JA共済の昨年度決算

 

東日本大震災で損保業界は1兆円を超える
地震保険金を支払うことになりましたが、
JA共済の支払見込額も7000億円を超えました
(建物更生共済では地震リスクを補償しているので)。

ところが、JA共済の昨年度決算を見ると、
経常利益や当期剰余金は黒字を確保していますし、
ソルベンシー・マージン比率はむしろわずかながら
改善しています(952.7% → 966.6%)。

不思議に思い、ディスクロ誌を「解読」してみました。

まず収支ですが、基礎利益は多額の支払備金計上により、
前年の4758億円から125億円の赤字に転じています。

他方、再保険回収見込額を2545億円計上しているのと、
異常危険準備金が7463億円減っているので、
合計1兆円のプラス要因がありました。

これだけだと震災で減益となるどころか、むしろ前年よりも
約5000億円の増益となってしまいます。

しかし、よく見ると、生命共済で将来の予定利息対応として
「責任準備金の特別積立て4349億円」を実施していました。
これで収支が前年並みとなった理由がわかりました。

ソルベンシー・マージン比率のほうはどうでしょうか。

分子の支払余力が2288億円の減少にとどまったのは、
異常危険準備金は震災で7463億円減ったものの、
株式保有が少ないため含み益の減少が小幅だったうえ、
責任準備金の特別積立てがプラスに寄与した、
ということのようです。

また、分母のリスク合計額のうち、巨大災害リスク相当額と
予定利率リスク相当額が減っており、この結果、
ソルベンシー・マージン比率が小幅上昇した模様です。

巨大災害リスク相当額が7094億円と、今回の震災による
支払見込額よりも小さいというのがやや引っかかりますが...

シンプルに見れば、東日本大震災関連で約5000億円の
企業価値にとってマイナス要因があったということなのですが
(責任準備金の特別積立ては企業価値にニュートラルなので)、
なかなか奥が深い(?)決算ですね。

※写真は2007年8月の気仙沼港です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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