共済の研究会でスピーチ

 

黒田日銀の追加緩和には驚きました。
長期国債の保有残高を約30兆円追加し、
買入れの平均残存期間を最大3年程度延長するとか。
ETFとJ-REITの買入れも3倍増だそうです。

しかし、期待に働きかけるこの政策。
効きが悪くなったら、またバズーカ砲となるはず。
どうも不安が先に立ってしまいます。

ところで、先月京都である共済の研究会に出席し、
スピーチをする機会がありました。
参加者の多くは共済事業に日々関わる皆さんです。

私の役目は保険業界をめぐる最近の動向について
解説することでした。

現在進んでいる保険募集ルールの再構築や
金融庁の金融モニタリング基本方針に見られる
顧客と金融機関の好循環を目指す取り組みなどは、
共済事業にも決して無縁ではないでしょう。

同時に、研究会に参加して、共済事業への
プレッシャーの強まりも感じました。

技術面では共済も保険も同じです。
統計データから料率を決め、責任準備金を積み、
保障を全うするには、リスク管理が極めて重要です。
一部の共済団体では、統合的リスク管理(ERM)の
高度化を進めていると聞きます。

県民共済などが提供する「一律掛金・一律保障」は、
リスクの異なる若年層と壮年層が同じ掛金なので、
共済の相互扶助を体現しているように見えます。

ただ、考えてみれば、保険会社も団体保険で
同じような保障を提供しています。

それでは両者の違いがどこにあるかといえば、
組織のあり方なのだと思います。

保険会社は保障を提供するために加入者を集め、
安定した保障を提供できるようにするのであって、
加入者はあくまでサービスの利用者です。

他方、共済を提供する協同組合は、組合員のために
存在する組織です。組合員のためにサービスを提供し、
組合は組合員の自治で運営されます。

大規模化した共済の加入者に自治意識があるのか、
といった疑問はありますし、例えばJA共済であれば、
構成員が「専業農家」「土地持ち非農家」「准組合員」、
全労済であれば「労組組合員」「こくみん共済の加入者」
など、属性の大きく異なる組合員を抱えています。

それでも共済が保険とは違うと説明するには、
「加入者」ではなく「組合員」という意識を持ってもらう
取り組みを継続的に行っていくしかないでしょう。

もっとも、共済事業者の監督は保険行政(金融庁)に
一本化したほうがいいのではないかと思っています。
そうすれば、「監督が緩い」といった批判はなくなりますね。

※写真は宇治の平等院です。
 思わず10円玉を取り出し、見比べてしまいました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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