もう一つの共済問題

週刊東洋経済2008.11.29の共済特集「共済vs.生保」で
保険ジャーナリストの石井さんが取り上げていましたが、
12/1に公益法人制度改革法が施行となり、
公益法人が行う共済事業も保険業法の規制対象になりました。

http://www.fsa.go.jp/ordinary/ins_koueki/index.html

現行の公益法人は今後5年以内に新法人(一般または公益)に
移行する必要があります。しかし、共済事業をそのまま続けると、
無認可の保険事業者として保険業法違反になってしまいます。
新法人に移行するまでに、保険会社(少額短期事業者を含む)になるか、
共済事業を縮小・譲渡・廃止するか決めなければなりません。

石井さんによると、公益法人のうち共済を主目的に運営しているところが
990法人もあるそうです。おそらく規模の小さいところが多いのでしょうが、
「あんしん財団(旧KSD。会員事業所は24万件)」や
「日本フルハップ(関西ではCMで有名。加入者数は54万人)」
といった中小企業向けに広く共済事業を展開しているところもあり、
今後の動向が注目されます。

 

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米国生保への資本注入はどうなる?

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FRBがゼロ金利政策に突入しました。
ついにここまできたかという感じですが、信用収縮が起きているときに
金利を引き下げても効果はあまり期待できない、というのが
日本の経験からの教訓でしょうか。

ここ数日、米国生保の原稿を書いていて思うのですが、
米国政府の対応にはやっぱり頭を抱えてしまいます。

例えば11月以降、CMBS(商業用不動産担保証券)の価格が急落しました。
これには政府の方針変更が一役買っています。
米財務省の金融安定化策が、当初の不良資産買い取りから
資本注入プログラムに変わってしまったためです。

この資本注入プログラムは保険会社も対象になっていて、
ハートフォードやプルデンシャルといった大手保険会社も参加を表明しています。
ところが、本当に資本注入されるのか、されない会社があるのか...
といった宙ぶらりんの状態が続いており、市場の疑心暗鬼は晴れません。

新政権に多くを期待するのはどうかと思いますが、
少なくとも現政権のレームダック状態が終わる点はプラスでしょう。

 

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日経ヴェリタス「安易な会計ルール緩和に抗す」

本日(14日)の日経ヴェリタス、IASB理事である山田辰己さんの記事です。

・国際会計基準の緩和はEUからの強い政治的圧力を受けたもの。
 EUがルールを勝手に凍結し、情報開示が後退しないように決断した。

・「取引がほとんどない市場で金融商品の時価をどう決めるか」
 「時価評価の信頼度」「簿外の特別目的会社」などの課題には、
 情報開示を強化する方向で対応している。

・投資リスクを投資家に伝えるもので時価に代わるものはない。
 海外では時価会計をやめるべきだという極端な議論は出ていない。
 安易に会計ルールを変更すれば、市場の信頼を失うことを理解している。

IASBは国際会計基準の作成を担う組織で、理事は14人。
そのうち日本人は山田さんだけという、貴重な存在です。

昨今、金融機関の健全性を「自己規律」「行政による規制」「市場規律」
の3つで確保しようという流れから、金融危機が深刻化するなかで
「市場規律」を否定する動きがあるように思えてなりません。

危機対応の重要性を否定するつもりはありませんが、
さりとて「行政による規制」だけで実現可能なのでしょうか。
山田さんを応援したいと思います。

 

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ブルームバーグ・テレビの収録

仕事の合間にブルームバーグ・テレビの収録に行きました。
テーマは「2009年の生保業界」。
新年4日あたりに流れるようです。

例年なら決算見込みと中期的な課題を話せばいいのですが、
「AIG」「金融危機」など不確定要素が多すぎます。
コメントが2009年どころか正月まで持つかどうか心配です^^

当面の注目ポイントということであれば、
 ・AIG系生保各社の売却動向
 ・米新政権の経済政策
 ・生損保の10-12月決算発表(2月半ば)
といったところでしょうか。

もう一つ、こちらはうれしいお話。
12月8日の週刊金融財政事情に拙著「経営なき破綻」の書評が載りました。
一橋大の米山先生によるものです。どうもありがとうございました。

 

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米国生保の投資家向け説明会

先週(4日)上場損保の決算説明会の話を書きましたが、
米国では先週後半から今週にかけて、大手生保の説明会がありました。
ニューヨークなのでさすがに出席していませんが、
HPで音声を聞いたり、資料をダウンロードしたりできます。

このところプルデンシャル、ハートフォード、メットライフといった
米国大手生保の株価が大幅に下がり、信用スプレッドも極端に拡大しています。
このため、説明の中心は「資本」「資産内容」「流動性」についてでした。
1年前とは様変わりです。

ある会社では、「S&P500が700まで下がっても、AA水準の資本を維持できる」
というコメントがあったり(ちなみに足元の株価水準は900程度です)、
政府の資本注入プログラムへの参加を公表したりと、
かなり踏み込んだ説明がありました。

各社の説明会(特にハートフォード)を受けて、株価は急回復。
説明会はとりあえず成功だったと言えるでしょう。

米国生保の現状については、どこかでレポートを書く予定です。

 

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日経と週刊朝日の生保関連記事

いずれも私のコメントが載っているので、ちょっとだけ感想など。

日経は12/6(土)の4面「変調生保(下)」です。
生保の基礎利益が圧迫されているのは、
「運用不振に加えて、保有契約が落ちているのも一因」
というものです。

ただ、今回の中間決算では主要生保の基礎利益が
軒並み減少しているのですが、一時的なコスト上昇や
変額年金の責任準備金負担などもあり、
基礎的な収益力が落ちたと言うには証拠不十分です。

金利上昇や追加責任準備金の効果もあり、
少なくとも逆ざやは改善しています。

週刊朝日の記事は巷で話題になったようです。
「危ない生保」というタイトルですから無理もありません。

特に注目されたのは、「株式純資産倍率」という指標です。
「株式」「外国株式等」の合計を「実質純資産額」で割ったもので、
マスミューチュアルと三井が2倍を超えています。
編集部のオリジナルかどうか知りませんが、興味深く感じました。

もちろん、この指標だけで生保の健全性を判断することはできません。

・「外国株式等」には外国株式以外のものが含まれている
 (主要生保では外貨建資産の内訳として株式が公表されています)
・株式投信やETFが反映されていない(開示資料ではわかりません)
・ヘッジ効果が反映されていない

こういった弱点もあるのですが、金融危機による内外株式の下落に
焦点を当てるという発想は理解できます。
確かに株式を持っていなければ、株安の影響を受けませんよね。

ちなみに私のコメントは、「今回は株価が落ちるスピードが格段に速い」
「①貯蓄性が高い、②予定利率が高い、③契約が終わるまでが長い
 という三条件に当てはまるほど、破綻によるダメージは大きくなる」
などでした。

 

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戦略的資源投入

ある上場損保の決算説明会で目にした言葉です。
政策株式は戦略的資源投入なのだそうです。

株式運用益に加え、安定的な企業保険収益の確保や
販売チャネルとの関係強化などに重要な役割を果たしており、
過去3年平均で約1.3%のリターン(国内保険収益のみ)とのこと。

しかし、必要資本の多くを株式保有リスクで費消し、
もちろん企業保険の保険引受リスクも抱えたうえで、
リターンはわずか年1.3%+αです。

株価が暴落しているなかでの投資家向け説明会で、
なぜあえて「戦略的資源投入」とうたったのでしょうか。
私には理解できません。

別の上場損保トップは決算説明会で
「株価下落による損失計上はやむを得ない」とコメント。

私は本来、「企業価値を損なってしまい、責任を感じている」
などと言うべきだと思うのですが、まるで、避けることのできない
自然現象のように聞こえました。

おかしいと思うのは私だけでしょうか?

 

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1月にスピーチをします

1月に東京と大阪で開かれる保険代理店向けセミナーでスピーチをします。
保険会社の経営破綻にどう対応するか、というテーマのセミナーで、
講師は私と、大成火災の破綻を経験した代理店の岡武さんです。

http://www.faren.co.jp/

「保険代理店向け」とありますが、たぶん代理店限定ではないと思いますので
ご興味のあるかたはぜひお越し下さい。

ところで、拙著「経営なき破綻」をご覧になった当時の関係者
(この本の協力者ではなく、初めてのかたです)から連絡があり、
先ほどお会いしました。

もしかしたら怒られるのかも、とやや緊張して臨んだのですが、
そのようなことはなく、当時の話をいろいろと伺うことができました。
そのかたの話でも、やはり「人の問題」が大きかったようです。

 

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「生命保険はだれのものか」

ライフネット生命・出口社長の最新作です。
名著「生命保険入門」を、より平易かつクリアにした感じの本でした。

本書で示されている日本の生命保険の問題点についての指摘は、
私の問題意識ともかなり共通しています。
出口さんのすごいのは、解決策を示すだけではなく、
自ら実践しているところです(最近も付加保険料を開示していますね)。

私にとって最も興味深かったのは、営業職員チャネルのコスト構造を
具体的に試算しているところでした。
「なるほど、こう説明すればいいんだ」と目からうろこでした。

あと、「タテ(歴史)とヨコ(世界各地)の両軸から迫らないと、
その事象の本質は理解できない」という記述もあって(P175)、
西洋史学科出身の私には、何だかとっても共感できました^^

おすすめの1冊です。

 

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主要生保の中間決算(続き)

前回のブログで、
「他の金融セクターに比べ、生保は9月時点では金融危機の影響は
 一部に限られていた」
と書きました。
しかし、外資系生保の決算を見ると、そうでもない会社が散見されます。

例えばアリコジャパンでは、保有するAIG株式が暴落したというだけではなく、
証券化商品(CMBSやRMBSなど)でも多額の含み損を抱えています。
アフラックの有価証券含み損も2000億円に達しており、保有する高格付けの外債
(為替リスクはとっていない)の価格下落が大きかったようです。

いずれもハイリスク投資で失敗したわけではなく、金融市場の混乱により
高い格付けの債券でも価格が大きく下がってしまった影響と考えられます。
先日の出張でも感じましたが、米国では市場と実態のギャップが
考えられないほど大きくなっているのです。

生保は負債が長期にわたるので、一部の証券化商品を除けば、
高格付けの債券が次々にデフォルトする(=その可能性は極めて低いと思います)
事態にでもならないかぎり、満期まで持ち続ければ全額返ってくるはずです。
株式だと、こうはいきませんよね。

 

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