植村信保のブログ

保険アナリスト植村信保のブログ

2013年04月19日

金融システムレポート

 

17日に日本銀行が「金融システムレポート」を公表しています。
日銀のHPへ

今回のレポートは「基本的に2013年3月末までの情報」
による分析とあるので、先般の量的・質的金融緩和については
織り込まれていません。

「はじめに」を見ると、

「この政策は、長めの金利や資産価格などを通じる波及ルートに加え、
 市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる」

「この政策のもとで、金融システムにおける資金の流れや金融機関、
 投資家の行動にどのような変化が生じていくかを分析していく」

と述べられていますので、次回以降に期待しましょう。


今回のレポートでは、金融機関の経営課題として真っ先に、
「収益力の向上を図る必要がある」と指摘しています。
とりわけ地域金融機関は収益環境は厳しさを増しているようです。

その一方で、銀行・信用金庫の金利リスク量(=金利上昇を想定)
が総じて増加方向にあることも示されています。

すなわち、地域金融機関は低下する収益力を補うために
債券投資を増やし、残存期間を延ばしている姿が伺えます。

そこにきて、今回の量的・質的金融緩和です。

人口の減少や高齢化の進行に伴う資金需要の低迷に対し、
金融緩和によって状況が改善に向かうでしょうか?
他方、日銀の思惑通りにイールドカーブが潰れれば、
地域金融機関の債券投資に伴う収益は確実に低下します。

収益を維持したければ、投資のボリュームを増やすか、
もしくは残存期間を一段と延ばすか、となるのでしょう。
いずれにしても、金利リスク量をさらに増やすことになりますね。
うーん。大丈夫でしょうか。

あるいは、レポートで「ひとつの選択肢となりうる」としている
合併などを通じた経営効率の改善が加速するかもしれません。

もっともレポートでは、1991年度以降に合併した信用金庫のうち、
合併後に基礎的な収益力が改善したのは6割だったという
分析結果が示されています。これをどう見るか...


なお、このところ保険会社の分析が充実する傾向にあったので、
楽しみにしていたのですが、今回はかなり控えめだったようです。
こちらも次回以降のお楽しみといたしましょう。

それにしても、日銀の発表によると、5月から超長期債の買入額が
さらに増える可能性があるようです。日銀HPへ(PDF)
いよいよ生保と日銀で超長期債の奪い合い、でしょうか?


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※日比谷公園の松本楼でランチ。18日は20回目の結婚記念日でした。


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2013年04月06日

債券市場はどうなる?

 

日銀の量的・質的金融緩和により、債券市場が混乱模様です。
5日の市場では、10年国債利回りが0.315%まで下がった後、
午後になると一転して0.62%まで急騰しました。

相場のことは相場に聞けと言われるとおり、
今後の展開はだれにもわかりません。

ただ、日銀は「イールドカーブ全体の低下を促す」としており、
具体的な金融緩和策を打ち出しているわけです。

 消費者物価上昇率「2%」を「2年程度」で実現するため、
 長期国債・ETFの保有額を「2年間で2倍」に拡大し、
 長期国債買い入れの平均残存期間を「2倍以上」にする...
 日銀の公表文(PDF)

「日銀の金融緩和が財政赤字の穴埋めだと見なされれば、
 金利上昇のリスクが顕在化する」(5日の日経)

という声は根強いものの、物価2%というハードルが高いなかで、
日銀がそう簡単に長期金利の大幅な上昇を許容するはずはなく、
場合によっては米FRBのようなツイストオペ(短期売り・長期買い)
なども駆使してイールドカーブを抑えにかかるだろうと思います。

もし、金利上昇に賭けて(?)資産・負債をミスマッチ
(負債よりも資産のポジションを短く)していた場合、
これはしばらく厳しいかもしれませんね。
反対に、資産の長期化を進めてきた会社にとっては、
リスクヘッジが功を奏したということになります。

くれぐれも債券の含み益だけで生保を評価しないようにしましょう
(特にメディアの皆さん!)。


それにしても、超長期債の買入額には驚きました。
生損保が主な買い手となってきた超長期国債市場において、
日銀は毎月0.8兆円、年間だと9.6兆円もの国債を購入するとか。

長期国債の平均残存期間を2倍以上にするには
超長期国債の買入額を増やすのは自然といえば自然なのですが、
そんなに買えるものなのでしょうか。

今年度の10年超の国債発行予定額は22.8兆円です。
これに対し、従来は年1.2兆円買っていた主体が、
いきなり年9.6兆円を買い入れるというのです。

もちろん、発行市場だけではなく、流通市場も見るべきですが、
ALM目的で保有する生損保が大量に売却するとは考えにくく、
流通市場を考慮しても、「池のなかの鯨」状態でしょう。

市場流動性の低下が価格(利回り)にどう影響を与えるか、
いろいろと心配になります。


※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

※写真は大人気の沖縄美ら海水族館です。


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