23日に横浜で開催されるRINGの会オープンセミナーは「満員御礼」だそうです。私は第1部のコーディネーターを務めますので、パネリストの興味深い話が引き出せるよう、準備を進めているところです。
さて、週の途中ですが、直近のinswatch Vol.932(2018.6.11)に寄稿しましたので、ご紹介しましょう。

なぜ「ポートフォリオ変革」なのか

3メガ損保や上場生保では、決算発表後の5月下旬に投資家・アナリスト向けの経営説明会を開いています。決算結果の説明だけではなく、経営トップ自らが今後の経営戦略を伝える機会となっていて、業界関係者にも役に立ちそうです。

各社の説明資料はこちらで入手できます。
 東京海上 
 MS&AD 
 SOMPO 

新中計で「ポートフォリオ変革」を掲げる

3メガ損保グループのうち、東京海上とMS&ADでは今年度から新たな中期経営計画がはじまり、今回の説明会でも中心テーマとなりました。
東京海上グループの重点課題には、「ポートフォリオの更なる分散」「事業構造改革(=販売チャネルの変革・強化など)」「グループ一体経営の強化」の3つが挙げられています。また、MS&ADグループの重点戦略は、「グループ総合力の発揮」「デジタライゼーションの推進」「ポートフォリオ変革」の3つです。
両グループとも業界再編や大規模買収により今の姿になったので、グループベースでの経営を強めようというのは自然な流れでしょう。その一方で、いずれも自らの「ポートフォリオ」、すなわち、収益・リスク構造のバランスをさらに変えようとしているのはどうしてなのでしょうか。

リスクポートフォリオの偏り

ヒントは各グループが開示している「リスク量の内訳」にあります。
保険会社では自らが抱える経営リスクを、例えば200年に1回の確率で発生しうる損失額などとして金額に置き換え、健全性の確保や資本効率の向上に活用しています。
東京海上の資料によると、リスク量として最も大きいのは「国内損保(資産運用)」で、全体の3割強を占めています。MS&ADでも国内損保の資産運用リスクがグループのリスクポートフォリオの3割強となっていますし、SOMPOでは自然災害リスクを抑えているためか、国内損保の資産運用リスクが5割弱に達しています(いずれも2017年度末)。地震や台風といった自然災害リスクを抱える損保グループで最も大きい経営リスクが資産運用のリスクというのは、考えてみれば不思議な話です。
言うまでもないかもしれませんが、国内損保の資産運用リスクの多くは、営業目的などで保有する国内株式によるものです。

海外事業拡大が本質ではない

中長期的な投資家の目線からすると、自然災害リスクは保険事業の収益の源泉であり、保険引受リスクのコントロールに強みがあると考えているからこそ、保険会社に投資します。
近年の国内勢による積極的な海外保険会社の買収には、日本に偏った事業ポートフォリオを分散するという意味もあると思います。もっとも、保険引受リスクの分散であれば再保険でも対応可能なので、海外M&Aをしなければ投資家がいい評価をしないというものではありません。
各グループともに事業ポートフォリオの分散を掲げ、海外事業の拡大を図るとしていますが、グローバル経営による成長を目指したいという経営者の判断によるものなのでしょう。

ところが、最大の経営リスクが国内株式保有によるものという現状を踏まえると、損保グループの経営者は、保険引受事業よりも日本株の保有のほうが高いリターンを安定的に上げられると考え、資本を最も多く使っていることになります。
ただし、株式投資に何か特別な強みを持っているのでなければ、投資家としては自分で株式投資を行ったほうが、少なくとも税金の分だけ有利なはずです。「特別な強み」など存在するのでしょうか。

政策株式保有を正当化するのは難しい

損保が保有するのは、いわゆる政策保有株式なので、株式を保有することで大企業から保険料を得ている面があります。しかし、かつての規制料率時代とは違い、コマーシャル分野は収入保険料を確保すれば利益が得られるという事業ではなくなりました。もはや株式投資における「特別な強み」とは言えません。
例えば、MS&ADは政策株式のROR(リスク対比リターン)を7~8%程度と示していますが、これは保険引受利益と配当をリターンとしたものだそうです。株価の変動を考えると、安定的に7~8%のリターンを上げられるものではありません。
損保グループの経営者もこうした状況を十分理解しているからこそ、中期経営計画の3本柱の一つに「ポートフォリオの変革」を掲げ、実行しようとしているのでしょう。

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inswatchは保険流通業界向けのメールマガジンです。
私は2か月に1度のペースで寄稿しています。

※久しぶりに札幌スープカリーを食べました。

 

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