。

メディアが報道する「好決算」「過去最高益」には
どのような意味があるのでしょうか。

決算発表でメディアが会計上の損益に注目するのは、
損益の拡大、イコール、会社価値の拡大という前提が
あるのだと思います。

しかし、例えば「株式評価損が減ったから増益」
「貸倒引当金が戻入になったから増益」というのに
皆さんは違和感ありませんか?

株式を保有しているのであれば、株価が上がれば
会社価値にはプラス、下がればマイナスです。
ところが、会計上の損益に株価上昇の影響は
あまり反映されません(貸出金も同様です)。

金利についてもそうです。
特に、長期にわたり固定利率を保証している生保の場合、
この上期は超長期金利が上昇し、将来の負担が減り、
会社価値が改善しました。
ところが、会計上の損益にはほとんど反映されていません。

金融セクター(銀行、保険)の場合、会社価値の拡大と
会計上の損益のギャップがあまりに大きく、過去には、
会計上の損益をターゲットにした経営をしていたために
会社が傾いてしまった中堅生保もありました。

銀行や保険会社の経営陣は、さすがにこのあたりは
理解していると信じていますが、メディアが相変わらず
会計上の損益だけを見て「好決算」「過去最高益」とはやすと、
もしかしたら引きずられることがあるかもしれません。

さすがに日経新聞は、銀行については「好決算」としつつも、
「国内の貸出が伸びていない」「利ざやは縮小」と、
本業の厳しさをきちんととらえています。

保険についても、「保険料収入が増えたから増収」
「アベノミクス効果で増益」という意味不明な報道ではなく、
会社価値の変動を意識した記述がほしいですね。

※今月に入り、上智大と東京経済大で講義を行いました。
 写真は東京経済大です。武蔵野の面影を感じます。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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