植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2009年06月07日

前回の生保危機との比較

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月曜日(8日)発行の有料メールマガジン「inswatch」に、
日経平均株価が8000円を割り込んだ2002年度と
直近の2008年度の生保決算を比べた記事を書きました。

inswatchのHPへ http://www.inswatch.co.jp/

 ※inswatchは、保険の現場に強いジャーナリストとして定評のある
  石井秀樹さん、中崎章夫さんが編集人を務めるメールマガジンです。
  「保険代理店向け」とありますが、広く業界人におすすめです。
  私は2か月に1回、記事を書いています。

簡単にご紹介しますと...
 ソルベンシー・マージン総額は、2002年度<2008年度
 このうち有価証券含み益は、2002年度>2008年度
 内部留保(純資産+α)は、2002年度<2008年度
 他方、リスクの合計額は、2002年度≒2008年度
 ↓
 内部留保を積み上げてきたため、2002年度よりも体力にまだ余裕がある。
 ただし、保有資産のリスクを温存してきたため、内部留保は1年間で激減した。

もっとも、これはあくまで国内系生保9社の単純合算ベースでして、
個社ベースではいろいろです。

例えば、朝日生命と太陽生命のソルベンシー・マージン総額は
2002年度>2008年度 です。
しかし、両社とも資産運用リスクの抑制を進めてきたため、
ソルベンシー・マージン比率は 2002年度<2008年度 となっています。

反対に、大同生命は2003年度以降、内部留保を増やす一方で、
資産運用リスクも増やした結果、ソルベンシー・マージン比率が
2002年度>2008年度 となってしまいました。

なお、ソルベンシー・マージン比率の計算方法は
当時と今では多少違いがありますので、お含み置き下さい。


※写真は新横浜の駅ビルです。ずいぶん便利になりました。


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2009年06月04日

株価下落の影響

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今回も生損保2008年度決算から。

生損保のソルベンシー・マージン(支払い余力)総額は大幅に減りました。
大手生損保の場合、この減少分の実に8割前後が株価下落によるもの。
不動産関連投融資の損失や信用リスクの顕在化に苦しむ欧米勢、
あるいは日本の銀行とはリスク構造が明らかに違います。

外部からは「保有株式の変動リスクが大きい」と指摘されていたものの、
2003年以降の株価上昇局面でもリスク圧縮があまり進まなかったようです。

今回の株価下落局面ではどうだったのでしょうか。
各社とも「金融危機のなかでリスクを抑える方針」とのことでしたが...

決算データ(取得価額と減損額)から売却額を試算してみたところ、
大手で一定程度の株式を売却したと思われるのは
第一生命と明治安田生命、東京海上、日本興亜くらいでしょうか。
残高がほとんど変わっていないと見られる会社も多いですし、
日本生命や三井住友海上などはむしろ残高を増やしたようです。

リスクを抑える方針とは言うものの、最大のリスク要因である株式を
相場の上昇局面でも下落局面でも売れないというのであれば、
いったいどうするつもりなのでしょうか?

※写真は野川で見つけた水車です。

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2009年06月02日

変額年金の販売動向

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「変額年金販売が不調」(6/2朝日)という記事が一般紙に掲載されるなど
何かと話題の変額年金ですが、公表データが少なくて困ります。

例えば「どの保険会社の商品がどれだけ売れたか」という
基本的なデータが必ずしも公表されていません
(大手生保やアリコなどは記者クラブ向け資料で開示)。

ましてや「どの金融機関がどこの保険会社の商品をどれだけ販売したか」
などというデータはどこにもありません。
保険マスコミの皆さんにもっと頑張っていただきたいところなのですが...

さて、決算資料の「特別勘定の資産残高」の増減から
「特別勘定の運用収支」を差し引いた「純増部分」を見てみました。
年度内に販売した契約も時価変動の影響を受けるので、
これを「純増部分」と言うのはちょっと無理があるかもしれませんが、
あくまで参考ということでご容赦下さい。

2007年度の上位は
 ①アイエヌジー、②東京海上日動フィナンシャル、③三井住友海上メットライフ、
 ④ハートフォード、⑤住友、⑥マニュライフ...でした。

これが2008年度には、
 ①東京海上日動フィナンシャル、②第一生命&第一フロンティア生命、
 ③三井住友海上メットライフ、④住友、⑤アイエヌジー、⑥マニュライフ...
と変わっています。

ハートフォードやアリコジャパンのように純減となる会社がある一方、
第一生命グループやT&Dフィナンシャルのように好調な会社もありました。
ただ、全体としては売り上げが3割くらい減ったのではないでしょうか。

米国でも2008年の変額年金の売り上げは前年の2割減、
2009年1-3月期だけをみると前年同期を3割以上下回っています。
やはりAIGやハートフォードが販売シェアの順位を落としているようです
(VARDSレポートによる)。

日本でも2009年度はハートフォードが販売から撤退し、
住友とアイエヌジーが販売を休止するので、
上位の顔ぶれが大きく変わりそうです。


※写真は世田谷の等々力渓谷です

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2009年06月01日

金融危機と生保決算

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2009/3期の生保決算が出そろいました。
本格的な分析はこれからですが、やはり金融危機の影響を
非常に強く受けたものとなりました。

大手・中堅生保では、何といっても株価下落が効いています。
株式含み益を確保できたといえるのは日本生命と明治安田生命だけ。
T&Dも含み益ですが、株式関連の損失がかさみました。

ただ、銀行決算が12月よりも一段と悪化した感があるのに対し、
生保はそれほどでもないという印象です。
銀行では景気悪化の影響で信用コストの拡大が顕著ですが、
生保では中小企業向け保険の解約が目立つ程度です。
不動産関連投融資が比較的少ないためだと思います。

もっとも、外資系生保では国内系とは別の傾向が見られます。
外資系では外国証券の損失が目立ちました。

例えばアリコジャパンはAIG株式のほか、CMBS(商業用不動産担保証券)や
RMBS(住宅ローン債券担保証券)の実現損や含み損も膨らんでいます。
証券化商品以外の外国公社債でも含み損を抱えているようで、
海外企業の信用力低下も影響しているとみられます。

このような傾向はアリコだけではなく、外資系生保に共通しています。
アフラックの含み損は4000億円超となり、実質純資産額を圧迫
(ただし、証券化商品への投資は非常に少ないです)、
ジブラルタ生命の外国公社債含み損は1200億円に達し、
増資等を行っています。
アクサ生命では外国証券評価損が1300億円に膨らんだ結果、
赤字決算となりました。

外資系生保が軒並み経営内容を悪化させる事態は初めてのことです。
「外資系に追い風」はすっかり過去の話となりました。


※写真は東京駅です

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