植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2009年05月26日

公表逆ざや額の限界

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すでに発表されている第一生命と大同生命の「逆ざや額」をみると、
数字が極端に悪化しています。

 第一生命 2007年度= 11億円の順ざや → 2008年度= 648億円の逆ざや
 大同生命 2007年度=217億円の順ざや → 2008年度=1298億円の逆ざや

この結果、大同生命は基礎利益が赤字となってしまいました。
これだけみると、逆ざや額を保険関係の差益でカバーできていないことになります。

しかし、超長期の負債に対し、長期の資産で運用する生保にとって、
実質ベースの逆ざやが短期間でここまで極端に動くことはありません。
指標が実態を表していないことがわかります。

大同生命の2008年度の公表逆ざや額が膨らんだ理由は、
含み損となった投信の解約に伴う多額の損失が反映されたためです。
第一生命の場合は、詳細は不明ですが、2007年度までの逆ざや額が
何らかの要因により実態よりも小さくなっていたようです。

いずれのケースでも、公表逆ざや額が実態をうまく反映していないので、
この数字をそのまま使うのはやめたほうがいいと思います。

※写真は飯山の古い雁木(がんき)です。


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2009年05月24日

損保の決算発表

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5/20(水)は主要損保の決算発表集中日でした。
決算発表に関する翌日の報道をみると、

「金融危機の直撃で全社が経常赤字に転落、損害保険ジャパンなど四社が
 最終赤字となった」(日経)
「有価証券の損失が拡大するなどし、税引き後利益は損害保険ジャパンなど
 3社が赤字、東京海上ホールディングスなど2社が減益」(読売)
「6社合計の金融危機関連損失は7697億円に達し、08年9月中間期時点の
 約4倍に膨らんだ」(朝日)

など、損益に関する記述が中心でした。
損保にかぎらず、決算記事はたいていP/L中心の記述となりますよね。

地方紙の一部で私のコメントが掲載されたようですが(共同発)、
これも損益に関するものでした↓

「国内部門の収支改善を進めなければ、再編してもいずれ苦しくなる」

ただ、金融危機の影響ということであれば、
黒字か赤字かということよりも、B/Sに注目です。

P/Lは有価証券評価損の計上ルールによって結果が大きく変わります
(上場損保は「30%ルール」なので赤字になりやすいのです)が、
B/Sへの影響はニュートラルです。

各社の純資産(価格変動準備金を含む)をみると、
大手3社は1年間で4割超の減少、富士火災は6割超も減りました。
大手は会社価値を1年間で、それぞれ5000億円~9000億円も
減らしてしまったことになります。ものすごい金額です。

大手損保の場合、まだ健全性が揺らぐような事態ではないとはいえ、
経営者はこれを株主や契約者にどう説明していくのでしょうか?


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2009年05月05日

ハートフォード生命が新規取り扱いを休止



「変額年金大手のハートフォード生命が、すべての保険商品の
 販売を6月から休止」という発表には驚きました。

三井生命も変額年金から撤退しましたが、主力は営業職員チャネルによる
保障性商品の販売です。
ハートフォード生命の場合、金融機関チャネルの専門会社なので、
今回の決定は日本市場からの撤退に近いでしょう。

親会社のハートフォードグループの2009年1-3月期決算(4/30発表)は、
変額年金関連の損失がかさみ、3四半期連続の赤字となりました。
最低保証の負担よりも、過去に計上した繰延新契約費の償却負担と、
保有債券価格の下落による影響が大きいようです。

日本法人の売り上げも落ち込んでいます。
2008年7-9月期までは1000億円以上だった収入保険料は
10-12月期が322億円、2009年1-3月期は208億円です。
主力商品3WINが運用停止になったことによる混乱に加え、
グループの信用力低下もあり、金融機関が販売を避けているのでしょう。

ただ、銀行はこのところ保険・年金商品をリテール戦略の基軸に据え、
体制整備を進めています。今回の件がどう影響するか注目です。

なお、Bloombergに私のコメントが載ったので、ご紹介します。
「(植村アナリストは)『昨秋の金融危機以降、変額年金事業の環境は激変した』
 と指摘。運用低迷や、元本を保証する商品などのコスト上昇、米保険最大手
 AIGの公的管理を受けた保険会社の信用不安などが背景にあるという」


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