植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2010年12月25日

生保運用 国内株離れ

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1週間前の記事で恐縮です。12/18(土)の日経に、
「生保運用 国内株離れ」「5年で半減、国債シフト」
という記事が載っていました。

来年度からの資本規制強化を前に、生保各社が
運用資産内容を見直しているというのですが、

「国内株式の残高は規制強化の議論が始まる直前
 (2005年度末)に比べ、ほぼ半減した」

とあります。読者は、
「そうか、生保はそんなに株式を売却したのか!」
と普通は思うでしょう
(ちなみに「売却した」とは書いてありません)。

ざっと調べてみたところ、事実は次の通りでした。

大手9社の国内株式残高(時価ベース)は確かに半減です。
 2006/3末:26.8兆円 → 2010/9末:13.8兆円

ところが、簿価ベースではどうか。
 2006/3末:13.1兆円 → 2010/9末:12.0兆円
 (この間の株式等評価損の計上額は合計1.4兆円)

つまり、「5年で半減」の中身は圧倒的に時価下落によるもので、
売却はあまり進まなかったことになりますね
(ただし、この上半期は第一と明治安田の売却が目立ちました)。


なお、この記事には、

「一方で国債など公社債での運用比重が高まっており、
 低金利下で運用益を原資とする契約者配当の維持が
 難しさを増している」

「(債券シフトで)逆ざやを保険会社が穴埋めするリスクも高まりやすい」

といった記述もあり、このあたりも非常に疑問です。
株式から公社債にシフトすると、どうして配当維持が難しくなったり、
逆ざやを穴埋めするリスクが高まったりするのでしょうか。
過去20年間とは違い、株のほうが安全ということなのでしょうか。


記事にいちいち目くじらを立てても仕方がないとは思いつつ、
つい反応してしまいました。


※毎度のことですが、個人的なコメントということでお願いします。

※写真は横浜港シンボルタワーです。
 横浜は港なんだなあと実感できる場所でした。


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2010年12月04日

生損保決算から(その3)

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損保系生保が業容を拡大しています。
変額年金が主体の2社はやや苦戦しているようですが、
いわゆる「ひらがな」生保は、大手生保が契約を減らすなか、
保有契約高、年換算保険料ともに拡大が続いています。

損保系生保のビジネスモデルといえば、
損保代理店が生保も販売する「生損保クロスセル」
というイメージをお持ちだと思います。

ところが、各グループのIR資料を見ると、意外にも(?)
チャネルの多様化が進んでいることがわかります。

例えば、あんしん生命のチャネル別保険料のうち、
「損保代理店」は全体の55%にすぎません(2010/9期)。
他には「ライフプロ」(生保代理店)が30%、
「ライフパートナー」(営業職員)が10%を占めています。

NKSJグループの生保(ひまわり生命、日本興亜生命)でも、
「損保代理店(研修生を含む)」は39%、「生保プロ」が26%、
金融機関11%などとなっています(2009年度)。

注目すべきは、グループ損保の代理店とは別の、
一般代理店の存在が大きいことです。

MS&ADグループの生保(きらめき生命、あいおい生命)の
チャネル別データは公表されていませんが、
「当社の強みである来店型保険代理店のノウハウを活用」
(あいおい生命)という記載がIR資料にありました。

保険ショップに代表される一般代理店チャネルは
成長市場とはいえ、乗合かつ大規模な代理店なので、
保険会社間の競争が非常に激しい市場でもあります。

チャネル別収益などをしっかり管理して、
規律ある競争ができるかどうかがポイントなのでしょう。


それにしても、大手生保の動きだけを見ていては、
市場の動向をつかむのが難しくなったと感じます。


※写真はトレッサ横浜です。

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2010年12月01日

生損保決算から(その2)

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今回は生保の話を。
国内大手生保9社のソルベンシー・マージン比率(SMR)は
朝日生命が小幅低下となったほか、8社で上昇しています。

株価が約11000円から9000円台まで15%も下がったのに、
SMRはむしろ改善しているなんて、不思議に思いませんか?
そう思ったかたは、アナリストに向いているかも^^

SMRは分子のソルベンシー・マージン総額(支払余力)と
分母のリスク合計額で計算します。
2010年9月末は、分子が9社単純合計で▲800億円、
分母が同▲1700億円と、分母の減少が大きかったため、
各社のSMRが概ね上昇しました。

分母の減少は、「株価下落で資産運用リスクが減った」で
ほぼ説明できます。
いくつかの会社では株式の売却も行っているようです。

他方、分子では、株価下落の影響が▲1.5兆円もありました。
これをカバーしたのが内部留保の積み上げ(5000億円強)と、
公社債含み益の拡大(約6600億円)、
外国証券含み益の拡大(約3100億円)でした。


それでは、この上半期に国内主要生保の健全性は、
SMRが示すように高まったのでしょうか。

注目すべきは、公社債含み益の拡大が
支払余力を下支えしている点です(その他有価証券区分のみ)。

この上半期には長期金利がかなり下がりました。
9月末の10年国債利回りは0.93%です(期首は1.39%)。
例外を除き、主要生保が持つ公社債の残存期間は長いため、
金利低下が公社債価格の上昇につながったというわけです。

しかし、これはあくまで現行会計ベースの話。
会社価値という観点からすると、超長期の負債を抱える生保には、
長期金利の低下は大きなダメージとなります。

これは、第一生命やT&DのEEV(特に保有契約価値)を見れば、
金利低下の影響がいかに大きいかわかります。

報道では「増収・増益」「逆ざやが改善」などとありましたが、
株安と金利低下、ついでに円高のトリプルパンチですから、
当の生保はそんな状況ではないと思っていることでしょう。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
 

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