植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2011年10月29日

生保の下期運用計画

 

もしあなたが新聞社の「デスク」だったとします。
配下の記者から次の原稿が上がってきたら、
どう修正しますか?
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生保マネー、国債に集中 逆ざやリスクも

大手生命保険8社の20011年度下期の運用計画が出そろった。
利息や配当から生じる新規資金の大半を日本国債を中心とする
国内債券に投じる。金額は1兆5千億円。上期実績と合わせれば
約4兆6千億円となり、年度当初計画を54%上回るが、低金利下
での過度の債券買いは逆ざやリスクを高めかねない。
(29日日経より)
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まず引っかかるのが、「国債に集中 逆ざやリスクも」です。
「過度の債券買いは逆ざやリスクを高めかねない」ともあります。

ここでいう「逆ざやリスク」とは、常識的に考えると
「逆ざやが将来発生する可能性」のことを指すと思います。

おそらく記者さんは、
「高い運用収益が期待できる株式や外国証券への投資を行わず、
 低金利の債券ばかり購入すると、全体の利回りが下がり、
 逆ざやになる可能性を高める」
と考えたのでしょう。
資産サイドだけで考えると、そうなってしまうのかもしれません。

しかし、低利回りの長期債を買っても、予定利率が固定されているので、
逆ざやが将来発生しようがありません。
国債への集中リスク(=ソブリンリスク)を指摘するのであれば
まだわかるのですが、これは直さないといけません。

砂漠に水をまく思いですが、しつこく説明していくしかないのでしょうね、

ついでながら「国債に集中」というのも大丈夫でしょうか。
各社は「国内債券を積み増す」と回答しているようです
ロイターの記事
まあ、独自情報かもしれませんし、おそらく国債が多いとは思いますが。

「利息や配当から生じる新規資金」というのも、私なら確認を求めます。
保険料収入よりも保険金等の支払いのほうが多いのか、と。
銀行窓販もありますし、大手計でそんなことはないと思うのですが。

※いつものように個人的なコメントとということでお願いします。


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| post at 16:33:17 | コメント(1)  | カテゴリー : 02. 保険会社の経営分析 |

2011年10月28日

日本保険学会の年次大会

 

前回のブログでご紹介したとおり、先週末に神戸で
日本保険学会のH23年度全国大会(年次大会)がありました。
日本保険学会のHPへ

発表を聞いていて時々感じるのは、研究を進めるにあたり、
データの入手や解釈に苦労されているなあという点です。

現理事長の江澤雅彦先生教授(早稲田大学)も、
先日ご紹介した私の翻訳本に寄せていただいたなかで、

「われわれ学界に身をおくものは、研究を進める際、
 保険会社の経営に関するデータや資料へのアクセス
 の面で多くの困難を経験する」

と書かれています。

今回もある発表のなかで、1989年~2009年において、
 ・保険料収入に占める事業費の割合はやや低下傾向
 ・事業費に占める営業経費の割合は低下傾向
となっていることから、
「相互会社は事業費、販売促進費を抑えてきた」
という解釈がありました。

しかし、これはかなり無理があるように思います。

この期間はバブル経済のピークから崩壊、停滞の時期で、
生保の主力商品が貯蓄性から保障性へと移り、
同時に新契約の減少傾向が続いた時期ですよね。

保障性商品のウエートが高くなれば、保険料に占める
事業費の割合が下がっていくのが自然ですし、
新契約が減っていけば、コスト削減とは関係なく、
事業費に占める営業経費の割合は下がっていきます。

そうかといって、他にいい公表データが見当たらないのが
困ったところです。

また、基礎利益を使った効率性分析の結果、
「相互会社は株式会社よりも効率性が高い」
という分析結果にも違和感がありました。

商品構成や平均予定利率に大きな違いがない場合、
基礎利益は事業規模が大きく、保有契約と比べた
新契約の割合が小さい会社ほど大きくなる傾向があります。

分析期間(1989年~2009年)の最後の数年間を除けば、
主要生保の多くが相互会社であり、株式会社は
中堅2社と歴史の浅い外資系・損保系生保が中心でした。

当然ながら株式会社の基礎利益は小さくなるはずなのですが、
この点を踏まえた効率性分析だったのか、知りたいところです。


※地元で有名な「にしむら珈琲店」で朝食をとりました。


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