植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2015年11月29日

生保決算から

 

保険料収入を売上高として「抜いた」「トップ奪回」
という報道に意味があるとはとても思えませんが、
生保の事業動向を見るうえでは保険料収入も
一つの手掛かりになるのは確かです。

かつてに比べ、生保各社の販売動向をつかむのは
難しくなっています。保険料収入や年換算保険料のほか、
契約高や件数、EVの新契約価値などから解読を試みても、
それだけではわからないことが多いです。

大手4社の指標をいくつか確認してみましょう
(4-9月期。いずれも前年同期との対比)。

 ①保険料等収入
 ②個人分野の新契約年換算保険料(ANP)
 ③うち医療保障・生前給付保障等(≒第三分野)
 ④個人保険の新契約高(=保険金額)
 ⑤個人保険の新契約件数
 ⑥EVの新契約価値

<日本生命>
①保険料等収入 +17.3%(+4300億円)
②新契約ANP  +8.1%
③うち第三分野 +24.6%
④新契約高 +28.5%
⑤新契約件数 +1.2%
⑥EVは非公表

「いずれも増加」と言えばそれまでなのですが、
保険料等収入の増加は主に団年特別勘定によるもの。
銀行窓販も1000億円程度の寄与となっていますので、
営業職員チャネルでは減少ということになります。

新契約件数も営業職員チャネルは横ばいでした。
新契約高の増加は昨年度からの「保障追加制度」
「一部保障見直し制度」等が関係ありそうです。

EVを公表していれば、上記の特殊要因があっても
新契約価値を増やせたのかどうかがわかるのですが...


<第一生命>
①保険料等収入 ▲5.9%(▲900億円)
 ※グループベースでは+7.8%(+2000億円)
②新契約ANP  ▲0.2%
 ※グループベースでは+9.7%
③うち第三分野 +3.6%
④新契約高 ▲45.3%
⑤新契約件数 ▲1.5%
⑥EVの新契約価値 983億円(▲17億円)
 ※グループベースでは1405億円(+34億円)

今回から米プロテクティブが加わったため、
単体とグループベースの動きが異なっています。

単体の第三分野が増え、新契約ANPと件数が横ばい、
新契約高が急減というのは、「部分保障変更制度」を
導入したことが大きいのではないかと思います。
なお、個人年金の販売増加も目立ちます。


<住友生命>
①保険料等収入 +18.5%(+2300億円)
②新契約ANP  +9.3%
③うち第三分野 +3.0%
④新契約高 ▲0.4%
⑤新契約件数 +10.3%
⑥EVの新契約価値 771億円(+66億円)

銀行窓販の一時払商品は減収だった模様なので、
保険料等収入の増加はそれ以外の要因です。
説明資料によると、営業職員チャネルで一時払終身の
販売件数が増加したとあります。

EVの新契約価値は増加となりました。昨年度と違い、
新契約マージンが下がらなかったことが大きいようです。


<明治安田生命>
①保険料等収入 +0.3%
②新契約ANP  +13.5%
③うち第三分野 +7.9%
④新契約高 +69.7%
⑤新契約件数 +0.3%
⑥EVの新契約価値 1141億円(+90億円)

説明資料によると、保険料収入は団体年金の減収を
営業職員チャネルが補う構図だったようです。
ここでも営業職員チャネルによる一時払商品の
販売拡大が見られます。

第一生命とは反対に、新契約高が7割増となる一方、
新契約件数は横ばいでした。転換純減が大幅に縮小
しているので、何らかの施策が影響しているのでしょう。

EVの新契約価値は昨年度に続き増加しました。
速報段階なので、新契約マージンがどうなったのか、
後日確認しましょう。


なんだか自分のメモのようになってしまいましたが、
解読作業の一端がご理解いただけるかと思います。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は真壁の町並みです(茨城県桜川市)。
 東日本大震災で大きな被害を受けたため、
 今でも修復工事が続いています。


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2015年11月22日

損保決算から

 

18日に発表された上場損保の4-9月期決算から、
いくつかコメントしましょう。

2015年度の上半期は自然災害に伴う発生保険金が
3グループ合計で約1860億円となりました。

他方、株価下落による影響を見ると、株式含み益が
3グループ(国内損保)で約7620億円減っています。

つまり、確かに自然災害の影響も大きかったのですが、
株価下落による影響のほうが、たまたま会計損益に
反映されていないだけで、より大きかったとわかります。

各社が政策保有株式の売却を進めているのは、
このような状況を好ましくないと考えているからでしょう。


営業面で目立ったのは火災保険の増収です。

10月からの料率引き上げと、10年を超える長期契約の
販売停止を受けて、駆け込み契約が急増しました。
特に9月はものすごかったようです。

ただし、この増収は将来の先食いですので、
今後は業績面でマイナスに働くことになります
(売れなくなるという意味です)。


自動車保険も増収ですが、引き続き単価上昇の一方、
台数の伸び悩みが目立ちます。

 TMNF: 台数 +1.5%、単価 +2.9%、保険料 +4.5%
 MSI :  台数 +0.2%、単価 +3.7%、保険料 +3.9%
 ADI :  台数▲1.0%、単価 +3.7%、保険料 +2.6%
 SOMPO:台数▲0.6%、単価 +3.6%、保険料 +3.0%

単価上昇にはそろそろ歯止めがかかりそうなので、
台数を伸ばせるかどうかが焦点となるのでしょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は南足柄市にある大雄山最乗寺。
 人気のパワースポットなのだそうです。

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2015年11月15日

上場生保の4-9月期決算

 

上場生保の4-9月期決算の発表がありました
(他の生保の決算発表はもう少し先です)。

ここでいう「上場生保」は、第一生命、T&Dグループ、
ソニー生命、ライフネット生命、かんぽ生命です。

第一生命は伝統的な営業職員チャネルに加え、
銀行窓販、海外保険事業などを展開しています。

T&Dの太陽生命は女性・家庭市場が事業基盤、
大同生命は中小企業市場、TDFは銀行窓販です。

ソニー生命は生産性の高いライフプランナーと
生保代理店によるコンサルティングセールス。

ライフネット生命はダイレクト販売の会社で、
かんぽ生命は郵便局ネットワークが強みです。

こうして見ると、上場生保は個別性が強いですね。


さて、4-9月期は外部要因として、内外株価の下落と
超低金利の継続がありました。

特にこの金利水準は、見かけ上の「順ざや」で
喜んでいるわけにはいかない状況でしょう。


各社のEV(速報値を含む)の動きを見ると、
第一生命とT&Dグループが3月末比で減少する一方、
ソニー、かんぽ、ライフネットはEVを増やしました。

第一生命は上場生保のなかでは株式保有が大きく、
太陽生命、大同生命はいずれも一般勘定の6%程度。
ソニー生命は株式をほとんど保有しておらず、
かんぽ生命の株式ウエートも1%台にとどまります。
4-9月期はこの差がEVの増減に影響したようです。

T&Dは減少ですが、自社株取得の影響を除けば
実質的に横ばいでした
(ライフネット生命は増資と前提見直しが大きい)。


報道を見ると、相変わらず保険料収入と純利益が
増えた、減ったというものが中心ですが、

「純利益8%減 一時払い保険の販売減響く」

というのは、さすがに首をかしげてしまいました。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※東海道線の根府川駅です(先週の写真です)。
 お土産にレモンを買いました。

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